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07月

「安全保障関連法案」の危険性(4)――対談『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』

7月7日に書いた〈「安全保障関連法案」の危険性と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造〉という記事では、6月25日に開催された「文化芸術懇話会」に講師として招かれた作家の百田直樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」などと発言したばかりでなく、現在の多くの住民は「周りは田んぼだらけだった」ところに、「飛行場の周りに行けば商売になるので住みだした」とも発言していたことが明らかになり、それまで謝罪を拒んでいた安倍首相が3日の「衆院特別委員会」で「心からおわび」との発言をしたことにふれて、こう記していました。

「心からおわび」という言葉が真心を込めて語られたのならば、このような「言論弾圧」的な発言も飛び出した「平和安全法制整備法案」の審議は、次の議会に延期するのが「情理」にかなった行動でしょう。

*   *

しかし、安倍首相は10日の衆院平和安全法制特別委員会でも、「審議は深まった。決めるべき時には決めていただきたい」と答弁、15日の委員会での戦争法案強行採決をにおわせたのです。

このことを伝えた7月13日付けの『日刊ゲンダイ』は、2面で「採決を急ぐ理由は明らかで、審議をやればやるほど、議論が深まるどころか、ボロが出るのだ」と書き、そのような事例の一つとして民主党の辻元清美衆院議員との質疑応答を挙げています。

すなわち、これまで安倍首相は自衛隊が戦争に巻き込まれない根拠として「戦闘が起きれば、ただちに部隊の責任者の判断で一時中止、あるいは退避する」と繰り返していたのですが、辻元議員は『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック株式会社、2013年)では、対談者の百田尚樹氏から「(そんなことは)国際社会では通用しませんね」と問われると、「(そんなことは)通用しません。そんな国とは活動したくないと思われて当然です」と語っていたことを質問で明らかにしたのです。

*   *

『日刊ゲンダイ』はこの記事を「戦争法案のインチキ、ペテンは今や、誰の目にも明らかだ」と結んでいますが、このような安倍首相の言動からは、暴言で問題となる作家の百田氏は、首相の広報的な働きをしていたにすぎないように見えてきます。

2013年12月6日には世論の反撥がさらに高まるのを懸念した政府与党が、参院で審議が始まってわずか8日で「特定秘密保護法案」を参院特別委員会で強行採決していました。

今度もまた「国民」の反対が多い「安全保障関連法案」の危険性が議論をする中で明白になることを怖れた安倍首相が独裁的な権力をふるって、衆議院で多数を占める与党の自民・公明両党に強行採決させようとしているという構図が浮かび上がってくるのです。

 

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昨年総選挙での「争点の隠蔽」関連の記事一覧

先ほど、新国立競技場契約の「見切り発車」の問題と安倍政権が示唆している法案の強行採決の類似性を指摘した〈「安全保障関連法案」の危険性(3)――「見切り発車」という手法〉という題名の記事をアップしました。

急いでいたために書き忘れましたが、こうした三代目の「ボンボン」のような「放漫経営」的な手法を行っても、福島第一原子力発電所事故の場合でよく分かるように、「政治家」自身は責任を負うことはありません。その巨額のツケを後で払わされることになるのは、私たちやその子孫などの「国民」なのです。

総選挙のまえに菅官房長官は「秘密法・集団的自衛権」は、「争点にならず」と発言していましたが、案じていたように、政権の幹部はこの法案については先の総選挙でも充分に議論され、「信認を得て、多くの議席を得たという確信を持って、間違いなく我々はやってきた」という説明を始めています(太字、引用者)。

それゆえ、ここでは経済の問題を前面に出すことで「安全保障関連法案」の問題を隠していた昨年末の総選挙の危険性を指摘した記事を執筆順に掲載します。

 

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「安全保障関連法案」の危険性(3)――「見切り発車」という手法

本日(7月10日)の「東京新聞」朝刊の一面は、「新国立契約、見切り発車 資材発注 大成建設と33億円」という題名で、「二千五百億円を超える巨額な工事費が問題となっている、二〇二〇年東京五輪・パラリンピック大会の主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設」が、巨額の税金を払うことになる「国民」や「都民」への詳しい説明もないままに、大成建設への「資材の発注」を行ったことを大きく報じています。

さらに、第27面の記事では「このままではモラルハザード」になるという危惧や、この巨額な予算は「福島避難者の住宅支援」などに生かすべきだとの意見とともに、「元の建物」いち早く壊したやり方に対する批判も紹介されています。

