高橋誠一郎 公式ホームページ

ドストエフスキー

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年)

ISBN978-4-903174-33-4_xl 

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館のホームページより転載)

 

目次  

序章 木曽路の「白雲」と新聞記者・正岡子規

一、子規の「かけはしの記」と漱石の『草枕』

二、子規の時代と「写生」という方法

三、本書の構成  

第一章 春風や――伊予松山と「文明開化」

一、辺境から眺める

二、「あらたな仕官の道」――秋山好古の青春

三、「まげ升〔のぼ〕さん」

四、司法省法学校と士官学校のこと

五、一二歳の編集者「桜亭仙人」と「黒塊(コツクワイ)」演説

六、松山中学と小説『坊つちゃん』  

第二章 「天からのあずかりもの」――子規とその青春

一、「文明開化のシンボル」――鉄道馬車

二、「栄達をすててこの道を」――子規の決断

三、真之の「置き手紙」――海軍兵学校と英国式教育

四、ドイツ人を師として――好古と陸軍大学校

五、「笑止な猿まね」――日露の近代化の比較

六、露土戦争とロシア皇帝の暗殺

七、「泣かずに笑へ時鳥」――子規と畏友・漱石のこと

八、「時代の後ろ盾」――子規の退寮事件  

第三章 「文明」のモデルを求めて――「岩倉使節団」から「西南戦争」へ

一、『翔ぶが如く』――「明治国家の基礎」の考察

二、「征韓論」――「呪術性をもった」外交

三、「文明史の潮合」に立つ

四、ポーランドへの視線とロシア帝国と日本の比較

五、「新聞紙条例と讒謗律」から「神風連と萩の乱」へ

六、「乱臣賊子」という用語――ロシアと日本の「教育勅語」  

第四章  「その人の足あと」――子規と新聞『日本』

一、「書(ふみ)読む君の声近し」――陸羯南と子規

二、「国民主義」と「大地主義」

三、陸羯南と加藤拓川

四、獺祭書屋(だっさいしょおく)主人

五、羯南という号――「北のまほろば」への旅

六、新聞『小日本』と小説「月の都」

七、日清戦争と詩人の思想

八、子規の「従軍記事」

九、「愚陀仏庵」での句会――「写生」という方法  

第五章 「君を送りて思ふことあり」――子規の眼差し

一、「竹ノ里人」の和歌論と真之――「かきがら」を捨てる

二、「倫敦消息」――漱石からの手紙

三、「澄んだ眼をしている男」――広瀬武夫のピエール観

四、虫のように、埋め草になって――「国民」から「臣民」へ

五、奇跡的な「大航海」と夢枕に立つ「竜馬」

六、新聞の「叡智(えいち)と良心」

七、驀進(ばくしん)する「機関車」と新聞『日本』

八、「明治の香り」――秋山好古の見識  

終章 「秋の雲」――子規の面影

一、「雨に濡れる石碑」

二、「僕ハモーダメニナッテシマツタ」――子規からの手紙

三、「柿喰ヒの俳句好き」と広田先生

四、「写生の精神」  

参考文献

本書関連・正岡子規簡易年表

あとがき  

 

お詫びと訂正

カバー・そでに記載されている私の肩書きに間違いがありましたので、お詫びの上、訂正致します。

(誤)比較文明学会理事→(正)元比較文明学会理事  

 

書評・紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

‘18.03.31   紹介『異文化交流』第18号(佐藤浩一氏)

‘17.03.31   書評『比較文学』第59巻(松井貴子氏)

‘17.03.13   書評『ユーラシア研究』第55号(木村敦夫氏)

 →新聞への思い 正岡子規と「坂の上の雲」人文書館のブックレビュー

‘16.11.15   書評 『比較文明』No.32(小倉紀蔵氏)  

 →新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』、人文書館のブックレビュー

‘16.07.10 書評 『世界文学』No.123(大木昭男氏)

  →『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』、人文書館のブックレビュー

‘16.02.16 紹介 『読書会通信』154号(長瀬隆氏)

 →「『新聞への思い 正岡子規と「坂の上の雲」』を推挙する」  

 

