高橋誠一郎 公式ホームページ

司馬遼太郎

志村有弘編『司馬遼太郎事典』(勉誠出版、2007年)

司馬遼太郎事典・大

司馬遼太郎のすべてを知る大事典 『国盗り物語』『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『街道をゆく』など主要173作品から関連人物・キーワードまでを詳細に解説、さらに巻末に「年譜」「主要参考文献」を付し、司馬遼太郎の世界を極める。

下記の項目を執筆

/「鬼謀の人」/ 「北斗の人」/ 「中国を考える」/ 「東と西」/「歴史の舞台 文明のさまざま」/

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年)

ISBN978-4-903174-33-4_xl 

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館のホームページより転載)

 

目次  

序章 木曽路の「白雲」と新聞記者・正岡子規

一、子規の「かけはしの記」と漱石の『草枕』

二、子規の時代と「写生」という方法

三、本書の構成  

第一章 春風や――伊予松山と「文明開化」

一、辺境から眺める

二、「あらたな仕官の道」――秋山好古の青春

三、「まげ升〔のぼ〕さん」

四、司法省法学校と士官学校のこと

五、一二歳の編集者「桜亭仙人」と「黒塊(コツクワイ)」演説

六、松山中学と小説『坊つちゃん』  

第二章 「天からのあずかりもの」――子規とその青春

一、「文明開化のシンボル」――鉄道馬車

二、「栄達をすててこの道を」――子規の決断

三、真之の「置き手紙」――海軍兵学校と英国式教育

四、ドイツ人を師として――好古と陸軍大学校

五、「笑止な猿まね」――日露の近代化の比較

六、露土戦争とロシア皇帝の暗殺

七、「泣かずに笑へ時鳥」――子規と畏友・漱石のこと

八、「時代の後ろ盾」――子規の退寮事件  

第三章 「文明」のモデルを求めて――「岩倉使節団」から「西南戦争」へ

一、『翔ぶが如く』――「明治国家の基礎」の考察

二、「征韓論」――「呪術性をもった」外交

三、「文明史の潮合」に立つ

四、ポーランドへの視線とロシア帝国と日本の比較

五、「新聞紙条例と讒謗律」から「神風連と萩の乱」へ

六、「乱臣賊子」という用語――ロシアと日本の「教育勅語」  

第四章  「その人の足あと」――子規と新聞『日本』

一、「書(ふみ)読む君の声近し」――陸羯南と子規

二、「国民主義」と「大地主義」

三、陸羯南と加藤拓川

四、獺祭書屋(だっさいしょおく)主人

五、羯南という号――「北のまほろば」への旅

六、新聞『小日本』と小説「月の都」

七、日清戦争と詩人の思想

八、子規の「従軍記事」

九、「愚陀仏庵」での句会――「写生」という方法  

第五章 「君を送りて思ふことあり」――子規の眼差し

一、「竹ノ里人」の和歌論と真之――「かきがら」を捨てる

二、「倫敦消息」――漱石からの手紙

三、「澄んだ眼をしている男」――広瀬武夫のピエール観

四、虫のように、埋め草になって――「国民」から「臣民」へ

五、奇跡的な「大航海」と夢枕に立つ「竜馬」

六、新聞の「叡智(えいち)と良心」

七、驀進(ばくしん)する「機関車」と新聞『日本』

八、「明治の香り」――秋山好古の見識  

終章 「秋の雲」――子規の面影

一、「雨に濡れる石碑」

二、「僕ハモーダメニナッテシマツタ」――子規からの手紙

三、「柿喰ヒの俳句好き」と広田先生

四、「写生の精神」  

参考文献

本書関連・正岡子規簡易年表

あとがき  

 

お詫びと訂正

カバー・そでに記載されている私の肩書きに間違いがありましたので、お詫びの上、訂正致します。

(誤)比較文明学会理事→(正)元比較文明学会理事  

 

書評・紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

‘18.03.31   紹介『異文化交流』第18号(佐藤浩一氏)

‘17.03.31   書評『比較文学』第59巻(松井貴子氏)

‘17.03.13   書評『ユーラシア研究』第55号(木村敦夫氏)

 →新聞への思い 正岡子規と「坂の上の雲」人文書館のブックレビュー

‘16.11.15   書評 『比較文明』No.32(小倉紀蔵氏)  

 →新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』、人文書館のブックレビュー

‘16.07.10 書評 『世界文学』No.123(大木昭男氏)

  →『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』、人文書館のブックレビュー

‘16.02.16 紹介 『読書会通信』154号(長瀬隆氏)

 →「『新聞への思い 正岡子規と「坂の上の雲」』を推挙する」  

 

リンク→新聞記者・正岡子規関連の記事一覧

リンク→年表Ⅲ、正岡子規・夏目漱石関連簡易年表(1857~1910)  

(2019年2月25日、加筆)

『司馬遼太郎と時代小説――「風の武士」「梟の城」「国盗り物語」「功名が辻」を読み解く』 (のべる出版企画、2006年)

