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ラングスドルフ

東海大学外国語教育センター編『若き日本と世界ーー支倉使節から榎本移民団まで』(東海大学出版会、1998年)

鎖国前夜の支倉使節から、開国後の榎本移民団まで、「使節と移民」をキイワードに、激動の時期の世界を舞台に、荒海を渡って異文化との接触を果たした人々の活動とその意味に迫る。登場するのは支倉常長、高杉晋作、榎本武揚、クーデンホーフ・光子、シーボルト、ラングスドルフ、ゴンチャローフら。

 

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目次

序にかえて ――海を渡った人々  田中信義

海を渡ったサムライたち ――支倉常長らの見たヨーロッパ  太田尚樹

江戸の特使に謁見する ――G・H・v・ラングスドルフ  金井英一

日本の開国とクリミア戦争 ――作家ゴンチャローフが見た日本と世界  高橋誠一郎

シーボルト その人と生涯 ――医師・日本研究者・外交的活動家としての足跡をふりかえりながら  沓沢宣賢

高杉晋作の見た上海 ――中国の半植民地化と日本  中野謙二

明治の「天皇づくり」と朝鮮儒学 ――元田永孚の日本改造運動を読み直す  小倉紀蔵

労働運動に夢をかけた日米の男たち ――移民史の視点から    米澤美雪

ECの母 クーデンホーフ・光子 ――言語と人生観  入谷幸江

メキシコにおける日系移民とアイデンティティ ――榎本植民地建理想から百年を経て  角川雅樹

本書関連年表/人名索引

 

「あとがき」より

『若き日本と世界--支倉使節から榎本移民団まで』をお届けする。

ここでは現代の日本と諸外国とのかかわりを考える上でも重要な、鎖国から開国への流れを中心に日本と諸外国との交流の様々な局面を取り上げた。(中略)

この書物において取り上げた多くの人々は、船という乗り物で荒波を越えて渡航し、文化の違いに大きな驚きを覚えている。飛行機が発達し、テレビという媒体で他国のことも見られる現代においては、このような感覚はもはや過去のものに見えるかもしれない。しかし、旧ユーゴスラヴィアなどの紛争に顕著に現れたように、現代においても各国の文化や慣習の差異、さらには歴史認識の違いを克服することはそれほど簡単なものではない。重要なのは、「自己」と「他者」の違いを冷静に認識するとともに、熱い心で「自己」を主張し、「他者」のよさをも知ろうとする姿勢であろう。

今回は「使節と移民」を副主題としたので、時代や国は異なってもシーボルト、吉田松陰、高杉晋作、榎本武揚、福沢諭吉といった人物や、仙台と長崎のような共通の都市、さらにはアヘン戦争など、個々の論文を有機的に結ぶキイワードも多く存在する。研究例会の活動を続ける中で、自分のテーマを深めると共に、他の筆者とのつながりも確認したが、思いがけぬ関連に驚くこともしばしばあった。このような新鮮な驚きを読者の皆様にも味わって頂ければ幸いである。(後略)