リンク→新聞記者・正岡子規関連の記事一覧

リンク→年表Ⅲ、正岡子規・夏目漱石関連簡易年表(1857~1910)  

(2019年2月25日、加筆)

『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(成文社)

 

『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(成文社)

 

005l

 

本書の概要

1956年12月、黒澤明と小林秀雄は対談を行ったが、残念ながらその記事が掲載されなかったため、詳細は分かっていない。共にドストエフスキーにこだわリ続けた両雄の思考遍歴をたどり、その時代背景を探ることで「対談」の謎に迫る。「原子力エネルギー」への2人の対応はどうであったか──

リンク→映画《静かなる決闘》から映画《赤ひげ》へ――拙著の副題の説明に代えて

 

目次

 はじめに──黒澤映画《夢》と消えた「対談記事」の謎 

 一、フクシマの悲劇
 二、映画《夢》と『罪と罰』における夢の構造
 三、消えた「対談記事」

序 章 「シベリヤから還つた」ムィシキン──小林秀雄のドストエフスキー論と黒澤明
 はじめに 不安な時代と小林秀雄
 一、「罪の意識も罰の意識も」持たない主人公──「『罪と罰』について I」
 二、「殆ど小説のプロットとは言ひ難い」筋──「『白痴』について I」
 三、「アグラアヤの為に思ひ附いた画題」──ムィシキンの観察力と映画《肖像》
 四、小林秀雄の主人公観と「全編中の大断層」という創作
 五、『白痴』の結末をめぐる解釈と黒澤映画《白痴》
 六、本多秋五の問いと黒澤明のドストエフスキー観の深まり

第一章 映画《白痴》の魅力と現代性──戦争の「記憶」と洞察力
 はじめに 黒澤明のドストエフスキー観と映画《白痴》
 一、復員兵の深夜の「悲鳴」
 二、「分身」という方法──映画《野良犬》と映画《白痴》
 三、黒澤明の芥川龍之介観──映画《羅生門》
 四、父と息子の対立と「気違いじみた生活力」──軽部(レーベジェフ)の存在
 五、「三角形の欲望」の視覚化と観察する力
 六、一対の花瓶と若い死刑囚の眼──『白痴』と『戦争と平和』
 七、燃えあがる札束とその後の展開
 八、ナイフと小石の象徴性
 九、「氷上カーニバルの夜」と『アンナ・カレーニナ』
 一〇、映画《白痴》の結末から映画《赤ひげ》へ

第二章 映画《生きものの記録》と長編小説『死の家の記録』──知識人の傲慢と民衆の英知
 はじめに 「第五福竜丸」事件と小林秀雄の原爆観
 一、「核の時代」と臆病な「知識人」
 二、「民衆」の行動力と「法律の手」による「束縛」
 三、黒澤明と『死の家の記録』──民衆芝居と「民衆」のエネルギーの描写
 四、小林秀雄の『死人の家の記録』観──主人公とペトロフの考察
 五、映画《ゴジラ》から《生きものの記録》へ──知識人のタイプの考察
 六、特集記事「ついに太陽をとらえた」と小説『太陽の季節』
 七、消えた「対談記事」と「イソップの言葉」
 八、映画《生きものの記録》から映画《この子を残して》へ

第三章 映画《赤ひげ》から《デルス・ウザーラ》へ──『白痴』のテーマの深化
 はじめに 映画《赤ひげ》と小林秀雄の『白痴』論
 一、映画《愛の世界・山猫とみの話》と『虐げられた人々』
 二、雑誌『時代』と小林秀雄の「大地主義」観
 三、映画《愛の世界・山猫とみの話》と「鬱蒼とした森」の謎
 四、「共犯者」と「治療者」──『白痴』の結末についての再考察
 五、映画《赤ひげ》における「師弟の関係」の描写
 六、『白痴』の結末とプーシキンの理念
 七、映画《デルス・ウザーラ》とタチヤーナの「夢」
 八、「エモーショナルな歴史認識」と「事実」の隠蔽