4877039422

目次

はじめに 司馬遷の『史記』と司馬遼太郎

一、司馬遼太郎というペンネーム

武田泰淳の『史記』論 /時代小説と「列伝」という手法

二、「大衆文学」と歴史認識

桑原武夫の「大衆文学」観/「おとぎ話」と「司馬史観」

序章 「司馬史観」の生成――『風の武士』と初期の短篇  

一、「辺境」への関心――「ペルシャの幻術師」と「戈壁(ごび)の匈奴」

「刺客列伝」と初期の暗殺者たち/ペルシャの幻術とインドの婆羅門教/シルクロードと異文化(文明)の交流/ 海音寺潮五郎の司馬評価

二、『風の武士』の時代背景――幕末の「攘夷思想」と桃太郎譚

ペリー艦隊の来日と「攘夷思想」/「伝奇小説」と「おとぎ話」/天狗の出現

三、日本文明の原形への関心とかぐや姫譚

丹生津姫命(にぶつひめ)絵巻とかぐや姫譚/柘植信吾と安羅井人/緒方洪庵の弟子・早川夷軒/  黒潮の流れと異民族の漂着/『風の武士』における街道/ 武内宿禰と「三韓征伐」

四、アイデンティティの危機と新しい歴史観の模索

鏃(やじり)の感触と異民族への関心/「馬賊の唄」と蒙古語の学習/  学徒出陣と小説への思い/ 敗戦の体験と新しい歴史観の模索

五、異国の体験と浦島太郎譚

「国栖ノ国」と「穴居人」/流浪のユダヤ人と安羅井国/  柘植信吾の帰還と浦島伝説

六、異文化(文明)の交流への関心――日本文明の多元性

海音寺潮五郎の「蒙古来る」と「兜率天の巡礼」/ 秦氏と広隆寺

 

第一章 時代小説の原点――『梟の城』と忍者小説    

一、伊賀の歴史と『梟の城』の時代背景

伊賀の風土と「街道」/ 織田信長の「伊賀征伐」/報復としての「暗殺」/今井宗久と前田玄以

二、アイデンティティの危機と新しい生き方の模索

『梟の城』と忍者ブーム/  政商今井宗久と小西隆佐/  二つの価値観/葛籠重蔵と宮本武蔵/  武士と立身出世

三、「朝鮮征伐」と報復としての暗殺

「朝鮮征伐」の考察/  金権政治と戦争/ 風間五平の挫折/ 暗殺者としての重蔵

四、テロリズムの克服

暗殺者から観察者へ/忍者の修業と山伏の修業/ 題名の二重性/「英知」の象徴としての「梟」

五、『梟の城』から長編『宮本武蔵』へ

直木賞と『梟の城』/ 司馬遼太郎の吉川英治観/「大衆文学」と歴史認識/従者としての武士の批判/「真説宮本武蔵」から『宮本武蔵』へ/

六、司馬遼太郎の戦国観

学校教練と『宮本武蔵』/山中峯太郎の冒険小説と『坂の上の雲』/ 「サムライ史観」の批判/司馬遼太郎と葛籠重蔵

 

第二章  乱世の「英雄」と「天命史観」――『国盗り物語』(斎藤道三)と『史記』

一、乱世の梟雄・斎藤道三

氏素性の否定/ 漢帝国の創始者・劉邦の出自/  「僭称者」としての斎藤道三

二、油問屋の奈良屋――中世の商業と女性の地位

『国盗り物語』と「貨殖列伝」/女性の財産と立身出世/「司馬史観」と女性/有力神社と専売権/「神人」の批判から楽座へ

三、斎藤道三と「天命史観」

美濃と壬申の乱/ 斎藤道三と豪商・呂不韋/「天命史観」と天守閣/占いと「日者列伝」

四、乱世の「英雄」と「非凡人の思想」

斎藤道三とマキャベリ/乱世と「非凡人の思想」/観察者としてのお万阿/道三と呂不韋の挫折

五、権力の継承と「分身」のテーマ

織田信長と明智光秀/濃姫をめぐるライバル関係/「坂の上」というキーワード

 

第三章 「天下布武」と近代国家――『国盗り物語』(織田信長)と『夏草の賦』 

一、「革命家」としての織田信長

サンスケという名前/国際都市・堺/ 織田信長とナポレオン

二、ライバルとしての明智光秀

足利幕府の再興と明智光秀/細川藤孝と明智光秀/ 明智光秀の織田信長観/道具としての部下/ 猟師と猟犬の喩え

三、「中央」と「辺境」の考察――『夏草の賦』

千代と菜々の土佐観/ 土佐の豪族と渡来人/信長の外交政策と元親/ナショナリズムと「国民意識」/信長と始皇帝の外交政策/「突撃の思想」の考察

四、中世の「グローバリゼーション」と織田信長

「天下布武」の印と「馬揃え」/ レコンキスタからナポレオン戦争へ/ 比叡山の焼き討ちと織田信長/「おとぎ話」的な世界理解/織田帝国のアジア政策

五、帝王としての織田信長

権力者と側近/「支配と服従」の心理/ 暗殺者としての明智光秀/「神」になろうとした男・信長/ 信長から秀吉へ

 

