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ドストエーフスキイの会、256回例会(報告者:国松夏紀氏)の延期のお知らせ

下記の予定のところ、コロナビールス蔓延予防策の影響で、目下、延期、期日未定となりました。  

以下にその要旨と「ドストエーフスキイの会」のホームページのアドレスを掲載します。

  •    *   *

下記の要領で例会を開催いたします。皆様のご参加をお待ちしています。

日 時2020年3月28日(土)午後2時~5時

場 所早稲田大学文学部戸山キャンパス31号館2階205室A

                (最寄り駅は地下鉄東西線「早稲田」)

報告者:国松夏紀 氏

 題 目: 『カラマーゾフの兄弟』における「寛容」を巡って

       ―― В. А. トゥニマーノフ氏追悼に寄せて ―

                      一般参加者歓迎・会場費無料

 報告者紹介 : 国松夏紀(くにまつ なつき)氏
1947年久留米生まれ。早大露文・大学院、助手を経て桃山学院大学(名誉教授)。
[特別講演要旨]ドストエフスキー『悪霊』から削除された/入らなかった1章 “У Тихона”(「スタヴローギンの告白」)を巡って(日本ロシア文学会関西支部会報2018/2019 №2)。「昭和九年のドストエフスキー」に寄せて(ロシア・ソヴェート文学研究会「むうざ」第32号2020年)。

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『カラマーゾフの兄弟』における「寛容」を巡って
―― В. А. トゥニマーノフ氏追悼に寄せて ―
今回の報告は、主要3項目によって構成される。当初各項目は例会1回分として発想されながら、時間の経過とともに先行項目とせめぎ合って、ようやくその位置を確保した。
1 そもそもの発端は、一昨年(2018)日本ロシア文学会(於:名古屋外国語大学)での学会大賞、ゴンチャローフを含めた日ロ交渉史研究の成果により沢田和彦氏(埼玉大名誉教授)が受賞しその記念講演で配布された資料に、В. А. トゥニマーノフ氏の名前を見出したことであった。しかもそれは追悼文集、600頁を超える大冊であった。2006年5月、70歳を目前に急逝されて以来、気になっていた。この会とも縁は浅からず、「国際ドストエフスキー研究集会・2000」には来日、講演等の記録は「広場」10号に掲載されている。小生はそれ以前ひょんなことからトゥニマーノフ氏に知遇を得ていた。1996年夏のことである。この稀有な接遇に対して2000年の来日時には充分な返礼も叶わず、内心忸怩たる思い。遅ればせながらその業績の一端に触れて追悼の意を表したいと考えた。
ところが、ペテルブルクのロシア文学研究所(プーシキンの家)の研究員として、ドストエフスキーやゴンチャローフ等の全集編纂に当たり著作は200を超えるトゥニマーノフ氏のこと、身近に各種著作があり、早々と全面的報告などは無理と諦めた。が、折角の機会、追悼文集から木下豊房先生の文章、望月哲男氏の翻訳書『死の家の記録』の解説、そして拙論に言及しているトゥニマーノフ氏の論文などを紹介して追悼としたい。
【追悼文集の書誌データ】Sub specie tolerantiae. Памяти В. А. Туниманова / Ин-т рус.лит.(Пушкинский Дом) РАН.--- СПб. : Наука, 2008. --- 613с.
冒頭のラテン語が難しい。「寛容の姿のもとに」、或いは弔辞にある「寛容は彼の専門家としての信条であり、研究者・注釈者としての彼固有の位置を規定する賢明な人間の原則である。寛容については高度に全知の人間性についてと同様にくり返し語り書き、好きな作家たちの評価にも寛容 толерантность という言葉が使われているのだが、いま一つ判らない。
2 創作方法に係わる項目、前後項目に挟まれて後退、しかしなお、永年の持論Ⅰだけでも自己主張しておきたい。
Ⅰ.アキレスと亀の子(俊足のアキレスは鈍足の亀に追いつけない)、飛矢静止(飛んでいる矢は的に到達できない)等のゼノンのパラドックスは、実は帰謬法(もしくは背理法)の一部分であり、その論理構造は、間違った前提から出発し、不合理な結果によって前提の誤謬を証明する。この古代ギリシアのソフィストの方法とドストエフスキーの創作方法を対比しようとするもので、『カラマーゾフの兄弟』などは例として判然とする。
「神がいなければ、すべては許されてある」。イワンに指嗾されたスメルジャコフはこれを信じてフョードルを殺害したが、何も許されていなかった。イワンは発狂、自身は自殺。
この結果は、前提(神の不在)の間違いを証明する。2000年の国際研究集会では英語で報告、聴衆1名、司会はリチャード・ピース氏。
Ⅱ.トマス・アクィナス『神学大全』:数年前の夏休み、読解に熱中。弁神論の古典に挑戦。
Ⅲ.ドイツの研究者ホルスト‐ユルンゲン・ゲーリック氏の著書 Литературное мастерство Достоевского в развитии.2016 の目次に、「モーゼ五書」ПЯТИКНИЖИЕ とあって五大長篇が並んでいるのは気にかかるところ。
(補)ニーチェ『ツァラトゥストラ』vs. 聖書。
 
3 この項目が最近の刺戟によって覚醒したところである。杉里直人氏訳[詳注版]カラマーゾフの兄弟(2020、水声社)を通読する機会に恵まれ、一語一語を丁寧に読解する初心に帰り、新鮮な気持ちで読み返す中で、目に留まった言葉、великодушие を「寛容」ととらえ検討してみたい。
 
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合評会の「傍聴記」や「事務局便り」などは、「ドストエーフスキイの会」のHP(http://www.ne.jp/asahi/dost/jds)でご確認ください。