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日本ペンクラブ

5年前のレベル7の大事故を振り返る――「首相談話草案」をめぐって

3.11の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からまもなく5年になることで、新聞各社も、当時の大事故を振り返る記事や現在の状況に迫る記事が目立って来ているようです。

このブログでは事故当時の最高責任者・菅直人氏を講演者に招いて、「福島原発事故 ― 総理大臣として考えたこと」と題して行われた2014年3月15日の「脱原発を考えるペンクラブの集い」での講演の内容を紹介していました。

リンク→真実を語ったのは誰か――「日本ペンクラブ脱原発の集い」に参加して

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一方、昨日(2月20日)の「東京新聞」朝刊は、〈赤字で「重要原稿草案 2011・3・20」と書かれた首相談話草案の全文を掲載しました。

その冒頭で「政府の責任を認めて謝罪し、原発を所管する経済産業省や東電の責任追及を約束〉したこの談話草案は、首都圏からの避難を呼び掛けるとともに脱出の際には、「西日本に向かう列車などに、妊娠中、乳幼児を連れた方を優先して乗車させていただきたい」とし、「どうか、国民一人ひとりが、冷静に行動し、いたわり合い、支え合う精神で、どうかこの難局を共に乗り切っていただきたい」と訴えていたのです。

リンク→原発事故 政府の力では皆様を守り切れません 首都圏避難で首相談話草案 :社会

この文面からは日本を襲った前代未聞の大事故の危険性がまざまざと甦ってきます。

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一方、このような大事故にもかかわらず、安倍政権は目先の利益にとらわれて国内にある原発の温存だけでなく、海外への輸出をいまだにはかっています。

しかし、今日も〈関西電力は二十日、再稼働の最終準備を進めている高浜原発4号機(福井県高浜町)の原子炉補助建屋内で、放射性物質を含む一次冷却水漏れがあったと発表した〉との記事が載りました。

日本の自然環境を無視した19世紀的な「アベノミクス」の危険性はいっそう明白になってきたように思われます。

なかなか原発の問題をきちんと追うことは出来ませんでしたが、次のブログ記事ではこれまでに書いた原発事故関係の記事一覧を掲載します。

「日本ペンクラブ声明」を転載

日本ペンクラブが下記の声明を発表しましたので、転載します。

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日本ペンクラブは、本日、衆議院特別委員会で強行採決された、安全保障法案に強く抗議し、全ての廃案を求める。

集団的自衛権の行使が日本国憲法に違反することは自明である。私たちは、戦争にあくまでも反対する。

2015年7月15日

一般社団法人日本ペンクラブ

会長 浅田次郎

 

「特定秘密保護法」と「オレオレ詐欺」

「国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」ことを理由に、閣議決定で決められた「特定秘密保護法」が12月10日から施行されることになります。

「共同通信」が行ったアンケートの結果では、「特定秘密の件数は政府全体で四十六万件前後」と膨大な数字になるばかりでなく、「適性評価や内部通報の窓口はどの部署が担当するか」などの点も「不透明さが際立つ」ことが明らかになりました。

このアンケート結果を受けて「東京新聞」は、12月6日の紙面で「政府の意のままに秘密の範囲が広がり、国民に必要な情報が永久に秘密にされ、市民や記者に厳罰が科される可能性がある」という「三つの懸念」を指摘しています。

このことは日本ペンクラブなど日本のさまざまな団体だけでなく、「国連人権理事会」が「内部告発者やジャーナリストを脅かす」との懸念を表明し、元NSC高官のハンペリン氏もこの法案を「国際基準」を逸脱しており、「過剰指定 政府管理も困難」との指摘をしたにもかかわらず、十分な審議もなく閣議決定で公布されたこの法律の性質を物語っていると思えます。

以前のブログ記事で書いたように「テロ」の対策を目的とうたったこの法案は、諸外国の法律と比較すると国内の権力者や官僚が決定した情報の問題を「隠蔽」する性質が強く、「官僚の、官僚による、官僚と権力者のための法案」とでも名付けるべきものだろうと私は考えています。