第四章 「鬼退治」の物語の克服――『功名が辻』の現代性

一、司馬作品と読み解く鍵としての『功名が辻』

「列伝」としての『功名が辻』/千代の変化/司馬の作風と単語の意味の二重性

二、作品前半の「おとぎ話」的な構造

理想の上司としての秀吉/「坂の上の鬼」との戦い/功名の手段としての戦い/泉州唐国という地名/戦国時代の主従関係/叩き上げの武将としての秀吉

三、新しい女性としての千代

千代の芸術的才能/千代の文才/ 馬揃えと桃太郎譚/情報の重要性/殺さない武将としての秀吉

四、「英雄」の「愚人」化

秀吉と信長の関係/ 秀吉の演技力と天下取り/立身出世主義の影/千代と寧々/捨て子「拾君」と養子「秀次」

五、「朝鮮征伐」と桃太郎譚の誕生

キリシタンの禁制と桃太郎譚/「朝鮮征伐」と桃太郎譚/「朝鮮征伐」と『故郷忘じがたく候』/「朝鮮征伐」における言語政策

六、「土佐征伐」と「正義の戦争」の否定

豊臣政権の崩壊と千代/「土佐征伐」と桃太郎的な自意識/桃太郎譚と近代の歴史観/千代と「マクベス夫人」/洞察者としての千代

 

終章 戦争の考察と「司馬史観」の構造――『竜馬がゆく』から『坂の上の雲』へ

一、薩長同盟から大政奉還へ――『竜馬がゆく』

「長州征伐」の批判/幕末の国際情勢と龍馬の世界観/龍馬の死と

正岡子規の誕生

二、日英同盟の評価から批判へ――『坂の上の雲』

「文明開化」と日英同盟/大国との軍事同盟の危険性/秦と大英帝国の

外交政策/『坂の上の雲』と『功名が辻』の構造/『菜の花の沖』と

江戸期の再評価/「文明国」の二重基準への反発

三、核兵器の時代の平和観――「二十一世紀に生きる君たちへ」

グローバリゼーションとナショナリズム/中江兆民の文明観と平和憲法/

比較文明学と「司馬史観」/「二十一世紀に生きる君たちへ」

関連年表/参考文献/あとがき

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

書評 『比較文明』第23号(服部研二氏)

書評 『異文化交流』第8号(金井英一氏)

 

 *   *   *

「あとがき」より

二〇〇六年にNHKの大河ドラマで『功名が辻』が放映されることを知ったとき、なんとか放映中に『功名が辻』論を含む司馬の時代小説を論じた著書を書き上げたいと強く思った。それはNHK衛星放送で放映され好評を博した『宮廷女官 チャングムの誓い』と同じように一六~七世紀の女性を主人公としながらも、陰謀や戦争によって一族の栄達をはかろうとすることへの厳しい批判精神を秘めているこの時代小説を読み解くことは、これまで拡がった「司馬史観」への誤解を解き、司馬の代表作の一つである『坂の上の雲』への理解を深めるよい機会だと思えたからである。

さらに、司馬遷を深く敬愛した司馬遼太郎の時代小説を読み解くには、戦国時代から家康による天下統一までの時期を扱った一連の作品を「列伝的な視点」で分析する必要があるだろうと考えていたが、その意味でも戦国の梟雄と呼ばれた斎藤道三を主人公の一人とした『国盗り物語』から信長、秀吉、家康という三代の権力者に仕えた山内一豊・千代夫妻を主人公とした『功名が辻』に至る時代小説を分析することで、司馬の時代小説が持つ「列伝」的な構造を明らかにすることができるだろうと考えたのである。

それゆえ、急遽思いついたという事情もあり、本書の執筆はつねに時間に追われながらのきつい作業となったが、その一方で、大学に入ってから読んだ司馬の時代小説に、『史記』からの影響やドストエフスキー的な要素を色濃く見い出して、興奮しつつ読みふけっていた三〇年以上も前の頃が鮮やかに思いだされ、その時の感動を再び味わいながら、感動の理由を改めて考察することができ、充実した時を過ごすことができた。(中略)

『風の武士』を論じた本書の序章では、司馬の古代中国やペルシャ文明への深い関心や日韓の歴史的な深いつながりにも言及したが、比較文明学的な広い視野で乱世における戦争の問題から目を背けることなく凝視し続けた司馬の作品を考察した本書を通じて、新しい希望や理念を若い世代に伝えることができれば幸いである。(後略)

『司馬遼太郎の平和観――「坂の上の雲」を読み直す』(東海教育研究所、2005年)