第四章 映画《夢》と長編小説『罪と罰』──知識人の「罪」と自然の「罰」
 はじめに 映画《夢》と「大地主義」の理念
 一、小林秀雄の『罪と罰』論と映画《罪と罰》評
 二、黒澤明とクリジャーノフの映画《罪と罰》
 三、「やせ馬の殺される夢」と民話的な世界──第一話「日照り雨」と第二話「桃畑」
 四、ソーニャと「雪女」の哀しみ──第三話「雪あらし」と脚本『雪』
 五、「殺された老婆が笑う夢」と死んだ兵士たちの帰還──第四話「トンネル」
 六、小林秀雄と黒澤明のゴッホ観──第五話「鴉」
 七、原発事故と「良心の呵責」──第六話「赤富士」
 八、「弱肉強食の思想」と「人類滅亡の悪夢」──第七話「鬼哭」
 九、ラスコーリニコフの「復活」──第八話「水車のある村」

 

あとがきに代えて──小林秀雄と私

初出一覧

小林秀雄関連の参考文献

付録資料
 一、長編小説『白痴』の登場人物と配役
 二、映画《白痴》・オリジナル版の構成
 三、カットされた後の映画《白痴》の構成
 四、黒澤明・小林秀雄関連年表

ISBN978-4-86520-005-8 C0098
四六判上製 本文縦組304頁
定価(本体2500円+税)
2014.07

 「人名・作品名索引」のリンク先 『黒澤明と小林秀雄――「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(人名・作品名索引)

書評・紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

‘16.02.08 書評 『ユーラシア研究』第53号(木村敦夫氏)

‘15.10.15 書評 『ロシア語ロシア文学研究』第47号(小林実氏)

‘15.04.11 書評 『ドストエーフスキイ広場』NO.24(国松夏紀氏)

‘15.01.17 書評 『図書新聞』(植田隆氏)

‘14.12.10 書評 『世界文学』No.120(平野具男氏)

‘14.09.30 紹介 『全作家』95号(文芸時評)

‘14.09.15 紹介 『望星』10月号(新刊紹介)

‘14.09.01 紹介 『出版ニュース』09月上旬号   

(成文社のHPより)

 

『欧化と国粋――日露の「文明開化」とドストエフスキー』(刀水書房、2002年)

287-8

 

「目 次」より

序章 二つの文明観――福沢諭吉の文明観とドストエフスキー

ロンドン・一八六二年

ピョートル大帝の改革と日本の近代化

「欧化と国粋」の対立とドストエフスキー

「文明開化」と「グローバリゼーション」

 

第一章 日本の開国交渉とクリミア戦争――「欧化と国粋」の視点から

ロシアからの黒船(一八五三年)

ロシアの視点からの鎖国考

ロシアからの使節団(一七九二年と一八〇四年)

クリミア戦争とバックルの『イギリス文明史』

クリミア戦争の展開と日本の条約交渉

「欧化と国粋」の対立――近代化の苦悩(ロシア)

「拝外と排外」の心理――言語教育と歴史認識

 

第二章 「大改革」の時代と「大地主義」――雑誌『時代』と『虐げられた人々』

ロシアの「大改革」と明治維新――ロシアと日本の司法改革

司法改革の歴史とペトラシェーフスキイ事件

「六〇年代知識人」の登場――「余計者」の批判

雑誌『時代』の発刊と大地主義の理念

「都市の秘密」と「農村の混乱」――『虐げられた人々』

「父と子」の対立と「領主と民衆」の対立の「相同性」

「復讐の権利」と「和解の模索」

「農奴解放令」後の混乱――学生運動の先鋭化

 

第三章 権力と強制の批判――『死の家の記録』と「非凡人の思想」

オムスクの監獄と『死の家の記録』――作品の構造と特徴

「文明の象徴」としての監獄――支配と服従の観察

民衆芝居の創造性――自由の意義の発見

「近代化の制度」としての監獄と病院――監視と強制

強制への反抗と権力への意志――「非凡人の思想」の誕生

「父親殺し」の貴族――「権力継承」の問題

「自己と他者」の死の考察――「非凡人の思想」の批判

 

