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『原発ホワイトアウト』(講談社)を推す

『原発ホワイトアウト』(講談社)を推す

 

知人からの強い勧めで「現役キャリア官僚」が書いたとされる『原発ホワイトアウト』(講談社)を購入した。

サスペンス・タッチで原発産業と政官との癒着の構造に迫る内容で、強い説得力とエンターテイメント性もあり、一気に最後まで読み終えた。

11月15日の「東京新聞」に載った広告では、「大反響 10万部突破」の文字が大きく躍っていたが、読み終えた後では現在の日本が抱えている危険性を再確認させられて、しばらく席を立てなかった。

国民的な議論もなく進められている原発の輸出や再稼働の問題をもう一度考えるよい機会に本書はなるだろう。

詳しい内容を記すのは控えたいが、サスペンス感を高めるために本書ではテロリズムの視点から原発の危険性が指摘されている。

日本という国土が地殻変動の結果として形成され、その後も強い地震活動が続いている自然環境を考慮するならば、一刻も早く「脱原発」に踏み切ることが、長い目で見た場合、「国民の生命」だけではなく「経済的な利益」にも叶っていると思われる。

  *  *  *

「現役キャリア官僚」による「リアル告発ノベル」とのうたい文句も売り上げには貢献していると思われる。

しかし、問題はきちんとした国民的な議論もなく「特定秘密現保護法案」の審議が進んでいる現在、この法律がとおると著者の「現役キャリア官僚」も、「国家機密の暴露」の罪に問われて10年間の刑罰を受ける危険性さえあると思われることである。

 『竜馬がゆく』で「維新政府はなお革命直後の独裁政体のまま」であったと書いた司馬氏は、ことに「言論の自由」を封殺した「新聞紙条例」を厳しく批判していたが、政権についた権力者は自分たちが「国策」として進める政策の欠点を正確に批判する官僚や報道関係者をも、このような法律によって厳しく罰してきたのである。

本書は「原発」の問題だけでなく、「情報」の問題についても考えさせられるような知的刺激に富む本である。

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