31525178  

「目次」

はじめに――「平和論」の構築と『坂の上の雲』

序章 『坂の上の雲』と「司馬史観」の深化

一、『坂の上の雲』と「辺境史観」

二、事実の認識と「司馬史観」の深化

三、「司馬史観」の連続性と「皇国思想」の批判

四、「司馬史観」の深化と「国民国家」史観の批判

五、比較という方法と「司馬史観」の成熟  

第一章 「国民国家」の成立――自由民権運動と明治憲法の成立

一、「皇国」から「国民国家」へ――坂本竜馬の志

二、江戸時代の多様性と秋山好古

三、福沢諭吉の教育観と「国民国家」の形成

四、二つの方向性――「開化と復古」

五、自由民権運動と国会開設の詔勅

六、自由民権運動への危惧――「軍人勅諭」から「教育勅語」へ

第二章  日清戦争と米西戦争――「国民国家」から「帝国」へ

一,軍隊の近代化と普仏戦争

二,「文明・半開・野蛮」の序列化と「福沢史観」の変化

三、日清戦争と参謀本部――蘆花の『不如帰』と『坂の上の雲』

四、秋山好古と大山巌の旅順攻略――軍備の近代化と観察の重要性

五、立身出世主義の光と影

六、日清戦争の勝利と「帝国主義」――徳富蘇峰と蘆花の相克

七、米西戦争と「遅まきの帝国主義国」アメリカ

第三章  三国干渉から旅順攻撃へ――「国民軍」から「皇軍」への変貌

一、三国干渉と臥薪嘗胆――野蛮な帝国との「祖国防衛戦争」

二、「列強」との戦いと「忠君愛国」思想の復活

三、方法としての「写実」――「国民国家」史観への懐疑と「司馬史観」の変化

四、先制攻撃の必要性――秋山真之の日露戦争観

五、南山の死闘からノモンハン事件へ――軍隊における藩閥の考察

六、旅順の激戦と「自殺戦術」の批判――勝つためのリアリズム

七、トルストイの戦争批判と日露戦争――「情報」の問題と文学

第四章  旅順艦隊の敗北から奉天の会戦へ――ロシア帝国の危機と日本の「神国化

一、極東艦隊との海戦と広瀬武夫――ロシア人観の変化

二、提督マカロフの戦死――機械水雷と兵器についての考察

三、バルチック艦隊の栄光と悲惨――ロシア帝国の観察と考察

四、情報将校・明石元二郎と「血の日曜日事件」――帝政ロシアと革命運動

五、日露戦争と「祖国戦争」との比較――奇跡的な勝利と自国の神国化

六、奉天会戦――「軍事同盟」と「二重基準」の問題

第五章 勝利の悲哀――「明治国家」の終焉と「帝国」としての「皇国」 

一、日本海会戦から太平洋戦争へ――尊王攘夷思想の復活

二、バルチック艦隊の消滅と秋山真之の憂愁――兵器の改良と戦死者の増大

三、日露戦争末期の国際情勢と日比谷騒動――新聞報道の問題

四、蘆花のトルストイ訪問と「勝利の悲哀」――日露戦争後の日本社会

五、大逆事件と徳富蘇峰の『吉田松陰』(改訂版)

六、「軍神」創造の分析――『殉死』から『坂の上の雲』へ

終章 戦争から平和へ――新しい「公」の理念

一、日露戦争後の「憲法」論争と蘇峰の『大正の青年と帝国の前途』

二、「愛国心」教育の批判と『ひとびとの跫音』

三、『坂の上の雲』から幻の小説『ノモンハン』へ

四、「昭和初期の別国」と「大東亜戦争」――統帥権の考察

五、「共栄圏」の思想と強大な「帝国」との戦争

六、「自国中心史観」の克服――「特殊」としての平和から「普遍」としての平和へ

あとがき/主要登場人物、生没年/簡易年表/引用文献と主な参考文献

 

書評と紹介

(ご対談とご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

(特別対談) 「『坂の上の雲』から見えるもの―― 司馬遼太郎の「平和観」をめぐって」『望星』8月号(伊東俊太郎氏)

書評 『比較文明』第21号(神川正彦氏)

書評 『異文化交流』第七号(田中信義氏)

紹介 『司馬遼太郎の平和観―「坂の上の雲」を読み直す―』(杉山文彦氏、2005年)

紹介 『東海大学新聞』(2005年、5月5日号)

   *   *

関連記事 高橋「教科書に採用されにくかった大作群」『ダカーポ』(2005年8月17日号)

*   *   *

「はじめに」より

司馬遼太郎の歴史小説『坂の上の雲』における歴史観をめぐっては、生前から論争が起きていましたが、イラク戦争の影響や東アジア状勢の緊張を受けて、「“坂の上の雲”をめざして再び歩き出そう」という勇ましいタイトルでの対談が雑誌に掲載されるなど、『坂の上の雲』を「日露戦争」を賛美した小説とする言論が再び増えています。 (中略)

しかし、司馬は『坂の上の雲』の終章を「雨の坂」と名付けることで、“坂の上の雲”が日露戦争後には明るい白雲から、「国を惨憺(さんたん)たる荒廃におとし入れた」「大東亜戦争」にまで続く黒い雨雲に変わっていたことを象徴的に示していました。(中略)