第四章  「虚構」としての「国民国家」史観――『冬に記す夏の印象』と日本

福沢諭吉とドストエフスキー ――文体の特徴

近代西欧文明の現実――イギリス、フランス

チャアダーエフの文明観と「余計者」の考察

バックルの「国民国家」史観の批判――比較文明論の誕生

チャアダーエフの文明観とゴロヴニーンの日本観

方法としての文学――「自己」と「他者」の認識

「支配と服従」の心理の分析――『地下室の手記』

雑誌『時代』の発行禁止と「大改革」の終焉

 

終章 「欧化と国粋」のサイクルの克服――夏目漱石の文明観とドストエフスキー

ロンドン――一九〇〇年

「欧化と国粋」の対立――近代化の苦悩(日本)

「富国強兵」と「道義立国」――福沢諭吉と中江兆民

『三四郎』の「周辺文明論」的な構造

「大地主義」の理念と比較文明学

 

注/人名索引/事項索引/  関連年表/ あとがき

 

リンク→「グローバリゼーション」と「欧化と国粋」の対立 (序章より)

リンク→ 『欧化と国粋――日露の「文明開化」とドストエフスキー』(人名・作品名索引)

*   *   *

お詫びと訂正

急いで書き上げたために本書には、いくつもの重大な誤記がありました。深くお詫びして訂正いたします。

69頁 9行目 誤「一八五四年から四年間」 →正「一八五四年から五年間」

74頁 2行目 誤「劇評家」 →正「詩人」

77頁 後ろから3行目 誤(45) →正(44)(注の番号)

102頁 後ろから3行目 誤「近づこう」 →正「近づこうと」

103頁 後ろから3行目  誤「四年間」→ 正「五年間」

146頁 3行目 誤「そこに見るのものは」 → 正「そこに見るものは」

152頁 後ろから8行目 誤「自分の足で立つ時がきている → 正「自分の足で立つ時がきている」

162頁 9行目 誤「歴史・文化類型」→ 正「文化・歴史類型」

174頁 後ろから5行目 誤『坊ちゃん』→ 正『坊っちゃん』

188頁 8行目 誤「反乱のを」→ 正「反乱を」

191頁 7行目 誤「滅ぼすと滅ぼさるると云うて可なり」→ 正「滅ぼすと滅ぼさるるのみと云うて可なり」(下線部を追加)

193頁 2行目 誤「奴隷の如くに圧制」したいものだと →正「奴隷の如くに圧制」したいという

196頁 後ろから3行目 誤「広田の向かいに座った」 →正「三四郎の向かいに座った」

199頁 後ろから6行目 誤「平行現象」→ 正「並行現象」

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

書評 齋藤博氏『比較文明』第18号、2002年

書評 大木昭男氏『ドストエーフスキイ広場』第12号、2003年

紹介 米山俊直氏『私の比較文明論』(世界思想社、2002年、55頁)

紹介 長瀬隆氏『ドストエーフスキイ広場』(第12号、2003年、99~101頁)

紹介 三宅正樹氏『文明と時間』(東海大学出版会、2005年、48頁)

紹介 『青鴎』2002年

インタビュー 「著者に聞く」(東海大学新聞、2002年、3月5日・20日)

『「罪と罰」を読む(新版)――〈知〉の危機とドストエフスキー』(刀水書房、2000年)

488708272X  

[はじめに ――「自己の謎」と「他者」]より

古代ギリシャのデルフォイの神殿には「汝自身を知れ」という神託が掲げられていたといいます。このことは一見、簡単なようにも見えますが、古代エジプトで旅人に難問を出して苦しめていたというスフィンクスの謎にも似て、意外と難しい要請のようです。(中略)

「自分とは何か」というこの問いがいっそう切実なものになってきたのは、恋愛の自由や、移動の自由だけではなく、職業の選択の自由も保証されて、自己の確立が求められるようになった近代に入ってからです。封建時代では農民の子供は農民であり、肉屋の子供は肉屋にというようにその職業は決まっていましたが、その一方で、個人の自由の増大は、大学や職業の選択、あるいは恋愛相手を決める際の悩みをも伴ったし、「現在の自分」と「なりたい自分」とのギャップも生み出すようにもなりました。