この記事から感じられたのは、ラグビーのW杯の日程にあわせた「新国立契約、見切り発車」と「アメリカの議会」への「約束」をたてにして「国民」への納得できる説明もなく、今月の中旬には危険な「安全保障関連法案」を強行採決して「見切り発車」させようとする安倍政権の手法の類似性です。

こうした三代目の「ボンボン」のような「放漫経営」的な手法を行っても、福島第一原子力発電所事故の場合でよく分かるように、政治家自身は責任を負うことはありません。その巨額のツケを後で払わされることになるのは、私たちや子や孫など「国民」なのです。

*   *

記者会見で菅官房長官が「ただ、いつまでもだらだらと続けることでなく、やはり決めるところは決めるということも、一つの責任だと思う」と語ったのに続いて、麻生太郎・副総理が派閥の会合のあいさつで「平和安全法制、ほぼ審議が尽くされた。与野党で十分な時間をかけて審議をしていただいたんだと思う。そろそろ結論を出して、衆院としての結論を出さなければならん時期にきている。/少なくとも我々は、多くの信を得て昨年の12月に当選した。信認を得て、多くの議席を得たという確信を持って、間違いなく我々はやってきた」と語ったことも伝えられています。

しかし、昨年の総選挙の際の安倍首相の横顔が印刷された自民党のポスターに記されていたのは、「景気回復、この道しかない。」というスローガンで、「安全保障関連法案」の問題はまだ提起されてもいなかったはずです。

リンク→「欲しがりません勝つまでは」と「景気回復、この道しかない。」12月5日)

「安全保障関連法案」の問題については、今月4日に衆議院憲法審査会で行われた参考人質疑では、野党推薦の2人の憲法学者だけでなく、与党が推薦した学者も含めて3人の参考人全員によって、安倍政権による「新たな安全保障関連法案」は「憲法違反」との見解が示されたことで明らかになりました。

リンク→衆議院憲法審査会の見解と安倍政権の「無法性」

この危険な法案に反対する『安全保障関連法案に反対する学者の会』のアピールへの賛同者(学者・研究者)の人数は、7月10日9時00分現在で9175人に達しました。

本日(7月10日)の15時からは中野晃一・上智大学教授、大沢真理・東京大学教授、佐藤学・学習院大学教授の記者会見が日本外国特派員協会で行われるとのことです

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

*   *

  YouTubeの【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみたは、この法案を「情念」的な言葉で「分かりやすく解説」した自民党の「教えて!ヒゲの隊長」の説明を分かりやすく批判しています。

この二つを比較してみると「安全保障関連法案」の問題点がよく分かるでしょう。

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」関連の記事一覧

先ほど、岸元首相の「核政策」だけでなく文芸評論家・小林秀雄の「沈黙」についても言及した〈「安全保障関連法案」の危険性(2)――岸・安倍政権の「核政策」〉という記事をアップしました。

それゆえ、ここでは1962年に発行された『ヒロシマわが罪と罰――原爆パイロットの苦悩の手紙』(筑摩書房)をとおして小林秀雄氏の「良心」観の問題を考察した記事の一覧を副題も示す形で掲載します。(下線部をクリックすると記事にリンクします)。

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(広島に投下された原爆による巨大なキノコ雲(米軍機撮影)。キノコ雲の下に見えるのは広島市街、その左奥は広島湾。画像は「ウィキペディア」による)

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「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(1)――「沈黙」という方法と「道義心」

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(2)――『カラマーゾフの兄弟』と「使嗾」の問題

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(3)――岸信介首相と「道義心」の問題

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(4)――良心の問題と「アイヒマン裁判」

「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」(5)――ムィシキン公爵と「狂人」とされた「軍人」

アインシュタインのドストエフスキー観と『カラマーゾフの兄弟』

小林秀雄の原子力エネルギー観と終末時計

小林秀雄の『罪と罰』観と「良心」観

 

「安全保障関連法案」の危険性(2)――岸・安倍政権の「核政策」

『ゴジラの哀しみ』、桜美林大学

〈「安全保障関連法案」の危険性――「国民の生命」の軽視と歴史認識の欠如〉と題した7月3日のブログ記事を私は次のように結んでいました。

「なお、原水爆の危険性を軽視した岸信介政権と同じように、原水爆だけでなく原発の問題も軽視している安倍晋三政権の危険性については、別の機会に改めて論じたいと思います。」

