高橋誠一郎 公式ホームページ

06月

『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』の写真を掲載

 

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『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』の表紙と帯が完成しましたので、拙著の写真をトップページの「お知らせ」と「主な研究(活動)」、および「著書・共著」のページにも掲載しました。                  

これに伴い以前に掲載していた目次も訂正し、「著書・共著」のページを更新しました。リンク先→近刊『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(成文社)

 

「あとがきに代えて」でも記しましたが、「テキスト」という「事実」を自分の主観によって解釈し、大衆受けのする「物語」を「創作」するという小林の方法は、厳しい現実を直視しないで威勢のよい発言をしていた鼎談「英雄を語る」などにおける歴史認識にも通じていると思えます。このような方法の問題がきちんと認識されなければ、国民の生命を軽視した戦争や原発事故の悲劇が再び繰り返されることになるでしょう。

注 1940年8月に行われた鼎談「英雄を語る」で、「英雄とはなんだらう」という同人の林房雄の問いに「ナポレオンさ」と答えた小林秀雄は、ヒトラーも「小英雄」と呼んで、「歴史というやうなものは英雄の歴史であるといふことは賛成だ」と語っていた。

戦争に対して不安を抱いた林が「時に、米国と戦争をして大丈夫かネ」と問いかけると小林は、「大丈夫さ」と答え、「実に不思議な事だよ。国際情勢も識りもしないで日本は大丈夫だと言つて居るからネ。(後略)」と続けていたのである。この小林の言葉を聴いた林は「負けたら、皆んな一緒にほろべば宣いと思つてゐる」との覚悟を示していた。(「英雄を語る」『文學界』第7巻、11月号、42~58頁((不二出版、復刻版、2008~2011年)。

                                                                        

 
黒澤監督のドストエフスキー観をとおして、小林秀雄のドストエフスキー観や「原子力エネルギー」観の問題点を明らかにしようとした拙著が、現政権の危険な原発政策を変えるために、いささかでも貢献できれば幸いです。加筆・2014年6月29日)
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「主な研究」に掲載した〈黒澤映画《夢》と消えた「対談記事」の謎〉を更新して再掲

 

 拙著『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』がようやく校了となりました。

 本書もだいぶ時間をかけて書いていたのですが、  全体を書き終えた後で読むと論理的なつながりが弱い箇所があることに気づきました。    

 ことに、小林秀雄がムィシキンの批判者として重要視していたラドームスキーについてはあまり知られていないようなので、プーシキンの主人公と同じ名前のエヴゲーニーという名前を持つラドームスキーの役割を詳しく分析しました。このことにより、 映画《白痴》から映画《赤ひげ》への流れと、黒澤明のドストエフスキー理解の深まりがいっそう明確になったのではないかと考えています。

 それゆえ、「はじめに――黒澤映画《夢》と消えた「対談記事」の謎」においても黒澤明と小林秀雄の「対談」に至るまでとその後の流れを厳格に時間軸に沿って記すとともに、 「原子力エネルギー」だけでなく「大地主義」についても記すことで、 両者の見解の違いを明瞭にしました。

リンク先 →黒澤映画《夢》と消えた「対談記事」の謎

 

「Ⅳ、黒澤明・小林秀雄関連年表」を更新

 【スタンバーグ監督の映画《罪と罰》】などを追加した前回に続いて、「年表」のページにある標記の「Ⅳ、黒澤明・小林秀雄関連年表(1902~1998)」に新たな項目を追加し、誤記を訂正しました。

なお、前回の更新では【チャップリン監督の《独裁者》】を追加していましたが、それは黒澤映画《夢》がこの映画からも強い影響を受けていると思われるからです。

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 今回の主な追加事項は、1935年に公開された山本嘉次郎監督の映画《坊つちゃん》と1936年に公開された映画《吾輩は猫である》で、これらはまだ見ていないのですが、文芸作品の映画化という視点からも重要だと思えます。 

黒澤明と小林秀雄の芥川龍之介観を比較した際には、映画《羅生門》にも言及していたのでこの映画がグランプリ言及した1951年9月のヴェネツィア国際映画祭においてグランプリを受賞したことも記しました。

また、石原慎太郎の『太陽の季節』がヒットした時期は、原発推進の流れが加速した時期に重なっていました。このこととの関連で1975年に小林秀雄が、都知事選で後に原発推進だけでなく、核武装も唱えることになる石原慎太郎の推薦人となったことを記し、1995年12月には高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウムの漏洩による火災事故があったことも記載しました。

 

講座「新聞記者・正岡子規と夏目漱石――『坂の上の雲』をとおして」のお知らせを「主な研究」に掲載

世田谷文学館「友の会」主催の講座「新聞記者・正岡子規と夏目漱石――『坂の上の雲』をとおして」を下記のような形で行います。

講義の内容や文献については、「主な研究」を参照してください。

日時: 6月27日(金) 午後2時~4時

場所: 世田谷文学館 2階 講義室

参 加 費:700円

申込締切日:6月16日(月)