このような時代の潮流の中で、下士官から始めて、ついに皇帝にまで出世したナポレオン(一七六九~一八二一)は、個人の自由が増大した近代という時代を象徴しているような人物と言えるでしょう。そして、『赤と黒』の主人公ジュリヤンのように多くの若者がナポレオンへの強いあこがれを持つようになったのです。

名門サンクト・ペテルブルク大学の法学部で学んでいた『罪と罰』の主人公もまた、そのような一人と言えるでしょう。しかし、母親からの送金がとぎれたことで大学を退学せざるを得なくなった彼は、この小説に登場する時、まさに深いアイデンティティの危機に直面していたのです。

こうして、彼はクリミア戦争(一八五三~五六)に敗北して、それまでの価値が疑問になり、様々の犯罪も頻発するようになっていた混迷のロシアで「自分とは何か」を模索し、ついに人間を「非凡人」と「凡人」の二種類に分ける「非凡人の理論」をあみだし、高利貸しの老婆の殺害という「正義」の犯罪を犯すことになるのです。(中略)

ドストエフスキーは『罪と罰』のエピローグで、主人公の若者に自分だけが真理を知っていると思い込んだ人々が互いに殺し合いを始め、ついには地上に数名しか生き残らなかったという夢を見させています。この悪夢は第一次世界大戦だけでなく、お互いに自分の「正義」を主張してほとんど地球全域を巻き込み、五千万人もの死者を出した後にようやく終わりを告げた第二次世界大戦をも予言していたようにも思われます。混迷のロシアに生きたドストエフスキーの視線は現代の政治状況にも迫っていると言わねばなりません。(中略)

幸い近年ドストエフスキー研究は飛躍的に深まり、ロシアや西欧だけでなく日本でもすぐれた研究書が多く出版されています。また比較文明論や比較文学の分野でも最近の諸科学の成果を取り入れて新たな地平が開かれつつあります。それゆえ本書ではそれらの書物を紹介し、当時のロシアや西欧のすぐれた文学作品や思想書と比較しながら、『罪と罰』を丹念に読むことにより、近代西欧文明の様々な問題点を明らかにするとともに、新らしい〈知〉の形を模索したドストエフスキーの試みに迫りたいと思います。(後略)  