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(秘密裏に交渉されるTPPに対する自民党のポスター。図版はネット上に出回っている写真より)。

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一方、すでに11月末に「法律事務所員などを名乗る複数の男から『あなたは国家秘密を漏らした。法律違反で警察に拘束される。金を出せば何事もなかったようにする』などと電話で脅された女性が、2500万円をだまし取られたという事件が発生していました(「東京新聞」、11月23日)。

「特定秘密保護法」が施行される前に起きたこの事件は、法律が正式に施行された後では、戦前の日本のように厳しい言論統制で「国民」が萎縮し、言論の自由などを奪われて、次第に「臣民」に近い状態になる危険性が高いことを示唆しているでしょう。

 

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安倍首相が共著『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(ワック)で絶賛した百田尚樹氏の小説『永遠の0(ゼロ)』では、徳富蘇峰の歴史観が正当化されており、この小説には若者たちに死をも恐れぬ「白蟻」のような勇敢さを求める戦前の「道徳」が秘められていると思われます。

(2016年11月18日、図版を追加)

菅原文太氏の遺志を未来へ

元俳優の菅原文太氏が亡くなられたことが報じられました。

謹んで哀悼の意を表するとともに、震災後に「日刊ゲンダイ」のインタビューで語った記事(デジタル版)と、震災後の活動が比較的詳しく書かれている「日刊スポーツ」デジタル版の記事をご紹介することで菅原氏の強い遺志の一端をお伝えすることにします。

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「ポスト震災を生き抜く」

あれだけの大震災と原発事故を経て、日本人の意識が違う流れに変わるかな、と期待したけど、変わらないな。何も変わらないと言っていいほど。戦後の日本はすべてがモノとカネに結びついてきた。そこが変わらないとな。

俺は09年から有機栽培に取り組んできた。在来種を扱うタネ屋は数えるほどで、売られている野菜は「F1」といって一代限りで、タネを残せない一代交配種で作られている。農薬もハッキリ言って毒だよ。米軍がベトナム戦争で散布した枯れ葉剤のお仲間さ。極論すれば農薬と化学肥料とF1種で成り立っているのが、今の日本の農業じゃないのか。

農薬の怖さはそれこそ放射能とおんなじさ。人体への影響は目に見えない。農民は危ないから子どもたちを農地に入れないよ。儲からない上に危険だしじゃあ、後継者不足も当たり前だ。原発に農薬にと、日本はアメリカの実験場にされてきたんだ。

戦後の日本人は「世界一勤勉な国民だ」とシリを叩かれ、働いてきた。集団就職列車に乗って、大都会の東京や大阪の大企業や工場に送り込まれてきた。日本人総出で稼ぎに稼いで、豆粒みたいな島国が一時は世界一の金満国家になったけど、今じゃあ1000兆円もの借金大国だ。

農業も原発もアメリカの実験場だ

農薬の怖さはそれこそ放射能とおんなじさ。人体への影響は目に見えない。農民は危ないから子どもたちを農地に入れないよ。儲からない上に危険だしじゃあ、後継者不足も当たり前だ。原発に農薬にと、日本はアメリカの実験場にされてきたんだ。

農薬いっぱいの土壌からできたコメや野菜でいいのか。化学肥料と農薬を使わない本当の土壌にタネをまけば、よく根を張って力強くおいしい作物ができる。「農」が「商」だけになってはダメだ。「工」にもあらずだ。このトシになって、今さら夢はないけどな、農業を安全な本来の姿に戻したい。それが最後の望みだね。

戦後の日本人は「世界一勤勉な国民だ」とシリを叩かれ、働いてきた。集団就職列車に乗って、大都会の東京や大阪の大企業や工場に送り込まれてきた。日本人総出で稼ぎに稼いで、豆粒みたいな島国が一時は世界一の金満国家になったけど、今じゃあ1000兆円もの借金大国だ。