司馬遼太郎の弟分とも見なされるほどに親しかった後輩の青木彰氏は、司馬の「ファンと称する政治家、官僚、財界人といった人々」が、司馬作品を誤読していることに対して、「もっとちゃんと読めばいいのにと私は思いますが」と厳しい苦言を呈しています(『司馬遼太郎と三つの戦争――戊辰・日露・太平洋』朝日新聞社)。

『坂の上の雲』をきちんと読み直すことは、「自国の正義」を主張して「愛国心」などの「情念」を煽りつつ「国民」を戦争に駆り立てた近代の戦争発生の仕組みを知り、「現実」としての「平和」の重要性に気づくようになる司馬の歴史認識の深まりを明らかにするためにも焦眉の作業だと思えます。    

『この国のあした――司馬遼太郎の戦争観』(のべる出版企画、2002年)

4877039090

 

「目次」より

はじめに――「新しい戦争」と「グローバリゼーション」

第一章 激動の時代とアイデンティティの模索――『竜馬がゆく』

ペリー艦隊の来航と幕末の日本

福沢諭吉の文明観と方法としての比較

英雄化と神話化――『竜馬がゆく』と『白痴』

「国民」の成立――勝海舟と坂本竜馬

「正義」とテロリズムの考察

「美学」から「事実」へ――「叙述の方法」と作風の変化

二つの方向性――「開化」と「復古」

第二章  「文明の衝突」と「他者」の認識――『坂の上の雲』

「国民国家」の成立と教育制度

教育における「欧化と国粋」の対立

前期「司馬史観」と後期「福沢史観」

ロシア認識の深まり――方法としての「写実」

日本の鏡としてのロシア――「他者」と「自己」の認識

「坂の上の雲」の彼方に――「雨の坂」

第三章  「国民国家」史観の批判――『沖縄・先島への道』

「琉球王朝」の考察――周辺文明論の視点から

アイデンティティの危機と歴史認識

日本文化論の変容と「司馬史観」の変化

近代的な教育と戦争

「正義」の戦争と「野蛮」の征伐

「報復の権利」と「復讐」の連鎖

「多様性」の考察――方言とヤポネシア論

第四章 「文明の共生」と「他者」との対話――『菜の花の沖』

黒潮の流れが結ぶ世界――『菜の花の沖』の構造

江戸期の日本とロシアの比較――高田屋嘉兵衛の時代

「文明」と「野蛮」の考察――周辺文明論的な視点から

高田屋嘉兵衛の国家観と「江戸文明」の独自性

比較文明学的な視野と言語の問題

多様な価値の認識――方法としての対話

第五章 「公」としての地球――司馬遼太郎の文明観

「文明開化」とグローバリゼーション

「ひとびと」の認識――坂本竜馬から中江兆民へ

二つの憲法――明治憲法と平和憲法

他者の認識――「公」としての「自然」

注/  引用・参考文献

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

書評 『比較文明』第19号(米山俊直氏)

書評 『比較思想』第30号(寺田ひろ子氏)

書評 『異文化交流』第7号(金井英一氏)

紹介 『異境』第18号(来日ロシア人研究会)

紹介 『軍事問題資料』(2003年)

 

*   *   *

「あとがき」より

『竜馬がゆく』を学生時代に読んだ私は、それまでの時代小説にはなかったような雄大な構想に魅了された司馬氏の作品を愛読するようになった。ただ、すべての作品を丹念に読むという熱心な読者ではなく、その時々に暇を見つけては本屋の棚に並んでいる氏の作品を買って読むというタイプの気まぐれな読者だったし、司馬氏の豊かな想像力に感心していただけでもあった。

しかし、日露戦争を描いた長編小説『坂の上の雲』を読み終えた後では、歴史上の人物を描き出す氏の視線が、日本やロシアという国家そのものへの問いと直結していたことを知り、さらに、日露戦争の危機もはらんでいた二つの異なる文明国の接触を未然に防いだ江戸時代の商人、高田屋嘉兵衛の生涯を描いた『菜の花の沖』を読んだ時には、想像力を羽ばたかせて書いていた以前の時代小説的な作風から、時代考証に支えられた重厚な作風に変わってきていることに驚かされ、その周辺文明論的な視野の広がりと深まりに感嘆した。こうして、『ロシアについてーー北方の原形』を読んだ時には、氏の文明観を一度きちんとした形で考察せねばならないと感じた。残念ながら、それを果たせないうちに司馬遼太郎氏が突然亡くなられ、私は「文明史家司馬遼太郎の死を悼む」という短文を同人誌に発表した。

(中略)

価値が混沌とした時代には、自国の「正義」を強調することにより、「戦争」へ駆り立てようとする「威勢の良い」著作や論調が、戦時下の法制によって国内の腐敗を隠しつつ、強圧的な形で世論の統一を図ろうとする権力者によって重宝される。