  目  次

はじめに――「自己の謎」と「他者」                   3

第一章 アイデンティティの危機  ――第一の動機          21~35

試行者――ラスコーリニコフ                          21

ヴェルテルとラスコーリニコフ                        23

善良な犯罪者                                  25

犯罪者と名探偵                                29

過渡期                                      31

なぜ「悪人」を殺しては、いけないのか                33  

第二章 家族の絆と束縛  ――第二の動機                  37~51

母からの手紙                                        37

妹――ドゥーニャ                                    39

名探偵デュパンとホームズ                            43

酔っぱらい――マルメラードフ                        45

受難者――ソーニャ                                  47

「自己」としての家族                                50    

第三章  「正義」の犯罪  ――第三の動機                  53~72

高利貸しの老婆                                      53

完全犯罪の試み                                      54

呼び鈴の音                                          59

意図しなかった第二の殺人                            62

謎としての自己                                      66

やせ馬が殺される夢                                  68  

第四章 自己の鏡としての他者――立身出世主義の影        73~86

苦学生――ラズミーヒン                              73

功利主義の思想――中年の弁護士ルージン             75

決められた世界                                      80

ナポレオンの形象                                    83

正反対の性格の奇妙な類似                            85  

第五章  非凡人の理論 ――第四の動機                    87~104

予審判事――ポルフィーリイ                        87

記憶にない論文――非凡人の思想                      89

「自然淘汰」の法則                                  95

決して誤ることのない「良心」                        97

自己の絶対化と他者                                  102

  第六章 他者の喪失――近代的な〈知〉の批判              105~121

急がば回れ――ラズミーヒン                          105

「でたらめ」の擁護――ルージンへの批判                106

「不死」の思想――『フランケンシュタイン』            109

論理の罠(わな)――他者の喪失                      112

「大地主義」の理念                                    116  

第七章 隠された「自己」――「変身」の試み              123~143

農奴の所有者 ――  スヴィドリガイロフ              123

生きていた老婆の夢――目撃者としての身体            125

弱肉強食の思想――「権力」への意志                  129

スヴィドリガイロフとの対決――欲望の正当化          132

隠された「自己」――『ジーキル博士とハイド氏』      136

「超人」の思想とニヒリズム                          139  

第八章 他者の発見――新しい「知」の模索                145~162

流れ出る血の意味                                    145

「正教」の理念――ソーニャ                         148

共存の構造                                          151

感情の力                                            155

民衆の英知                                          158  

第九章 「鬼」としての他者――人類滅亡の悪夢            163~182

残された矛盾                                        163

権力への意志の実践――『わが闘争』                  165

権力への服従――『自由からの逃走』                  168

文明の衝突――「正義」の戦争                        170

「鬼」としての他者――「自己」としての民族          173

「共ー知」としての良心                              178

  第十章 「他者」としての自然――生命の輝き              183~199

最後の謎――うっそうたる森林                        183

「自然支配」の思想                                  184

「非凡人」思想と地球環境                            188

「自然界の調和」の思想―― 多様性の意味            191

ラスコーリニコフの復活                              196  

注/参考文献/あとがき

ドストエフスキー関連年表/ナポレオン関連年表/人名索引  

 

訂正

 下記の箇所をお詫びして訂正いたします。

102頁後から2行目  市街→ 死骸 123頁1行目 

第四部に入ってから→ 第三部の終わりの場面  

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

〔新版〕

書評 清家清氏『異文化交流』第3号、2000年

書評 岡村圭太氏『ドストエーフスキイ広場』、2001年

紹介 小林銀河氏 「日本人の宗教意識とドストエフスキー研究」 「スラブ・ユーラシア学の構築」研究報告集、第10号

紹介 「白バラ図書館」(HP)

〔旧版〕

書評 木下豊房氏『比較文明』第13号、1997年

書評 渡辺好明氏『ドストエーフスキイ広場』第6号、1996年

書評 石井忠厚氏『文明研究』第6号、1996年

紹介 『出版ニュース』1996年

 

  

リチャード・ピース 著、池田和彦訳、高橋誠一郎編『ドストエフスキイ「地下室の手記」を読む』(のべる出版企画、2006年)

4877039309

 

目次

日本の読者の皆様へ

序論 ロシアにおける自由の概念

 

『地下室の手記』を読む

Ⅰ 作品の背景

一、文学的背景

二、論争の背景

Ⅱ 『地下室の手記』注釈

第一部注釈

一.悪意 /二.意識 /三.壁 /四.病、苦痛 /五.責任と原因 /六.すべて美にして崇高なるもの /七.自己利益 /八.欲望   / 九.二かける二 /一〇.水晶宮 /一一.作者対読者

第二部注釈

Ⅲ 批評史・研究史

原注・訳注

付論 

日本における『地下室の手記』――初期の紹介とシェストフ論争前後  池田和彦

『地下室の手記』の現代性――後書きにかえて  高橋誠一郎

参考文献/索引

書評

(この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

書評 木下豊房氏『ドストエーフスキイ広場』第16号、2007年

(木下豊房ネット論集『ドストエフスキーの世界』www.ne.jp/asahi/dost/jds/dost200.htm所収)

*   *   *

日本の読者の皆様へ

ミレニアム・イヤーにあたる二〇〇〇年に、私は千葉大学でのドストエフスキイ研究集会に参加する栄をえました。たくさんの研究者が加わったこの研究集会の成功は、ドストエフスキイにたいする世界的な関心を語るだけでなく、日本においてドストエフスキイが高く評価されていることを明らかに示すものでした。

じっさいドストエフスキイは私たちの現代社会に示唆するところが多く、『地下室の手記』はドストエフスキイの鍵となる作品で、西欧文明の饒舌な思いあがりや価値観にたいする数多くの批判を提供しています。ロシアの視点から書いていたドストエフスキイは、ロンドンでの万国博に代表されるような科学や功利主義、そして一九世紀の貿易の「グローバリゼーション」が文明化を促進させる原動力であると見る西欧のオプチミスムを必ずしも共有していませんでした。(中略)