国はカネがない、増税しかないと言うけど、ぜひ聞いてみたい。日本人が汗水流して稼いだカネはどこへ消えたんですか、と。何兆円と稼いだカネが雲散霧消したのなら、この国にはどんなハイエナやハゲタカが群がっているんだ。(後略)

【日刊ゲンダイ新春特別インタビュー、2012年1月1日号より抜粋】

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「菅原文太さん、安倍政権に反対の政治活動」(「日刊スポーツ」デジタル版、2014年12月2日)

菅原さんは2012年に俳優を引退後、政治活動に熱心に取り組んだ。政治支援グループを立ち上げ、安倍政権が進める特定秘密保護法や原発再稼働などの方針に反対。米軍普天間飛行場移設問題が争点になった沖縄県知事選では、移設反対派候補の集会に参加。代表作「仁義なき戦い」のセリフを引用し、「絶対に戦争をしてはならない」と訴えた。

菅原さんは先月1日、沖縄県知事選で、普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた翁長雄志氏の決起集会に出席した。那覇市のスタジアムで1万人を前に「政治の役割にはふたつある。1つは、国民を飢えさせてはならない。もう1つ。絶対に戦争をしないこと」と訴えた。

「私は少年時代、なぜ竹やりを持たされたのか。今振り返っても笑止千万だ」

政治を考えるとき、自らの戦争体験があった。辺野古移設を容認し3選を目指した仲井真弘多氏を「戦争を前提に沖縄を考えている」と批判。代表作「仁義なき戦い」のラストシーンで口にした、「弾はまだ残っとるがよ」というセリフを引用し「仲井真さんに(その言葉を)ぶつけたい。沖縄は国のものではない」と主張した。翁長氏当選の流れを生んだ場になった。(後略)

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日本ペンクラブ・前会長の井上ひさし氏も「憲法」や言論の自由の自由、さらに農業の重要性をも強調されていました。

菅原氏の言葉と活動は、原発事故の現在の実態だけでなく、国民の生命の問題にも深く関わるTPP交渉をも幕末の幕府と同じように国民にはその内容を示さないままに一方的に進め、さらに「特定秘密保護法」で問題点を隠そうとしている安倍政権の危険性を明らかにしていると思われます。

菅原氏は「日刊ゲンダイ」のインタビューを「なにより2012年こそ被災地に生きる人々にとって良い一年になって欲しい。本当に祈っているよ」という言葉で結んでいました。氏の強い遺志を受け継ぎ、2015年を良い年にするためにも今回の総選挙では独裁的な傾向を強める安倍政権に対して NO という意思を示しましょう。

 

追記:「東京新聞」の朝刊にも詳しい記事が載っていましたが、サイト「デモクラ資料室」の12月2日のブログには「菅原文太さんが遺したメッセージ」が掲載されています。

 

〈「放射能の除染の難しさ」と「現実を直視する勇気」〉を「主な研究」に掲載

 

 原発事故の後も福島県に残ってこどもたちの健康を守るための「放射能測定」などの地道なボランティア活動を行っている吉野裕之氏を招いての研究会が、7月11日に日本ペンクラブの「子どもの本委員会」と「環境委員会」との共催で開催されました。

 掲載が遅れてだいぶ以前のことになってしまいましたが、今回の研究会からも多くのことを学びましたので、「主な研究」にその時の報告とその後の経過を踏まえて私の感想を記しておきます。

真実を語ったのは誰か――「日本ペンクラブ脱原発の集い」に参加して

 

ここのところ忙しく、原発事故に関連する記事を書くことができませんでしたが、日本だけでなく地球の将来にも大きな影響を及ぼすにできごとが続いています。

少しさかのぼることになりますが、時系列に沿って、原発事故関連の出来事を追って記すことにします。

今回は、事故当時の最高責任者・菅直人氏を講演者に招いて、「福島原発事故 ― 総理大臣として考えたこと」と題して行われた3月15日の「脱原発を考えるペンクラブの集い」での菅氏の講演の内容をまず紹介し、その後で安倍首相が全世界に向けて発した、汚染水は「完全にブロックされている」という発言を検証することにします。