しかし、戦時中に戦争の終結を謀ったことで、東条英機の怒りを買い二等兵として召集され、南方戦線へと飛ばされた松前重義・前東海大学総長は、生還した後には教育をとおして平和と共存の理念を高く掲げた。

高田屋嘉兵衛や坂本竜馬のように、自分の生命をも危険にさらしながら平和の可能性を真剣に模索した勇気ある人々こそが、新しい時代を切り開いてきたことを深く心に刻んでおきたい。

(後略)

*   *   *

リンク先

リンク→『この国のあした――司馬遼太郎の戦争観』(人名・書名索引)

リンク→『この国のあした――司馬遼太郎の戦争観』(事項索引)

 訂正

 下記の箇所をお詫びして訂正いたします。

8頁後から2行目  外国語大学→ 外国語学校

64頁1行目 秋古→ 好古

後ろから6行目 好古に→ 好古は

102頁4行目 (石垣・竹富島)→トルツメ

118頁後ろから4行目 いること→ いるの

130頁6行目 水面しかない湖→ 潮

後から5行目 龍馬→ 竜馬

137頁後から7行目 龍馬→ 竜馬

149頁後から6行目  国に→「国に

184頁2行目 文章日本→ 文章日本語

186頁後から2行目 ことを事を計らず→ を計らず

200頁11行目 追加、一九八五年、四六~八頁

204頁8行目 拝外と拝外→ 拝外と排外

『「竜馬」という日本人――司馬遼太郎が描いたこと』 (人文書館、2009年)

ISBN978-4-903174-23-5_xl(←画像をクリックで拡大できます)

 

目次

序 物語のはじまり――竜馬という”奇蹟”

「開国」と「攘夷」/  世界史への視野/ロシアと日本の近代化の比較/「ヨコの関係」の構築/イデオロギーフリーの立場で/最初の「日本人」/本書の構成

 

第一章  幕末の風雲――竜馬は生きている。

一、旅立ち

千里の駿馬/「辺境」から/街道と海と

二、あれはぶすけじゃ

”乱世の英雄”のようなお人/劉邦と竜馬/大勇の人/浜辺の光景

三、歴史はときに、英雄を欲した――「虚構」と「史実」と

辻斬りと泥棒/梟は夜飛ぶ/カーニバルとしての剣術試合/ 道場と私塾と

四、「鬼」と「友」

黒船来航/「鬼」としての他者/小五郎との友情

五、詩人の心

夢想剣/黒猫にあらず/大地震と「公」としての地球/竜馬と松陰

 

第二章  ”黒船”という新文明――「開国」か、「攘夷」か

一、松陰吉田寅次郎という若者

新しい時代を招き寄せる/おさない兵学者/アヘン戦争の衝撃/山坂からの光景

二、「地を離れて人なし」

平戸への旅/「古に倣えば今に通せず」/「友」との出会い/脱藩/

奥羽の国への旅/「師」象山先生の門に入って

三、ロシアという隣国

”黒船を見たか見なんだか”/ロシアからの黒船/ロシアから見たアヘン戦争/ロシア人作家の日本観/米艦搭乗、密航失敗/二人の政治犯/

四、監獄という空間

野山獄中でのくさぐさ/わが新獄「福堂論」――獄にあらず、福堂である。/松陰の恋歌

五、「国ヲ救イ民ヲ済ウ」という電磁

久坂玄瑞と高杉晋作/「寺子屋」のような塾/手製の新聞/「普遍性への飛翔」の可能性

 

第三章 竜馬という存在――桂浜の月を追って

一、黒潮の流れと日本人の顔

義兄の蘭医/ロシアからの漂流民/碧い瞳の日本女性/  土佐の「かぐや姫」

二、  ”開墾百姓の子孫”

〝桂浜の海鳴り〟/〝この世の借り着〟/土佐・風土・思想/”古き世を打ち破る”  /”押しかけ師匠”/ 無銭旅行/ 歴史を発酵させた「美酒」  / 皇国の在り処

三、「謀反人」竜馬

「公」としての藩/「公」と「私」/人を酔わせる「美文」/”土佐にあだたぬ男”

四、”日本歴史を動かすにいたる”感動

オランダ憲法/ 天は人の上に人を造らず/「両頭の蛇」の家/頑固家老/  絵師と軍艦/ 新しい船出

 

第四章 「日本人」の誕生――竜馬と勝海舟との出会い

一、詩人的な予言者

松陰の義弟/日本史最初の革命宣言/狂人になること/松陰と晋作――獄中からの「垂訓」/「花咲爺」への変貌/ 「狂生」を名乗る男/「対馬事件」の衝撃

二、「浪人」という身分

”航海遠略策”/脱藩(くにぬけ)/弥太郎の決意/”ローニンという日本語”

