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アベノミクス(経済至上主義)の問題点(1)――株価と年金

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(1)――株価と年金

経済学の専門家でない私が消費税の問題を論じても説得力は少ないだろうとの思いは強いのですが、この問題は「国民」の生活や生命にも重大な影響を及ぼすと思えますので、今回は年金の問題に絞って、次回は司馬遼太郎氏の『坂の上の雲』にも言及しながら武器の輸出入の問題を扱うことで、私が経済至上主義と捉えているアベノミクスの問題点を考察してみたいと思います。

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株価の操作と年金問題

今回の衆議院の解散に際して、安倍首相は「消費税の10%に上げることを17年4月まで先送りにする」ことの是非を問うために総選挙を行うと説明したと伝えられています。

しかし、2014年4月に消費税が5%から8%に増税される際には「社会福祉財源の充実と安定化」が謳われ、具体的には消費税の増税分は「年金・医療・介護・少子化対策などの社会福祉」にあてると説明されていました。

問題は、最近になって株価が値下がりを始めると、「株価に敏感な安倍政権は成長戦略に本腰を入れ、6月13日には安倍首相自らが経済財政諮問会議で法人税を『数年内に20%台に引き下げる』と明言」しただけでなく、さらに、127兆円規模の公的年金を運用する世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、年金の運用額を引き上げるという改革案を打ち出したことです。

この「改革」については、「GPIF改革が年金を破壊? 巨額損失の危険も 株価対策に年金を利用という愚策」という題名の『Business Journal』7月2日の記事で松井克明氏が、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/6月21日号)の『寄稿 GPIF改革四つの誤り 政治介入で運用は崩壊する』という記事では前GPIF運用委員の小幡績慶應義塾大学ビジネススクール准教授が、「GPIF改革は株価操作の道具ではない。年金の長期運用を改善するための100年の計の改革であり、それ以上でもそれ以下でもなく、これは年金運用への政治介入であり、長期的に運用環境を破壊し、大きな損失をもたらす」と警鐘を鳴らし、さらに、臼杵政治名古屋市立大学教授が「経済政策のために公的年金が自国株式への投資を拡大した例も耳にしたことがない」、「経済活性化を目的とした日本株投資の増額は(略)欧米の年金基金の常識でもある『加入者の利益のための運用』に合致するのか疑問である」と、「日経ヴェリタス」(日本経済新聞社/6月15日~21日号)に批判的な記事を載せていることを紹介して、こう結んでいます。「普段は株式投資に前のめり論調の日経や「ダイヤモンド」ですらも疑問を投げかけているのが、現在の政府主導のGPIF改革なのだ」。

昔から「素人は相場には手を出すな」という格言がありますが、株の素人の私から見ると現政権全体が「相場師」化しているような感じさえ受け、「消費税の増税」の是非を問うという説明は単なる口実のように見えます。

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リンク先

アベノミクス(経済至上主義)の問題点(2)――原発の推進と兵器の輸出入

「欲しがりません勝つまでは」と「景気回復、この道しかない。」

「アベノミクス」とルージンの経済理論(ルージンは『罪と罰』に出て来る利己的な悪徳弁護士)

(12月3日。以前の題名「アベノミクス(経済至上主義)と消費税の増税」より改題。2016年6月22日、リンク先を追加)

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