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「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4は、五〇〇名を収容できる専修大学神田校舎の大教室で行われので、最初はどの位の聴衆が集まるのか少し不安にも思ったが、講演が始まる少し前には座れない人も出るほどとなった。

 冒頭で司会の中村敦夫環境委員長は、事故から三年も経った現在も放射線や汚染水が毎日、放出されているにもかかわらず福島第一原子力発電所の状況についての報道がほとんどなされていないことを指摘し、メディアをとおしては知り得ないことをこの場で包み欠かさず伝えて頂きたいと語った。

 菅元首相もそれに応じる形で資料なども用いながら、未曾有の大事故と対面した時の危機感と対応をきわめて率直に語り、第二部の質疑応答でも厳しい質問にも深い反省も交えて誠実に答えていたのが、印象的だった。

 事故当時の状況については、新聞や書物、さらには前回行われた環境委員会の研究会などで少しは知っていたが、最高責任者だった菅氏によって肉声で語られた内容はやはり衝撃的だった。

 改めて驚いたのは、原子力発電の専門家の委員たちが原発事故を想定していなかったために、事故が起きた後では首相に適切なアドバイスをすることがまったくできていなかったことである。

 菅氏は政府事故調中間報告の図面資料を用いながら、四号機プールに水が残っていなかったら、二五〇㎞圏に住む五千万人の避難が必要という「最悪のシナリオ」になった可能性があったという背筋がぞっとするような核心部分の話に入った。

一九八六年に起きたソ連のチェルノブイリの原発事故では核反応そのものが暴走し、一機の爆発としては最大のものであったが、ソ連の場合は事故を起こしたのは四号機だけだった。しかし、福島第一原発だけでも六機の原発と七つの使用済みプールがあり、さらに第二原発にも四機の原発と四つのプールがあったので、日本の場合はソ連の場合よりも数十倍から百倍の規模の災害となる危険性が高かったのである。

 菅氏は政財界からだけでなくマスコミからも浴びせられた激しいバッシングについて、ユーモアを交えつつ語ったが、その話からは司馬遼太郎氏が『坂の上の雲』で指摘していた「情報の隠蔽」の問題――多くの評論家の解釈とは異なり、「情報の隠蔽」の問題が『坂の上の雲』におけるもっとも重要なテーマであると私は考えている――が現在の日本でも続いていることが痛感された。

休憩後に行われた第二部の「質疑応答」では、壇上の茅野裕城子氏(理事・女性作家委員会委員長)、吉岡忍(専務理事)、山田健太(理事・言論表現委員長)だけではなく、会場からも冒頭での浅田次郎会長の質問をはじめとし、下重暁子副会長や小中陽太郎理事からも会場の素朴な疑問を代弁するような質問があった。

たとえば、浅田会長からの、なぜ日本では狭い国土に五四基もの原発が建設され、原発が動いていなくとも困らないのに再稼働の動きがあるのか」という質問に対しては、菅氏は電力会社の宣伝などのために原発がなくても生活ができるにもかかわらず「オール電化」が必要だと思い込まされていたことや、競争相手もないのにテレビコマーシャルを流すなどの手段でメディアに対する支配力をもっているためだろうと答えた。

  原発事故に総理として直面したことを「天命」と受け止めて、「語り部」としてその時のことをきちんと伝えていこうとする菅氏の政治姿勢を司会者の中村氏は高く評価し、今後の変革のエンジンになってもらいたいと語ったが、それは五〇〇名という大教室を埋め尽くした聴衆も同じだったようで、締めの言葉の後では拍手が長く続いた。

