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原子力規制委・田中委員長の発言と安倍政権――無責任体質の復活(6)

原子力規制委・田中委員長の発言と安倍政権――無責任体質の復活(6)

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九州電力が11日に川内原発1号機の原子炉が「事故時の責任不明のまま」再稼働しました。

このような事態になった経緯をいくつかのブログ記事などを参考に簡単に振り返ることにより、「国民の生命や安全」を無視して、「私利私欲」から「利権」に走る危険な安倍政権の実態に迫りたいと思います。

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川内原発の再稼働は、「原子力規制委員会が策定した新規制基準に基づく」ものですが、その原子力規制委員会は2011年3月11日に発生した東京電力福島原子力発電所事故の際に、自民党政権下に設置されていた原子力安全・保安院が、経済産業省の管轄でもありその対応があまりにもずさんであったために、新たに立ち上げられた組織でした。

平成25年1月9日に発表された文書では「原子力規制委員会の組織理念」が次のように高らかに謳われていました*1。

原子力にかかわる者はすべからく高い倫理観を持ち、常に世界最高水準の安全を目指さなければならない。/我々は、これを自覚し、たゆまず努力することを誓う。(中略)原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ることが原子力規制委員会の使命である。」

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2012年9月にその組織の委員長に田中俊一氏が就任した際には、強い懸念の声が聞かれました。東北大学工学部で原子力工学を学んだ田中氏が、日本原子力研究開発機構等を経て日本原子力学会の第28代会長を務め、内閣府原子力委員会委員長代理や内閣官房参与などを歴任するなど、まさに「原子力ムラ」の有力者だったからです。

それでも「初期のころの規制委は、5人の委員のうちの地震学者の島崎邦彦氏が、かなり厳しい意見を電力会社に浴びせるなど、ある程度の“原発抑止力”を発揮しようとする姿勢が見えたようにも思われた」と書いたジャーナリストの鈴木耕氏は、「だがそれは、どうも『世を欺く仮の姿』だったらしい」と続けています*2。

なぜならば、2014年9月に新たに委員に任命された田中知氏が、日本原子力学会の元会長というれっきとした原子力ムラの村長クラスで」、「原子力事業者から多額の寄付や報酬(判明しているだけで760万円以上)を受け取っていた」からです。

しかも、民主党政権時代に定められた原子力行政に関するガイドラインの「規制委員の欠格条件」には、「直近の3年間に原子力事業者等及びその団体の役員をしていた者」という項目があり、2010年〜2012年に原子力産業協会理事という役職に就いていた田中知氏は、当然、原子力規制委員になれるはずはなかったのです。

鈴木氏はこう続けています。「だが、当時の石原伸晃環境相は『民主党時代のガイドラインについては考慮しない』と国会で答弁、安倍政権として平然とガイドラインを破棄した。歯止めを簡単に取っ払ってしまったのだ。」

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菅官房長菅は「原子力規制委員会において安全性が確認された原発は再稼動を進める」と発言し、原子力規制委員会の判断を再稼働の理由にしています。

しかし、2014年7月16日に「適合性審査」に川内原発はクリアしたと発表した原子力規制委員会の記者会見で、田中俊一・委員長は記者の質問にこたえて、次のような驚くべき発言をしていたのです。

「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。ですから、これも再三お答えしていますけれども、基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げませんということをいつも、国会でも何でも、何回も答えてきたところです。」

つまり、川内原発の「安全性」はクリアされていないのです。このことについては「リテラ』が分析していますので、詳しくはその記事をお読みください

川内原発の再稼動審査で行われたおそるべき「非合法 … – リテラ

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その記事の中で最も注目したのは、「新規制基準では、原発の敷地内に火山噴火による火砕流などが及ぶ場合は立地不適となり、本来は川内原発もこれに抵触するため再稼働は認められないだろうと考えられていた」にもかかわらず、「九電も規制委も、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかった」ことである。

しかも、火山学者から「巨大噴火」の可能性を指摘されると田中委員長が「そんな巨大噴火が起きれば、九州が全滅する。原発の問題ではない」と言い放ったことを、松崎純氏は「これは子供でもインチキだと分かる詭弁だろう」と指摘しています。

このような田中氏の発言からは私が連想したのは、黒澤映画《夢》の第六話「赤富士」で原発事故の収束のために最期まで踏みとどまって国民の被害を最小限にとどめようと努力せずに、苦しみから逃れるために自殺を選ぶ原子力関係者の姿でした。そこからは「原子力にかかわる者はすべからく高い倫理観」を持たねばならないとした「組織理念」が微塵も感じられないのです。

民主党時代に制定されたガイドラインを平然と破棄し、原子力規制委員会を促進委員会のように変貌させて、国民の半数以上が反対であるにも関わらず再稼働を許可した安倍政権は、「国民の生命や安全」のことは考えていない「不道徳」な政権であるといわねばならないでしょう。

 

*1 原子力規制委員会の組織理念www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/idea.html

*2 5 原子力規制委員会田中俊一委員長の悲しい変貌 – マガジン9www.magazine9.jp/article/hu-jin/15907/

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