三、「日本第一の人物勝麟太郎」

「貧乏御家人」の息子/ 夷臭の男/ 万次郎との出会い/最初の「日本人」/「日本人」の条件/

四、日本革命の大戦略

上海への洋行/革命への導火線/モデルとしてのアメリカ独立戦争/「勤王の志士」

五、勝大学

脱藩者の先生/ 偽学生/ 「鯨海酔侯」との直談判 / 学長・勝

 

第五章 ”おれは死なぬ。”――「文明」の灯をともす

一、”暗ければ民はついてこぬ”

「京都守護職」/「天誅」という方法/勝海舟・暗殺未遂/”日本のワシントンになるんじゃ”

二、神戸海軍塾

刀をめぐる口論と月琴を弾く女/幕末の「株式会社」/”アメリカという姉ちゃん”  /大先生の門人/”おれは死なんよ”/神戸海軍塾/新選組という組織

三、狂瀾の時代

外国船への攻撃と南北戦争/「市民軍」の創設/烏が一夜で鷺になる/池田屋ノ変/デンマークへの関心/「正義の暴走」

四、新しい「公」の模索

北海道(えぞち)の見学/「時代の風力」の測定/「発想点」としての長崎/徳富兄弟の叔父/若き松陰の志の継承

五、幕末の「大実験」

「英雄」井上聞太/「日本防長国」/「魔王」晋作

 

第六章  ”理想への坂”をのぼる――竜馬の国民像

一、「妖精」勝海舟

幕臣勝海舟の孤影/「洛西第一の英雄」/「異様人」/ 二つの「大鐘」

二、竜馬の国家構想と国際認識

鈴虫と菊の枕/ 理想への坂/「小栗構想」/「仕事師」ナポレオン三世/「薩摩侯国」への旅

三、革命の第三世代

クーデター/  絵堂の奇襲/ 「長州閥」の萌芽/  ”富貴ヲトモニスベカラズ”

四、「国民」の育成

亀山社中という組織/ ”百姓(ひゃくせい)に代わって天下の大事を断ずべき人” / 藩なるものの迷妄

五、「あたらしい日本の姿」

”天が考えること”/「無尽燈(むじんとう)」/海戦

 

第七章 竜馬の「大勇」――二十一世紀への視野

一、「思想家としての風姿」

”もはやおれの時代ではない”/”利(り)の力”/麹(こうじ)の一粒/”お慶大明神”

二、「時勢の孤児」

「ロウ」を作る/ 「穴のあいた大風呂敷」 /”金を取らずに国を取る”/「史上最大の史劇」/「最大の文字」

三、”ただ一人の日本人”

「稀世(きせい)の妙薬」/ 「草莽の志士」と「有能な官僚」/ 仙人の対話/”万国公法じゃ。”/”男子の本懐”/”時間(とき)との駈けっこだな”/ ”燦めくような文字”

四、「ほんとうの国民」

”坂本さんがおれば。――”/「理性の悲劇」/「幕藩官僚の体質」の復活/二つの吉田松陰像

五、竜馬が開けた扉

「大風呂敷」をあける/「三題噺」のエピソードの象徴性

 

参考文献

年表一、――本書関連簡易年表(一八〇四~一八六九)

年表二、――司馬遼太郎(福田定一)簡易年表(一九二三~九六)

 

書評と紹介

(ご執筆頂いた方々に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。)

書評 金井英一氏『望星』(2010年6月号)

書評 清水良衛氏『比較思想研究』第36号(2010年3月)

書評 中川久嗣氏『文明研究』第28号(2010年3月)

書評 梶重樹氏『異文化交流』第10号(2010年2月)

紹介 『出版ニュース』 2010年1月下旬号

紹介 「日本図書館協会選定図書週報」

紹介 『週刊 読書人』(2010年2月12日)

(人文書館のHPより)

 

事項索引

――あ行、か行――

赤穂浪士       220,358

アメリカ独立戦争   4,192

アヘン戦争       6,16,56,64,65,69,70,76, 82,98,99,100,157,163,166,189,230

安政の大獄                3,7,87,122,191,289

イギリス公使館の焼き討ち       3,191

池田屋ノ変    3,18,70,96,227,228,231,233,254,379

イカルス号事件                  335

いろは丸事件     316,317

オランダ憲法                     135,137,325

海援隊        4,123,147,149,310,312,316,321,326,329,330,334,335,341,345,351,358

海軍操練所                        57,182,197

亀山社中    14,18,51,66,147,169,272,279-281,283,284,287,291,292,295,304-306,309,312,317

咸臨丸       14,141,177,178,181,183,198,269,271

奇兵隊                 19,72,73,225,226,245,267,273,274,276,277,278,296,297,354

キューバ危機                          3,380

クリミア戦争    5,56,79,81,82,87,101,166,209

 

――さ行――

坂下門ノ変                         190

佐賀の乱                               20

桜田門外の変                       7,132,174

薩英戦争                             246,271

薩長同盟               3,14,18,19,51,255,287,318

四国艦隊                             194,324

四境戦争 →長州征伐

四民平等                             278,361

松下村塾     17,63,94-96,98,122,157,169,239

諸国民の解放戦争                         137

人権宣言          192

新選組                    3,70,96,209,219-222, 227-229,233,254,283,292,312

征韓論                               167,261

西南戦争                      20,257,260,261

船中八策              19,308,324,326,345,346

祖国戦争                     7,8,101,137,166

 