これを書いた時に意識していたのは、なかなか言及する暇がなかった5月24日の「東京新聞」朝刊第1面の〈核兵器禁止 誓約文書も賛同せず 被爆国で「核の傘」 二重基準露呈〉という北島忠輔氏の署名入りの記事のことでした。以下にその主な箇所を引用しておきます。

*   *

「核なき世界」に向け国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は二十二日、四週間の議論をまとめた最終文書を採択できず決裂、閉幕した。被爆七十年を迎える日本は、唯一の被爆国として核兵器の非人道性を訴えたが、核の被害を訴えながら、米国の「核の傘」のもと、核を否定できない非核外交の二面性も浮かんだ。

会議では、核兵器の非人道性が中心議題の一つとなった。早急な核廃絶を訴える一部の非保有国の原動力となり、オーストリアが提唱した核兵器禁止への誓約文書には、会議前には約七十カ国だった賛同国が閉幕時には百七カ国まで増えた。…中略…日本は「核保有国と非保有国に共同行動を求める」(岸田文雄外相)との姿勢で臨んだが、両者が対立する問題では橋渡し役を果たせなかった。また、早急な核廃絶に抵抗する保有国と足並みをそろえて誓約文書に反対する立場をとった。」

*   *

この記事から浮かんでくるのは、世界で唯一の被爆国でありながら「誓約文書に反対する立場」をとる安倍政権の奇妙な姿勢ですが、その方向性は安倍首相の祖父・岸信介の政権で決められていたように思えます。

なぜならば、毎日新聞が1月18日朝刊の第1面で〈日米が「核使用」図上演習〉という題名で、「米公文書」で明らかになった次のような事実を示していたからです。以下にその主な箇所を引用しておきます。

*   *

「70年前、広島、長崎への原爆投下で核時代の扉を開いた米国は、ソ連との冷戦下で他の弾薬並みに核を使う政策をとった。54年の水爆実験で第五福竜丸が被ばくしたビキニ事件で、反核世論が高まった被爆国日本は非核国家の道を歩んだが、国民に伏せたまま制服組が核共有を構想した戦後史の裏面が明るみに出た。(中略)58年2月17日付の米統合参謀本部文書によると、57年9月24~28日、自衛隊と米軍は核使用を想定した共同図上演習『フジ』を実施した。」

そして、「当時の岸信介首相は『自衛』のためなら核兵器を否定し得ないと国会答弁」しており、「核保有の選択肢を肯定する一部の発想は、その後も岸発言をよりどころに暗々裏に生き続けている」と指摘した日米史研究家の新原昭治氏の話を紹介しているのです。

つまり、「東条英機」内閣の重要な閣僚として「鬼畜米英」を唱えて「国民」を悲惨な戦争に駆り立てた岸首相は、戦後にはアメリカの「核政策」を批判するどころかその悲惨さを隠蔽して、「核兵器」の使用さえも認めていたのです。

このような岸首相の「核政策」が、いまだにアメリカのアンケートでは「核の使用」を正当化する比率が半数を超えているという現状だけでなく、核戦争など人類が生み出した技術によって、世界が滅亡する時間を午前0時になぞらえた「終末時計」が、再び「残り3分」になったと今年の科学誌『原子力科学者会報』で発表されたような事態とも直結しているとも思えます。

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(「キャッスル作戦・ブラボー(ビキニ環礁)」の写真。図版は「ウィキペディア」より)

(製作: Toho Company Ltd. (東宝株式会社) © 1954。図版は露語版「ウィキペディア」より)

*   *

このような日本政府の「核政策」は、日本の「代表的な知識人」である小林秀雄の言説にも反映しているようです。

すなわち、1940年8月に行われた鼎談「英雄を語る」で、戦争に対して不安を抱いた同人の林房雄が「時に、米国と戦争をして大丈夫かネ」と問いかけられると「大丈夫さ」と答え、「実に不思議な事だよ。国際情勢も識りもしないで日本は大丈夫だと言つて居るからネ。(後略)」と続けていた小林秀雄は、湯川秀樹との対談では、「原子力エネルギー」と「高度に発達した技術」の問題を「道義心」を強調しながら厳しく批判していたにもかかわらず、「原子力の平和利用」が「国策」となると沈黙してしまったのです(太字は引用者、「英雄を語る」『文學界』第7巻、11月号、42~58頁。不二出版、復刻版、2008~2011年)。

