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参院特別委員会採決のビデオ判定を(4)――福山哲郎議員の反対討論

参院特別委員会採決のビデオ判定を(4)――福山哲郎議員の反対討論

9月19日未明に開かれた参院本会議では特別委員会での「採決」に違法性はないのかという重大な問題を残しつつも、自民・公明両党などの賛成多数により「安全保障関連法案」が可決されました。

他方、国会審議では第三次アーミテージ・ナイ・レポートの内容と詳細に比較して、今回の法案が自公両党の作成によるものではなく、指示された事項の「完全コピー」の疑いが強いことや昨年末に行われた米軍中枢との会談で河野統幕長が、「(安保法制について)来年夏までには終了する」「オスプレイの不安全性を煽るのは一部の活動家だけ」などと発言していたことも明らかになりました。

このような結果を受けて野党議員からは国会審議に先立ってアメリカ議会に成立を約束した安倍政権が保守政治家の「気概」を喪っているのではないかとの厳しい批判もありました。

それゆえ、自分たちの言動の正しさを証明するためにも、安倍政権の側からもこれらの追求に対する反論が敢然となされるものと考えていました。しかし、答えるのではなく、違法性の疑いも指摘されている「採決」により、審議を打ち切ってこそこそと退場した安倍晋三氏と閣僚たちの姿は、「みっともない」の一言に尽きると思われます。

ただ、その「公平性」が厳しく問われているNHKはこの場面もきちんと中継し、日本中に放映していたので、来年に予定されている参議院選挙や、その後の衆議院選挙まで、この映像は日本各地に広まっていき、「事実」を伝えることになるでしょう。

*   *   *

興味深いのは、「牛歩、長時間演説、泣き落とし…未明の参院、野党が連発したルール違反の数々」と題した記事で野党を厳しく批判した産経新聞が、違法性の疑いも指摘されている「採決」の裏側を明らかにしたスクープ記事も掲載していたことです。

すなわち、〈“ふくよかな”議員が外側ブロック、自民の「鴻池委員長防衛シフト」〉という表題の記事は、いわゆる「人間かまくら」の構築が*1、防衛大出身の佐藤正久筆頭理事が指南役となり、開会前の同日早朝、ひそかに集まってシミュレーションもした」ことなどを内部暴露していたのです。

この記事は「若手議員たちは室内で、それぞれの体格や運動能力に応じた配置を考え、最も早く委員長席にたどり着くルートなどをシミュレーション。それが鉄壁の守備につながったという」と書き、この成果につながったのが防衛大の伝統競技である棒倒しの訓練であったことに注意を促して記事を結んでいます。

「国民の生命」に深く関わるこの法案を審議する参議院を、防衛大の体育祭のレベルに引き下げた佐藤議員の活躍を活写したこの記事と写真は話題を呼んでツイッターなどでかなり広がっていますので、参院特別委員会採決の「違法性」を争う裁判では、重要な証拠となると思われます。

最期に参院特別委員会での強行採決が「無効」であると訴えた福山哲郎議員の参議院本会議での反対討論の一部を、ツイッターや新聞の記事なども参考に映像から文字起こしすることにします(急いだために抜けている箇所や発言通りではない箇所もあると思いますが、ご了承ください。憲法9条の意義についての発言などは、後ほど改めて記すことにします)。

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現在も私は与党の暴力的な強行採決は断じて認めるわけにはいきません。今も国会周辺には多くの人が反対の声をあげて集まっており、全国でテレビやフェイスブックやツイッターで注視しています。SEALDsだけでなく、憲法の学者、元最高裁長官、各大学の有志の皆さん、そして一人ひとりの個人が、この法案を廃案にしたいと少しずつ一歩ずつ勇気を出して全国で動き出しています。これの数え切れない皆様の気持ちを代弁するには力不足ですが、立憲主義、平和主義、民主主義、日本の戦後七十年の歩みにことごとく背くこの法案に対して違憲と断じ、反対を表明します。

国民の皆様に心からお詫びさせて頂きます。残念ながらあと数十分もすれば、数の力におごった与党がこの法案を通過させることになるでしょう。本当に申し訳なく思います。野党は力不足でしたが、それぞれの議員がそれぞれの政党が、やれることは懸命にやらせていただいたつもりです。そこは国民に信頼して頂きたいと思います。

今の私の発言は15分に制限されました。今日もお隣の衆議院では枝野幹事長が約2時間の演説をされました。なぜ参議院では15分なのでしょうか。ここは言論の府です。我々は国民の意見を伝えるためにここに立っています。言論の府の言論が与党により数の力で封殺されています。これは昨日の暴力的な強行採決にもつながっている。昨日の採決は存在し得ない、あり得ないと私は思います。

三権分立の我が国で、立法府で審議中の法案に対してOBとはいえ司法それも最高裁長官が「違憲」と発言されることは極めて異常な事態。いいですか、少なくとも四十年以上、日本は集団的自衛権を行使できないと、歴代法制局長官と自民党の先輩、首相を含むすべての閣僚が決めてきた。あなた方は違憲なのは明白だ。あなた方は保守ではない。あなた方にあるのは単なる保身でしかない。立法事実はどこかへ消えた。米艦防護もそう、自衛隊のリスクは減ると言った安倍総理の発言ももうほとんど絵空事になっている。これまでの審議でわが国の安全保障の法体系を崩していることが明らかなのに、なぜ謙虚に修正をしたり出し直すことは考えないのですか?

一つ重要なことを申し上げます。昨日の暴力的な強行採決の場面を思い出してください。鴻池委員長が復席されました。私は野党の理事として、議事に合意していなかったので議事の整理をしたいと委員長に歩み寄った。すると委員でもない与党議員が一気に駆け寄ってきて、委員長を取り囲みました。議事録には委員会の開会の時間が書いていない。

特別委員会では地方公聴会の報告がされていない。報告がないということは、採決の前提が崩れ、重大な瑕疵(かし)があることになる。野党の採決権が剥奪されたと同時に外部の方が公述人としてこられた方の議事録が残っていない、地方公聴会はなかったものにされます。与党は採決のルールを守っていない。時間を守ることよりも参院最大の汚点です。この採決は無効であるということになります。これこそが言論封殺ではありませんか。(後略)

(2016年2月24日。副題の一部を削除)

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