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伊波敏男『島惑ひ 琉球沖縄のこと』と大城貞俊『島影 慶良間や見いゆしが』(ともに人文書館、2013年)

伊波敏男『島惑ひ 琉球沖縄のこと』と大城貞俊『島影 慶良間や見いゆしが』(ともに人文書館、2013年)

 

伊波敏男『島惑ひ 琉球沖縄のこと』(人文書館)

 

ISBN978-4-903174-27-3_xl

 

 

植田早や風そよそよと山の里

   (ホームページ「かぎやで風」、2012年6月12日)

「ふるさとの沖縄を離れ異郷での暮らしが52年、ハンセン病のため隔離生活が沖縄で3年、ヤマトで10年の合計13年、逆算すると家族と一緒にすごしたのは,たったの14年ということになる。
この頃、故郷の沖縄に関わる情報は、私の耳には悲鳴ように伝わってくる。そして、「沖縄」の地名が、時間が経つごとに「琉球」という文字に置き換えられていく。これはどうしたことだろうか? 私の心中で日本国沖縄県という枠組が、ギシギシ音を立てて歪みはじめている。」

 

[目次]

序の章

恩納岳(うんなだき)
  うわぃすーこー(三十三年忌)/しぃーみぃー(清明祭)/第19ゲート

壱の章

かたかしら(欹髻)
  ヤマトはわが御主(うしゅ)にあらず/荒地をひらく径/水盤の諍い

弐の章

士魂の残照
  銀簪(ぎんかんざし)の誉/松茂良泊手(まつもらとぅまいでぃー)/
  染屋真榮田(そめやまえだ)

参の章

貧の闇
  国頭銀行/屋取(やーどぅい)集落/年季奉公

四の章

琉球の鼓動
  南大東島/二人のウシ/伊豆味かわいいぐぁー(可愛い娘)/三棹の三線

伍の章

そして、仏桑花(ぶっそうげ)の呻き
  はるさー(農業)先生/金武湾(きんわん)/自然・平和・人権/信州沖縄塾

終の章

君たちの未来へ
  土に埋めた太陽/わが産土への言付け

「国に惑い」、「島が惑う」──後書きにかえて

 

*   *   *

 

大城貞俊『島影 慶良間や見いゆしが』(人文書館)

 

490317428X

 

大城氏の著作でも冒頭に次の詩が掲げられている。

 

島影」

島が揺れている

沈黙の過去を保持し

神々とともに

水平線を見つめ

樹木を揺らしている

 

 島がみつめている

死者たちの記憶が

珊瑚の海を彩っても

生者の肉体には宿らない

漂泊する箱舟たち

 

 それでもなお

島は沈まない

今日の空は、あの日の空ではない

今日の海は、あの日の海ではない

そんな日々を矜持として

人々を信じ未来を信じ

凜としてそこにある

 

島が見えるか

太陽に対峙して輝く島

月の光を受けて歴史を刻む島

その時を信じて

あるがままにある

沖縄(ウチナー)の

島影

 

*   *   *

ブログの記事にも書いたが、「特定秘密保護法」が国内外の法律家やジャーナリストなどから示された深い危惧の念にもかかわらず、強行採決されたことで沖縄の問題を日本中が共有することになる。

これらの著作が日本に投げかけている「問い」はきわめて重い。

 

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