『地下室の手記』が一八六四年にはじめて発表されたとき、ロシアはすでに西欧流の改革のプログラムにのりだしていました。ドストエフスキイは、「地下室」の主人公をつうじて、ロシア社会の発展についてだけでなく、西欧の価値観そのものに多くの懸念を表明することができました。(後略)

リチャード・ピース(Richard Peace)

リンク→「『地下室の手記』の現代性――後書きに代えて」

『ロシアの近代化と若きドストエフスキー ――「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)

59l(←画像をクリックで拡大できます)

『白夜』第一部の題辞

「驚くべき夜であつた。親愛なる読者よ、それはわれわれが若いときにのみ在り得るやうな夜であつた。空は一面星に飾られ非常に輝かしかったので、それを見ると、こんな空の下に種々の不機嫌な、片意地な人間が果して生存し得られるものだらうかと、思はず自問せざるをえなかつたほどである」(米川正夫訳)

目次

はじめに――「祖国戦争」とドストエフスキーの父ミハイル

「ナポレオンのテーマ」/「謎」としての人間/「イソップの言葉」

 

序章  近代化の光と影――「祖国戦争」の勝利から「暗黒の三〇年」へ

一、ナポレオンのロシア侵攻とドストエフスキーの父ミハイル

医学生ミハイル/ピョートル一世の教育改革とミハイル/「文明」による「野蛮の征伐」/「聖戦」意識の芽生え――ロシアのナショナリズム

二、『知恵の悲しみ』――青年貴族たちの苦悩

「諸国民の解放戦争」と青年将校/喜劇『知恵の悲しみ』と世代の考察/新しい知識人の登場/改革の負の側面とその批判/プーシキンの政治詩「自由」/デカブリストの乱と「暗黒の三〇年」

三、「立身出世主義」の光と影――父ミハイルとロシアの知識人

父ミハイルの出世とロシア貴族の考察/検閲の問題/マサリクのドストエフスキー観

 

第一章 父ミハイルと若きドストエフスキー

一、領地の購入と農奴制の問題との直面――「小ツァーリ」としての地主

母マリア/領地の購入/村の大火と母の病気

二、ロシアの「教育改革」とドストエフスキー ――寄宿学校で

ポーランドと ウクライナの「教育改革」/ロシアの「教育勅語」/チェルマーク寄宿学校

三、文学との出会い――語学教師ビレーヴィッチとロシア文学への関心

語学教師ビレーヴィッチとゴーゴリ/自己の表現力と母国語

四、知識人の悲劇――『哲学書簡』の発禁とプーシキンの死

「西欧派」と「スラヴ派」の誕生/プーシキンの決闘と死/『青銅の騎士』と「発狂」のテーマ/哲学(愛・知)への関心

五、ドストエフスキーと『知恵の悲しみ』――ロシア知識人の考察

『知恵の悲しみ』とその上演/長編小説『未成年』と『知恵の悲しみ』/ 作品を解く鍵としての『知恵の悲しみ』/「官等と勲章」の問題

六、「方法」としての文学ーー父の横死と文学への志

工兵学校への入学/社会の不平等さとの直面/ラジーシチェフとプーシキン/文学作品の読書と習作の試み/バルザックの作品の翻訳と作家への道

 

第二章 自己と他者の認識と自立の模索――『貧しき人々』

一、方法としての対話――「文学」の二義性

書簡体という形式/「教訓を与える」文学/「いじめ」の問題/『駅長』/自己認識の深まり

二、『貧しき人々』の核――ワルワーラの「手記」

村と都市との対比/隠された「自由思想」/隠された「父と子」のテーマ/権力者としての教師/学校制度と「いじめ」の問題/外国語学習と「自己」の確立

三、「模倣」と「身分」

「誤読」の問題/上位者の「模倣」と「恩恵」/プライヴァシーの侵害/「公」と「個」の問題/官僚制度の腐敗と「沈黙」」/新しい女性/「罪の懺悔」と検閲/共感の能力/題名の意味

四、残された問い――終わり方の問題をめぐって

裁判の勝訴と突然の死/シベリアのテーマ/終わり方の問題/ドブロリューボフの指摘

 