 熱い質疑応答は懇親会にも引き継がれ、菅氏は日本ペンクラブの元会長で哲学者の梅原猛氏が今回の原発事故を「文明災だ」と規定していたことにもふれつつ、地震大国でもある日本が「脱原発」へと転換する必要性を強調した。

今回の「集い」では日本の原発産業や政財界だけでなく、マスコミの問題点が浮き彫りになったと思われる。

        (詳しい報告は「日本ペンクラブ会報」第424号に掲載)。

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 5月17日付けの「東京新聞」は、「汚染水 外洋流出続く 首相の『完全ブロック』破綻」との大見出しで、東京電力福島第一原発から漏れた汚染水が、沖合の海にまで拡散し続けている可能性の高いことが、原子力規制委員会が公開している海水データの分析から分かった」ことを報じています。

 以下にその記事の一部を引用しておきます。

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  二〇一一年の福島事故で、福島沖の同地点の濃度は直前の値から一挙に最大二十万倍近い一リットル当たり一九〇ベクレル(法定の放出基準は九〇ベクレル)に急上昇した。それでも半年後には一万分の一程度にまで急減した。

 一九四〇年代から世界各地で行われた核実験の影響は、海の強い拡散力で徐々に小さくなり、八六年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で濃度は一時的に上がったが、二年ほどでかつての低下ペースとなった。このため専門家らは、福島事故でも二年程度で濃度低下が元のペースに戻ると期待していた。

 ところが、現実には二〇一二年夏ごろから下がり具合が鈍くなり、事故前の水準の二倍以上の〇・〇〇二~〇・〇〇七ベクレルで一進一退が続いている。

 福島沖の濃度を調べてきた東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授は「低下しないのは、福島第一から外洋への継続的なセシウムの供給があるということ」と指摘する。

 海水が一ベクレル程度まで汚染されていないと、食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える魚は出ないとされる。現在の海水レベルは数百分の一の汚染状況のため、「大きな環境影響が出るレベルではない」(神田教授)。ただし福島第一の専用港内では、一二年初夏ごろから一リットル当たり二〇ベクレル前後のセシウム137が検出され続けている。沖合の濃度推移と非常に似ている。

神田教授は「溶けた核燃料の状態がよく分からない現状で、沖への汚染がどう変わるか分からない。海への汚染が続いていることを前提に、不測の事態が起きないように監視していく必要がある」と話している。

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 原発事故の後で菅氏追求の急先鋒だった安倍氏は、昨年の9月には国際社会に向かって「汚染の影響は専用港内で完全にブロックされている」と日本の首相として強調していました。

しかし、その説明は現在、完全に破綻しているばかりでなく、原発事故のさらなる拡大の危険性が広がっていると思えます。

原発事故の検証とともに、その発言も検証される必要があるでしょう。

  

「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4のお知らせを「新着情報」に再掲しました

 

「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4のお知らせを1月18日にこのブログに記載しましたが、開催日が近づいてきましたので、改めて「新着情報」に掲載しました。

先の東京都知事選挙では脱原発の票が二つに割れただけでなく、公共放送であるべきNHKが原発事故の問題をきちんと伝えなかったこともあり、大きなインパクトを世論に与えることはできませんでした。

しかし、福島第一原子力発電所の事故は収束からはほど遠い状態で、今日も「東京新聞」は下記のような記事を載せています。

「東京電力福島第一原発で、海側敷地の汚染を調べる井戸から、一リットル当たり七万六〇〇〇ベクレルと、放出限度の五百倍を超える地下水としてはこれまでにない高い濃度の放射性セシウムが検出された。東電はタービン建屋と、配管などを収める地下トンネル(トレンチ)の継ぎ目付近から、高濃度汚染水が漏えいしている可能性があるとしており、建屋から外部への直接漏出が濃厚になった」。

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今年の3月は「第五福竜丸」事件が起きてから60周年に当たります。