*   *

「東京新聞」は今日(7月7日)夕刊の署名記事で、原発再稼働の政府方針を受けて「火山の巨大噴火リスクや周辺住民の避難計画の不十分さなどいくつも重要な問題が山積したまま、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が、再稼働に向けた最終段階に入った」ことを伝えています。

さらにこの記事は、「巨大噴火の場合は、現代の科学による観測データがなく、どんな過程を経て噴火に至るかよく分かっていない」などとの火山の専門家からの厳しい指摘があるだけでなく、「避難計画は、国際原子力機関(IAEA)が定める国際基準の中で、五つ目の最後のとりでとなる」にもかかわらず、「避難住民の受け入れ態勢の協議などはほとんどされていない」ことも紹介しています。

「周辺住民の避難計画」も不十分なままで強引に原発再稼働を進めようとする安倍政権の姿勢からは、満州への移民政策を進めながら戦争末期には多くの移民を「棄民」することになった岸信介氏の政策にも通じていると感じます。

両者の政策に共通なのは、スローガンは威勢がよいが長期的な視野を欠き、利益のために「国民の生命」をも脅かす危険な政策であることです。

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(作成:Toho Company, © 1955、図版は「ウィキペディア」より)

リンク→小林秀雄の原子力エネルギー観と終末時計

リンク→「小林秀雄の良心観と『ヒロシマわが罪と罰』」関連の記事一覧

 

百田直樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』関連の記事一覧

先ほど、〈「平和安全法制整備法案」と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造〉という記事をアップしました。

それゆえ、ここでは百田直樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』および、安倍首相との共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』に関連する記事の一覧を掲載します。

(下線部をクリックすると記事にリンクします)。

 

『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』における「憎悪表現」

百田尚樹氏の『殉愛』と安倍首相の「愛国」の手法

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠のO(ゼロ)』(1)

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠の0(ゼロ)』(2)

宮崎監督の映画《風立ちぬ》と百田尚樹氏の『永遠の0(ゼロ)』(3)

「特定秘密保護法」と「オレオレ詐欺

「集団的自衛権」と「カミカゼ」

「集団的自衛権」と『永遠の0(ゼロ)』

「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(1)

『永遠の0(ゼロ)』と「尊皇攘夷思想」

「ぼく」とは誰か ――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(2)

沈黙する女性・慶子――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(3)

隠された「一億玉砕」の思想――――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(4)

小林秀雄と「一億玉砕」の思想

「戦争の批判」というたてまえ――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(5

「作品」に込められた「作者」の思想――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(6)

「作者」の強い悪意――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(7)

「議論」を拒否する小説の構造――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(8)

黒幕は誰か――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(9)

モデルとしてのアニメ映画《紅の豚》――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(10)

歪められた「司馬史観」――――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(11)

侮辱された主人公――「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(12)

主人公の「思い」の実現へ――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(1)

「ワイマール憲法」から「日本の平和憲法」へ――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(2)

「終末時計」の時刻と「自衛隊」の役割――『永遠の0(ゼロ)』を超えて(3)

 

「安全保障関連法案」の危険性と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造

一、百田尚樹氏の発言と安倍政権の反応

安倍首相の再選を望む若手議員が6月25日に開催した「文化芸術懇話会」に講師として招かれた作家の百田直樹氏の発言が問題となっています。

すなわち、百田直樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」などと発言したばかりでなく、現在の多くの住民は「周りは田んぼだらけだった」ところに、「飛行場の周りに行けば商売になるので住みだした」とも発言していたことが明らかになったのです。

これに対して2015年7月2日に行われた日本外国特派員協会での沖縄タイムスと琉球新報の二つの新聞社の合同記者会見では、「政権の意にそわない新聞報道は許さないんだという言論弾圧の発想」や、「百田さんの言葉を引き出した自民党の国会議員」の問題が指摘されました。

これらの批判を受けて、ようやく安倍首相が3日の「衆院特別委員会」で「心からおわび」との発言をしたのに続き、菅官房長官も翁長知事との4日夜の会談で、沖縄をめぐる発言について「ご迷惑を掛けて申し訳ない」と陳謝しました。

その一方で、多くの学者や報道関係者から審議が拙速であるとの厳しい批判が出ている「平和安全法制整備法案」については、今月の中旬には衆院を通過させるという与党の強引な方針も伝えられています。