第三章 欲望と権力の考察――『分身』と初期作品をめぐって

一、『貧しき人々』から『分身』へ――ベリンスキーの評価をめぐって

評論家ベリンスキーとの出会い/「笑い」という手法/ドストエフスキーの現実認識

二、「立身出世の望み」と「欲望の模倣」――『分身』

二重人格の心理/脱落の恐怖/「三角形の欲望」/「仮面」のテーマ/「賭け」の失敗/「噂」の効能/同じ人間の大量生産

三、権力と法の考察――「雪解け」の可能性の時代

『プロハルチン氏』/「自由思想家」という噂/ペトラシェフスキーの会/『ロシア人作家についての歴史辞典の試み』

四、権力と「父親殺し」のテーマ――『プロハルチン氏』、『家主の妻』

『けちな騎士』/「父親殺し」のテーマ

五、ゴーゴリとベリンスキーの論争――「臣民の道徳」をめぐって

『友人達との往復書簡選』/「キリル・メトディ団」の逮捕/ベリンスキーの手紙/『ステパンチコヴォ村とその住民』

 

第四章 『白夜』とペトラシェフスキー事件

一、『ペテルブルグ年代記』から『白夜』へ――「夢想家のテーマ」の深まり

二月革命後とロシア/『ペテルブルグ年代記』/「夢想家」の考察/詩人プレシチェーエフへの献辞

二、「道化」に秘められた意志――『ポルズンコフ』

『知恵の悲しみ』からの引用/ポルズンコフとレペチーロフ

三、「良心」の痛みと改革への決意――『弱い心』

『青銅の騎士』と『弱い心』/「心の裁判官」としての「良心」/削除された「自由思想家」

四、『白夜』に隠された「農奴解放」のテーマ

ロシアの二重性/虐げられた農奴の娘/「謎の下宿人」とオネーギン/『コロムナの小家』の秘密/「夢想家」と「行動的な改革者」/評論集『打ちひしがれた人々』/『その前夜』の構造と『白夜』/『白夜』から『地下室の手記』へ

五、ペトラシェフスキー事件――ロシアの「大逆事件」

独房への収監と訊問/検閲制度の批判/『小さな英雄』/「不在化」するための言葉/死刑の宣告と恩赦/ハンガリー出兵とクリミア戦争

 

終章  日本の近代化とドストエフスキーの受容

一、クリミア戦争と日本の「開国」

ロシアからの黒船/ピョートル大帝の改革と日本/方法としての「発狂」

二、日露戦争後の日本と「大逆事件」

『アンナ・カレーニナ』と非戦論/徳冨蘆花と「勝利の悲哀」/夏目漱石と「大逆事件」/『沈黙の塔』と「謀叛論」

三、日本の帝国化と「教育改革」

『復活』の上演と『虐げられた人々』/徳富蘇峰の「教育改革」論/「芥川龍之介の『河童』と狂気の問題

四、「大東亜戦争」と後期ドストエフスキー

『若き日の詩人たちの肖像』と『白夜』/『罪と罰』の解釈と「大東亜共栄圏」/ダニレフスキーの文明観とドストエフスキー/マサリクの『作家の日記』批判/『罪と罰』の現代的意義

注/ 人名索引/事項索引/ 関連年表/ あとがき

リンク→「暗黒の三〇年」と若きドストエフスキー(「はじめに」より)

 リンク→「新しい戦争」の時代と「憲法」改悪の危険性(「あとがき」より)

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

‘12.03.08 書評 『異文化交流』(三宅正樹氏)

‘09.03.10 書評 『比較文明』(黒川知文氏)

‘08.05.31 書評 『異文化交流』(杉里直人氏

‘08.04.19 書評 『ドストエーフスキイ広場』(大木昭男氏)

‘08.03.31 書評 『比較文学』(西野常夫氏)

‘08.03.31 書評 『比較思想研究』(寺田ひろ子氏)

‘07.11.04 書評 『しんぶん赤旗』(木下豊房氏)

‘07.10.27 書評 『図書新聞』(「O」氏)

‘07.09.26 書評 『聖教新聞』(「哨」氏)

‘07.09.11 紹介 『出版ニュース』9月中旬号

‘07.09.01 紹介 『望星』10月号

(成文社のHPより)