――た行――

第一次世界大戦                       137,224

大逆事件                                 131

大政奉還            14,121,237,308,321, 324,326-329,331,333,339-345

大東亜戦争                  11,15,16,242,355

第二次世界大戦                           355

太平洋戦争                            16,130

血の日曜日事件                           137

千葉道場                   2,17,24,32,41,42,44-46,115,118,124,182,220,222,265

長州征伐                 237,254,267,280,282

対馬事件                             165,378

適塾(適々斎塾)                  80,140,162

寺田屋事件                           174,289

天誅組                                   173

天保庄屋同盟                         119,358

デンマーク・オーストリア戦争         229,230

統帥権                                   186

東禅寺事件      174,175,190

奴隷解放                               87,98

 

――な行――

生麦事件                             175,335

南北戦争               4,223,224,230,309,321

二月革命                             160,270

日清戦争(戦役) 210,219,266,289,315,351,355

日米和親条約                            2,84

日露戦争        6,16,19,20,131,137,148,230, 231,234,251,269,275-289,355,356,362

農奴制の廃止(農奴解放)           87,229,380

野山獄           88,90,91,93,159,231,232,273,377

 

――は行、ま行――

八月十八日の政変        209,226,227,231

蛤御門ノ変(禁門ノ変)   18,156,157,188,205,  232,240,246,250,254,255,260,282,286,303

ハンガリー出兵                            87

万国公法         196,316,334,335,337,361,362

フェートン号事件                       5,166

普仏戦争                             315,363

フランス革命                        5,75,158

プロシア       315,317,357

ベトナム戦争                           4,381

ペトラシェフスキー事件               101,160

戊辰戦争          14,20,118,141,163,  260,314,319,347,351,359,360

マリア・ルス号(ルーズ号)事件      360,380

明治憲法                             136,331

 

――や行、ら行――

ユニオン号事件               291,295,296,302

陸援隊                    118,311,329,330,351

列藩同盟                         256,257,348

ロシア革命                           137,357

 

『司馬遼太郎とロシア』(東洋書店、2010年)

4885959497

 

「目次」

はじめに―― 歴史認識の問題と『坂の上の雲』

第一章 若き司馬遼太郎と方法の生成

冒険小説『敵中横断三百里』/モンゴルからの視点と『史記』/『ロシアについて――北 方の原形』/徳冨蘆花への関心とトルストイ理解/トルストイのドストエフスキー観と司 馬遼太郎/学徒出陣と「敵」としてのロシア

第二章 幕末の日本とロシア

ロシア船による密航の試みとクリミア戦争/井伊直弼とアレクサンドル二世「暗殺」の比 較/「竜馬」像の変遷と「明治国家の呪縛」/ロシア宮廷と山県有朋/「隠蔽」という方 法と歴史的事実

第三章 ロシアと日本の近代化の比較

ロシアの「西洋化」と「国粋」/「文明国」の情報の問題/言語教育と「コトバの窓」/ 「西洋化」の再考察/コザックと武士の比較

第四章 日露戦争と「国民国家」日本の変貌

旅順要塞とセヴァストーポリの攻防/広瀬武夫と石川啄木のマカロフ観/専制国家と官僚 /ポーランドの併合と韓国併合/「国家を越えた人間の課題」/「勝利の悲哀」

終章  司馬遼太郎の文明観

『坂の上の雲』映像化の問題点/「亡国への坂をころがる」/「皮相上滑りの開化」/「特殊性」から「普遍性」へ

注/関連年表

*    *    *

「はじめに」より

『坂の上の雲』を書き終えたあとで司馬は、「私などの知らなかった異種の文明世界を経めぐって長い旅をしてきたような、名状しがたい疲労と昂奮が心身に残った」と書くが、この言葉は日露戦争という近代の大戦争の考察をとおして、司馬がいかに帝政ロシアという「異種の文明世界」の奥深くにまで入り込んで観察していたかを物語っていると思える。
それゆえ本書では、『坂の上の雲』を書き終えた後で、江戸時代に勃発寸前までに至った日露の衝突の危機を防いだ商人高田屋嘉兵衛を主人公とした大作『菜の花の沖』を一九七九年から八二年にかけて書いた司馬が、一九八六年には『ロシアについて――北方の原形』で、ロシアという国家の原形にも迫ろうとしたにも注意を払いながら、日本とロシアの近代化の問題に焦点を当てることで、司馬のロシア観の深まりを考察することにしたい。
この作業をとおして、司馬遼太郎が単なる流行作家ではなく、現代の世界状況をも予見するような、すぐれた文明史家であったことを示すだけでなく、なぜ司馬が『坂の上の雲』の映像化を禁じたのかをも明らかにできるだろう。