「心からおわび」という言葉が真心を込めて語られたのならば、このような「言論弾圧」的な発言も飛び出した「平和安全法制整備法案」の審議は、次の議会に延期するのが「情理」にかなった行動でしょう。

二、作家百田尚樹氏の発言と小説『永遠の0(ゼロ)』の構造

問題は28日に行われた大阪府泉大津市での講演で百田氏が、自民党勉強会での「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と語ったときは、「冗談口調だったが、今はもう本気でつぶれたらいいと思う」と話したばかりでなく、ツイッターに「私が本当につぶれてほしいと思っているのは、朝日新聞と毎日新聞と東京新聞」と投稿したとも話していたことです。

しかし、「東京新聞」が7月5日朝刊一面の検証記事で記しているように、「飛行場の周りに行けば商売になるので住みだした」のではなく、「接収、やむなく周辺に」であり、「周りは田んぼだらけだった」という発言も、実際には「戦前は市の中心地域」だったことを明らかにしています。つまり、「公」の党の研究会での発言は、中傷やデマに近いたぐいの発言だったのです。

*   *

このような百田氏の発言から思い出されるのは、百田尚樹氏が小説『永遠の0(ゼロ)』の第9章で元特攻隊員だった武田に、「私はあの戦争を引き起こしたのは、新聞社だと思っている」と決めつけさせ、新聞記者の髙山を次のように批判させていたことです。

「日露戦争が終わって、ポーツマス講和会議が開かれたが、講和条件をめぐって、多くの新聞社が怒りを表明した。こんな条件が呑めるかと、紙面を使って論陣を張った。国民の多くは新聞社に煽られ、全国各地で反政府暴動が起こった…中略…反戦を主張したのは德富蘇峰の国民新聞くらいだった。その国民新聞もまた焼き討ちされた。」(太字引用者)

しかし、『国民新聞』が焼き討ちされたのは、政府の「御用新聞」だったからであり、しかも、蘇峰は『大正の青年と帝国の前途』において、自分の生命をもかえりみない白蟻の勇敢さを褒め称えて、日本の兵士にもそのような「勇気」を求めていました。『蘇峰自伝』によれば蘇峰は、「予の行動は、今詳しく語るわけには行かぬ」としながらも、戦時中には戦争を遂行していた桂内閣の後援をして「全国の新聞、雑誌に対し」、当時の内閣の政策の正しさを宣伝することに努めていたのです。

*   *

  『永遠の0』でも〈太平洋戦争の分岐点となったガダルカナルでの戦いを取り上げ、戦力の逐次投入による作戦の失敗や、参謀本部が兵站を軽視したことによって多くの兵士が餓死や病死したことが書かれて〉いることを指摘して、この小説を擁護する人もいます。

しかし、それらの引用されたような文章は読者の記憶には残らず、百田氏の本音が語られていると思われる新聞社批判の「情念」が、今回、彼を講師として招いたような人々の印象に深く刻まれていたのです。

しかも、今回の研究会に招かれた百田尚樹氏は単なる「文化人」ではなく、安倍首相との共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック株式会社、2013年)もあり、NHKの経営委員も務めた作家なのです。

「論理」よりも「情念」を重視する傾向がもともと強い日本では、疑うよりは人を信じたいと考える善良な人が、再び小説『永遠の0(ゼロ)』の構造にだまされて、戦争への道を歩み出す危険性が高いことをこのブログの記事で指摘してきました。

これらのことを考えるならば、共著者の安倍総理にも百田氏の発言に関しては「道義的な責任」があるだけでなく、安倍政権によって提出された「平和安全法制整備法案」にも、「情念」に訴えて一気に成立させようとする危険な側面があるように見えますので、より慎重な審議が求められるでしょう。

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ドストエーフスキイの会「第228回例会のご案内」

「第228回例会のご案内」を「ニュースレター」(No.129)より転載します。

*   *   *

今回は『広場』 24号の合評会となりますが、論評者の報告時間を10分程度とし、エッセイの論評も数分に制限して自由討議の時間を多くとりました。

記載されている以外のエッセイや書評などに関しても、会場からのご発言は自由です。

多くの皆様のご参加をお待ちしています。

日 時: 2015年7月25日(土)午後2時~5時

場 所:千駄ヶ谷区民会館第一会議室(JR原宿駅下車徒歩7分)

