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小林秀雄の映画《罪と罰》評と黒澤明

小林秀雄の映画《罪と罰》評と黒澤明

 

第4章に手間取って拙著の刊行が遅れておりますが、牛歩のような歩みでも少しずつは進んでいますので、ここではお詫び代わりに、標記のテーマについての短い記事を掲載しておきます。

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  1936年に書いた映画評でチャーリー・チャップリンの後援で監督としてデビューし、米国映画最古のギャング映画と言われる『暗黒街』(1927)などを公開していたスタンバーグ監督の映画《罪と罰》を、小林秀雄が厳しく批判していたことを第3節「長編小説『罪と罰』と映画《罪と罰》」で紹介していました(スタンバーグ監督についてはウィキペディア参照)。

ただ、この映画の詳細は分からなかったのですが、黒澤自身が『蝦蟇の油――自伝のようなもの』(岩波文庫)で、1929年までに観た「映画の歴史に残る作品」として、1925年のデビュー作《救ひを求むる人々》(1925)や《暗黒街》(1927)、さらに《非常線》(1928)と《女の一生》(1929)の4本のスタンバーグ作品を挙げていたことがわかりました。

残念ながら、『蝦蟇の油――自伝のようなもの』では1935年に公開された映画《罪と罰》については触れられていませんが、ドストエフスキーを敬愛していたに黒澤監督が1936年にP・C・L映画撮影所(東宝の前身)に助監督として入社したことを考えるならば、非常に強い関心を持ってこの映画を観ていたことは確実だと思われます。

その意味でもこの映画について論じながら「評論」と「映画」の違いを強調した小林秀雄の映画《罪と罰》評は、黒澤明の『罪と罰』観を考察するうえでも非常に重要だと思うようになりました。

このような考えを第4章だけでなく、「はじめに」も反映させましたので、とりあえず「はじめに」黒澤映画《夢》と消えた「対談記事」の謎の改訂版をこれまでの原稿と差し替えて「主な研究」に掲載します。

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