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安倍首相の「改憲」方針と明治初期の「廃仏毀釈」運動(1)――岩倉具視の賛美と日本の華族制度

安倍首相の「改憲」方針と明治初期の「廃仏毀釈」運動(1)――岩倉具視の賛美と日本の華族制度

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(破壊された石仏。川崎市麻生区黒川。写真は「ウィキペディア」より)

いよいよ今年は、日本の未来をも左右する可能性の強い参議院選(あるいは衆参同時選挙)が行われる重要な年となりました。

2016年1月11日付けの「東京新聞」朝刊によれば、安倍晋三首相は10日放送のNHK番組で、「おおさか維新もそうだが改憲に前向きな党もある」と指摘して、夏の参院選では自民、公明両党のほか、改憲に前向きな野党勢力と合わせて国会発議に必要な三分の二以上の議席確保を目指す考えを明言したとのことです。

この言葉は、安倍晋三氏の本音でしょう。

なぜならば、去年の2月13日に行った施政方針演説で、〈「日本を取り戻す」/ そのためには、「この道しかない」/ こう訴え続け、私たちは、2年間、全力で走り続けてまいりました。〉と語った安倍首相は、「憲法」の発布には懐疑的な一方で、帝政ロシアの貴族制に似た華族制度を考えていた公家出身の政治家岩倉具視に言及しながら、こう続けていたからです。

〈明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。 /  「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない」

明治の日本人にできて、今の日本人にできない訳はありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、「戦後以来の大改革」に、力強く踏み出そうではありませんか。〉

岩倉具視を讃えたこの言葉を素直に読み解くならば、安倍氏が目指しているのは、「明治維新」に際して「神祇官」を復活させ、「廃仏毀釈」*を行ったきわめて神道色の強い政治であることは明らかだと思えます。

*注、「廃仏」は仏を破壊し、「毀釈」は、釈迦の教えを壊すという意味。明治政府によって慶応4年3月13日(1868年4月5日)に太政官布告(通称「神仏分離令」)が発せられたのをきっかけに、神道家などを中心に各地で寺院・仏像の破戒や僧侶の還俗強制などがおきた。この項は『広辞苑』を参照した。〉

それゆえ、このような安倍氏の姿勢に共感を寄せるおおさか維新の片山虎之助共同代表も同じ番組で、「憲法改正を考えている。できるだけ早く案をまとめたい」と自民党と連携して党改憲案を早期にまとめる考えを示し、日本のこころを大切にする党の中山恭子代表も参院選で改憲は「最重要課題だ」とし、「自主憲法を日本人の手で作り上げなければいけない」と述べたのも同じ理由からでしょう。

*   *   *

一方、公明党・山口那津男代表は、このような安倍首相の政治姿勢を〈いきなり(改憲勢力で)3分の2を取って、憲法改正をしようというのは傲慢(ごうまん)だ〉とBSフジの番組で批判したとのことですが、NHKの番組ではいつものように大幅に後退し、「単に国会の中の数合わせだけでは済まない。おおさか維新のみならず、その他の野党も含めた幅広い合意形成の努力が重要だ」と首相をけん制したのみに留まったようです。

本当に「平和」や「憲法」を守ろうとするならば、「大義なきイラク戦争を主導したラムズフェルド元国防長官とアーミテージ元国務副長官」の二人にたいして「文化の日」に勲一等、「旭日大綬章」を贈った安倍政権の好戦的な姿勢や、彼らの作った案にそって「改憲案」を作っていると思われる自民党・安倍政権の「いかがわしさ」を厳しく批判すべきだったと思えます。

ここには政権与党にいれば、安倍政権の意向を左右できると考えているとおもわれる「平和ぼけ」した公明党幹部のおごりや油断があると思えます。

歴史を振り返ってロシア革命など権力の移行期のことを想起するならば、独裁を許すように「改憲」されたあとではどのような事態が訪れるかは、明らかでしょう。

(2017年1月3日改題)

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