℡:03―3402―7854

 

掲載主要論文とエッセイの論評者

福井論文:小林秀雄、戦後批評の結節点としてのドストエフスキー

― ムイシュキンから「物のあはれ」へ ――冨田陽一郎氏 

堀論文:ドストエフスキーへの執念が育んだ〈絆〉

― 黒澤明とアンドレイ・タルコフスキー ―― 船山博之氏

きむ論文:スヴィドリガイロフのラヴ・アフェアー  ――小山

木下論文:小林秀雄とその同時代人のドストエフスキー観 ――大木昭男氏

エッセイ:原口美早紀、松本賢信、森和朗、西野常夫、山本和道、長瀬隆の

各氏のエッセイ――熊谷のぶよし、木下豊房、福井勝也、高橋誠一郎氏その他

司会:近藤靖宏氏

*会員無料・一般参加者-500円

*   *   *

例会の「傍聴記」や「事務局便り」などは、「ドストエーフスキイの会」のHP(http://www.ne.jp/asahi/dost/jds)でご確認ください。

「安全保障関連法案」の危険性――「国民の生命」の軽視と歴史認識の欠如

〈「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールを「新着情報」に掲載〉と題した短い記事を、先ほどブログに書きましたので、ここでは「呼びかけ人」のコメントを紹介します。

小林 節(慶應義塾大学名誉教授・  憲法学)氏は、次のようなコメントを添えています。

「この法案は憲法に違反して、自衛隊を米軍の二軍にするものです。これを許せばわが国は立憲国家でなくなり、専制が始まり、世界中に敵が出来、かえって安全でなくなり、戦費で経済的に疲弊し、要するに希代の愚策です。」

*   *   *

非常に厳しい意見ですが、私も以下のような理由からほぼ同感です。

1,今回の法案は日本の国会で議論される前にアメリカの議会で報告された、国民と国会を軽視した法案であること。

2,自衛隊を海外に派兵するには、テロリストと呼ばれるイスラムの過激派がなぜ生まれたのかという歴史的な背景をきちんと自衛隊員に教える必要があること。そのような歴史の理解を欠いた形で派兵されて戦うことになる自衛隊員や日本は、アメリカ軍の単なる傭兵や従属国のようにみなされて、より強い憎しみの対象になると思われる。

3,安倍政権の政策は兵器輸出をめざす企業などの利益を一時的にはもたらすが、長い目で見ると、戦費や次に挙げるテロ対策費などで国家財政が疲弊することになる。

4,日本でもかなり以前から不審物に対する注意が交通機関などで行われるようになってきている。しかし、6月30日に起きた新幹線放火自殺事件が、明らかにしたように、新幹線やその過密な運行システムは基本的には平和な日本だから成立している。

一方、自国や自民族が侮辱されていると考え、圧倒的な兵力の差から自らの命を犠牲にして行われる自殺テロを防ぐためには、新幹線の乗客の身体や荷物に対する徹底した検査が必要である。「安全保障関連法案」は、活発な商業活動や外国からの観光客などを増やそうとする政策を否定するものである。

*   *   *

政治や経済には素人の私の考えなので、むろん反論や批判もありうると思います。しかし、今回の法案は日本の70年の歴史を覆すだけでなく、国民の生命や経済にも深くかかわっています。その法案を「国会の議席数」をたてに「国民」の考えを尊重せずに、現在のような形で強引に通すことは、将来に深い禍根をもたらすものと思われます。

なお、原水爆の危険性を軽視した岸信介政権と同じように、原水爆だけでなく原発の問題も軽視している安倍晋三政権の危険性については、別の機会に改めて論じたいと思います。

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

(2015年7月5日、〈新幹線放火自殺事件と「安全保障関連法案」の危険性〉より改題)

「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピールを「新着情報」に掲載

先日、「安全保障関連法案に反対する学者の会」に賛同の署名を送りました。

チラシを取り込むことができなかったために遅くなりましたが、この会のHP・トップページの背景画像と〈「戦争する国」へすすむ安全保障関連法案に反対します〉と題されたアピールの文章、および呼びかけ人の名簿を「新着情報」に掲載します。

7月3日9時00分現在のアピール賛同者人数(学者・研究者)は、8336人とのことです。

 

リンク→http://anti-security-related-bill.jp

リンク→「安全保障関連法案に反対する学者の会」のアピール