アメリカの水爆「ブラボー」の実験は、この水爆が原爆の1000倍もの破壊力を持ったために、制限区域とされた地域をはるかに超える範囲が「死の灰」に覆われて、160キロ離れた海域で漁をしていた日本の漁船「第五福竜丸」の船員が被爆しました。

日本ではこの事件のことは大きく報じられたのですが、その後南東方向へ525キロ離れたアイルック環礁に暮らしていた住民も被爆していたことが明らかになっています(『隠されたヒバクシャ――検証=裁きなきビキニ水爆被害』凱風社、2005年)。

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フクシマの悲劇を再び生むことのないように、なぜ「絶対安全」とされてきた福島第一原子力発電所で事故が起きてしまったのかを、きちんと検証することが必要でしょう。

地殻変動によって形成され、いまも大規模な地震が続いている日本で生活している私たちが正確な判断を行うためにも、多くの方にご参加頂きたいと願っています。

「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4、開催のお知らせと追記

「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4が、「福島原発事故 ―総理大臣として考えたこと」をテーマに次のような形で開催されます。

講師:菅直人氏

日時:3月15日(土)14時より

場所:専修大学神田校舎

共催:日本ペンクラブ・環境委員会と専修大学

(入場無料、申込不要・先着順)。

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日本ペンクラブ・環境委員会は昨年の6月29日(土)に、専修大学人文ジャーナリズム学科との共催でシンポジウム【脱原発を考えるペンクラブの集い】part3「動物と放射能」を専修大学で行いました。

(その時に公開されたドキュメンタリー映画《福島 生きものの記録》については、映画評「映画 《福島 生きものの記録》(岩崎雅典監督作品 )と黒澤映画《生きものの記録》」を参照)。

さらに、昨年の12月には事故当時に内閣官房副長官として震災と原発事故の対応に当たっていた参議院議員の福山哲郎氏を講師として、「環境委員会主催・脱原発研究会2013 ――その時、官邸で何が起きていたか――」を行いました。

今回の菅直人氏による講演はその研究会を踏まえて行われるものです。

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私自身は政治的には無党派で、その時々の各党の政策によって投票していますが、福島第一原子力発電所事故が起きたときに政権を担当していた民主党の菅直人総理は、原発を強力に進めてきた長年の自民党政権の「つけ」を払わされたたばかりか、自民党政権や東京電力の問題点を新聞やテレビなどで指摘する時間も与えられずに責任を押しつけられて退任に追い込まれたと考えています。

東京電力・福島第一原子力発電所の大事故の際には、事故直後にロシア政府が避難民をシベリアで受け入れる旨の発表をしていましたが、東北だけでなく首都東京を含む関東一帯が被爆の危機にさらされて、これらの地域の人々は小松左京氏が小説『日本沈没』で描いたような大規模な避難をしなければならないような事態と直面していたのです。

地殻変動によって形成され、いまも大規模な地震が続いている日本で生活している私たちが正確な判断を行うためにも、多くの方にご参加頂きたいと願っています。

 

追記:詳しくは日本ペンクラブの下記のリンク先で確認してください。

 「脱原発を考えるペンクラブの集い」part4  3月15日開催(1月28日)

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参考文献

1,菅直人『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』幻冬舎新書、2012年

2,福山哲郎『原発危機 官邸からの証言』ちくま新書、2012年

  

「特定秘密保護法」と自由民権運動――『坂の上の雲』と新聞記者・正岡子規

私は法律家ではないので具体的な比較はできませんが、「今世紀最大の悪法」と思える「特定秘密保護法」が、十分な審議もなされないまま、審議の過程で修正を重ねるという醜態を示しながらも、これまでの国会での手続きや法案が抱える多くの欠陥を無視して、昨日、強行採決されました。

この事態を受けて、日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)が、「運用次第では憲法が保障する取材、報道の自由が制約されかねず、民主主義の根幹である国民の『知る権利』が損なわれる恐れがある」と指摘する声明を発表しました。

