高橋誠一郎 公式ホームページ

安倍政権による「言論弾圧」の予兆

安倍政権による「言論弾圧」の予兆

「征韓論」に沸騰した時期から西南戦争までを描いた長編小説『翔ぶが如く』で司馬遼太郎氏は、「この時期、歴史はあたかも坂の上から巨岩をころがしたようにはげしく動こうとしている」と描いていました(太字引用者、『翔ぶが如く』、第3巻「分裂」)。

この記述に言及した昨年11月13日の記事では「世界を震撼させた福島第一原子力発電所の大事故から「特定秘密保護法案」の提出に至る流れを見ていると、現在の日本もまさにこのような状態にあるのではないかと感じます」と記しました。

リンク→「特定秘密保護法案」と明治八年の「新聞紙条例」(讒謗律)

その時は、大げさだと感じられた方も少なくないと思われますが、それから、2週間も経ない11月26日には、「与党が採決を強行」し「特定秘密保護法」が衆議院を通過したとの記事が各新聞から号外で報じられました。

そのことに触れたブログ記事「司馬作品から学んだことⅡ――新聞紙条例(讒謗律)と内務省」では、〈安倍首相は「この法案は40時間以上の審議がなされている。他の法案と比べてはるかに慎重な熟議がなされている」と答弁したとのことですが、首相の「言語感覚」だけでなく、「時間感覚」にも首をかしげざるをえません。〉と記しました。

さらに、11月28日のブログ記事「政府与党の「報道への圧力」とNHK問題」では、「自民党が衆院解散の前日、選挙期間中の報道の公平性を確保し、出演者やテーマなど内容にも配慮するよう求める文書を、在京テレビ各局に渡していたこと」の問題についても言及しました。

選挙戦も終盤になった現在、「もっとも自由な言論が保障されなければならない大学にも、安倍自民党は露骨な“言論弾圧”をかけている」ことが明らかになったと「日刊ゲンダイ」が報じていますので、「前滋賀知事を牽制 大学までも言論弾圧する安倍自民の暴挙」と題された記事の全文を下に引用しておきます。

安倍首相の「お友達」で共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』を出版している百田尚樹・NHK経営委員が、自分の気に入らない人物に対してはツイッターで、「憎悪宣伝」とも思われるような表現で罵倒することに対しては傍観する一方で、「言論の自由」や「国民の生命」を守ろうとする言論は弾圧しようとする現在の自民党には強い危機感を覚えます。

百田氏の『永遠の0(ゼロ)』を安倍首相は絶賛していますが、著者がその第7章で登場人物の谷川に語らせているような戦前の「道徳」を、安倍自民党の閣僚の多くが目指しているからです。

リンク→「オレオレ詐欺」の手法と『永遠の0(ゼロ)』(1)

*   *

前滋賀知事を牽制 大学までも言論弾圧する安倍自民の暴挙

「日刊ゲンダイ」(ネット版)2014年12月13日

「公平中立な報道」という言葉を錦の御旗に、政権批判を封じ込めようとしている安倍自民党だが、“ドーカツ”をかけている対象は大メディアだけではなかった。もっとも自由な言論が保障されなければならない大学にも、安倍自民党は露骨な“言論弾圧”をかけている。こんな暴挙を許していいのか。

問題となっているのは自民党滋賀県連の佐野高典幹事長が今月8日付で大阪成蹊学園の石井茂理事長に送った文書だ。佐野自民県連幹事長は大阪成蹊学園所属の「びわこ成蹊スポーツ大学」の学長である嘉田由紀子前滋賀県知事が民主党の公認候補の街頭演説に参加するなど、活発に支援していることを問題視。私学といえども私学振興という税金が交付されていることに言及したうえで、こんな文章を大学に送りつけたのである。

<国政選挙中、一般有権者を前にして、特定の政党、特定の候補を、大々的に応援されるということは、教育の「政治的中立性」を大きく損なう行為であり、当県連と致しましては、誠に遺憾であります。本来、公平中立であるべき大学の学長のとるべき姿とはとても考えられません。本件につきましては、自民党本部、および日本私立大学協会とも、協議を重ねており、しかるべき対応を取らざるを得ない場合も生じるかと存じます。東京オリンピックや滋賀県の2巡目国体を控え、スポーツ振興が進められる中、政権与党自民党としても、本事態に対しましては、大きな危惧を抱かざるを得ません。貴職におかれましては、嘉田学長に対しまして、節度ある行動を喚起いただきますよう切にお願い申し上げます>

■近大理事長だった世耕官房副長官

「なんだ、これは!」という文書ではないか。自民党の論法であれば、教育に関わるものは一切、政治活動ができなくなってしまう。

断っておくが、安倍首相のお友達である世耕弘成官房副長官(参院議員)は近畿大の理事長だった時期がある。大学関係者だからといって、政治活動をしなかったのか。嘉田学長の応援がダメなら、大学の理事長などは国会議員になれないことになる。  安倍自民党は東大教授を筆頭に多くの学者をブレーンにして、アベノミクスを喧伝しているくせに、まったく、よくやる。要するに、嘉田学長の政治活動が「ケシカラン」のではなく、安倍自民党を批判するのが許せないということだ。

しかも、この文書は東京五輪や滋賀での国体を引き合いに出している。野党を応援するなら、協力しないぞ、という脅しである。こんな破廉恥な文書は見たことないが、果たして、嘉田前知事も怒り心頭に発している。

「教育基本法14条では『学校での政治活動』については『中立』と書いてありますが、学外や時間外での教育関係者の(政治的)行動を禁止していません。無理やり、教育基本法を拡大解釈したのです。憲法19条には個人の思想信条の自由が定められているので、たとえ大学の学長であっても、個人的な思想信条の自由に基づく(政治的)行動は制限されません。自民党内には教育関係者を兼務していた国会議員がいるのに、私の応援は許さないというのはダブルスタンダードです。今回の自民党からの文書は“圧力”“恫喝”としか思えません。こうした体質こそ、今回の総選挙で国民に信を問わねばなりません」

実は、今度の選挙中、ある大学では自民党に批判的な孫崎享氏(元外交官)の講演が急に中止になることがあった。選挙中ということで、大学側が自主規制したとみられている。

「1941年2月、情報局は中央公論など総合雑誌に対して、リストを提示し、矢内原忠雄(東大総長)、横田喜三郎(最高裁長官)らの執筆停止を求めた。戦前の悪夢がもうすぐそこまで来ているような気がします」(孫崎享氏)

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です