高橋誠一郎 公式ホームページ

「特定秘密保護法」と自由民権運動――『坂の上の雲』と新聞記者・正岡子規

「特定秘密保護法」と自由民権運動――『坂の上の雲』と新聞記者・正岡子規

私は法律家ではないので具体的な比較はできませんが、「今世紀最大の悪法」と思える「特定秘密保護法」が、十分な審議もなされないまま、審議の過程で修正を重ねるという醜態を示しながらも、これまでの国会での手続きや法案が抱える多くの欠陥を無視して、昨日、強行採決されました。

この事態を受けて、日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)が、「運用次第では憲法が保障する取材、報道の自由が制約されかねず、民主主義の根幹である国民の『知る権利』が損なわれる恐れがある」と指摘する声明を発表しました。

日本ジャーナリスト会議は「法律の廃止と安倍内閣の退陣」を要求し、日本雑誌協会日本書籍出版協会の委員会も「取材・記事作成に重大な障害となることを深く憂慮する。法案の可決成立に断固抗議する」と声明を出しました。

この法律の問題点を早くから指摘していた日本ペンクラブも、「特定秘密保護法案強行採決に抗議する」という声明を出しました。(リンク 日本ペンクラブ声明「特定秘密保護法案強行採決に抗議する」

特定秘密保護法に反対する学者の会」も3181名の学者と746名の賛同者の名前で、右記の「抗議声明」を発表しました(リンクhttp://anti-secrecy-law.blogspot.jp/2013/12/blog-post_7.html

*   *   *

一方、安倍政権はこの「特定秘密保護法」が審議されているさなかに、国民の生活や国家の方向性に深く関わる重要な事柄を決めていました。

いくつかの新聞記事によりながら3点ほどを指摘しておきます。まず、5日には「武器輸出を原則として禁ずる武器輸出三原則」を見直して、「武器輸出管理原則を作ること」が決められ、その一方で民主党政権が打ち出していた「2030年代に原発をゼロとする」目標が撤回されました。

さらに、6日の閣議では「特定秘密の廃棄について『秘密の保全上やむを得ない場合、政令などで(公文書管理法に基づく)保存期間前の廃棄を定めることは否定されない』とする答弁書が出されました。

「特定秘密保護法」の強行採決は、原発事故や基地問題などの重要な「情報」を国民に知らせることを妨げ、官僚や権力者には都合の悪い「事実」を破棄する一方で、国民の「言論の自由」を奪うという安倍政権の危険な方向性を具体的に国民の前にさらしたといえるでしょう。

*   *   *

アニメ映画《風立ちぬ》で示唆され、映画《少年H》で具体的に描かれたような、自分の考えていることも言えない息苦しい時代が、目の前に来ているようにも思われます。

しかし、司馬遼太郎氏が描いていたように、危機の時代に強権的な手法を用いた江戸幕府を倒し、さらに「坂本竜馬」が危惧したような圧倒的な力で他の勢力を抑圧した「薩長連立幕府」にたいして「憲法」の必要性を認めさせた自由民権運動のような輝かしい歴史を日本は持っています。(前回のブログ記事司馬作品から学んだことⅧ――坂本龍馬の「大勇」参照)。

これまで政治的な視点で矮小化されてきたと思える長編小説『坂の上の雲』については、「新聞紙条例」から「明治憲法」の発布に至る過程や、自由民権運動と陸羯南の新聞『日本』との関係にも注意を払いながら、新聞記者としての正岡子規に焦点を当てて来春から本格的に再考察したいと考えています。

(2016年2月10日。リンク先を追加)

リンク→新聞記者・正岡子規関連の記事一覧

 

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です