日本ジャーナリスト会議は「法律の廃止と安倍内閣の退陣」を要求し、日本雑誌協会日本書籍出版協会の委員会も「取材・記事作成に重大な障害となることを深く憂慮する。法案の可決成立に断固抗議する」と声明を出しました。

この法律の問題点を早くから指摘していた日本ペンクラブも、「特定秘密保護法案強行採決に抗議する」という声明を出しました。(リンク 日本ペンクラブ声明「特定秘密保護法案強行採決に抗議する」

特定秘密保護法に反対する学者の会」も3181名の学者と746名の賛同者の名前で、右記の「抗議声明」を発表しました(リンクhttp://anti-secrecy-law.blogspot.jp/2013/12/blog-post_7.html

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一方、安倍政権はこの「特定秘密保護法」が審議されているさなかに、国民の生活や国家の方向性に深く関わる重要な事柄を決めていました。

いくつかの新聞記事によりながら3点ほどを指摘しておきます。まず、5日には「武器輸出を原則として禁ずる武器輸出三原則」を見直して、「武器輸出管理原則を作ること」が決められ、その一方で民主党政権が打ち出していた「2030年代に原発をゼロとする」目標が撤回されました。

さらに、6日の閣議では「特定秘密の廃棄について『秘密の保全上やむを得ない場合、政令などで(公文書管理法に基づく)保存期間前の廃棄を定めることは否定されない』とする答弁書が出されました。

「特定秘密保護法」の強行採決は、原発事故や基地問題などの重要な「情報」を国民に知らせることを妨げ、官僚や権力者には都合の悪い「事実」を破棄する一方で、国民の「言論の自由」を奪うという安倍政権の危険な方向性を具体的に国民の前にさらしたといえるでしょう。

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アニメ映画《風立ちぬ》で示唆され、映画《少年H》で具体的に描かれたような、自分の考えていることも言えない息苦しい時代が、目の前に来ているようにも思われます。

しかし、司馬遼太郎氏が描いていたように、危機の時代に強権的な手法を用いた江戸幕府を倒し、さらに「坂本竜馬」が危惧したような圧倒的な力で他の勢力を抑圧した「薩長連立幕府」にたいして「憲法」の必要性を認めさせた自由民権運動のような輝かしい歴史を日本は持っています。(前回のブログ記事司馬作品から学んだことⅧ――坂本龍馬の「大勇」参照)。

これまで政治的な視点で矮小化されてきたと思える長編小説『坂の上の雲』については、「新聞紙条例」から「明治憲法」の発布に至る過程や、自由民権運動と陸羯南の新聞『日本』との関係にも注意を払いながら、新聞記者としての正岡子規に焦点を当てて来春から本格的に再考察したいと考えています。

(2016年2月10日。リンク先を追加)

リンク→新聞記者・正岡子規関連の記事一覧

 

「強行採決に抗議する日本ペンクラブの声明」を「新着情報」に掲載しました

 

「東京新聞」の昨日の夕刊には、「特定秘密保護法案」が「時代に逆行」しており、「言論統制の第一歩」であるとの浅田次郎・日本ペンクラブ会長の談話が載っていました。

実際、国会での審議を軽視しただけでなく、地方の不安や報道機関の要請などを無視したこの強行採決は、戦前や戦中の「言論弾圧」につながっているといえるでしょう。

「平和」を党是としてきた与党の公明党が今回の暴挙ともいえる強行採決に際して、自民党の「ブレーキ」となるどころか、「アクセル」を踏んでいるようにも見えるのはなぜでしょうか。権力の側に身を置けば、戦時中のような「大弾圧」からは逃れられると考えているのかもしれません。

しかし、隣国のロシア革命での権力闘争を例に出すまでもなく、明治維新でも権力を握った薩長が今度は互いに激しく争ったことは、司馬遼太郎氏の長編小説『歳月』や『翔ぶが如く』の読者ならばよく知っていることです。

権力者の元にすべての情報が集まるような仕組みの危険性は、ジョージ・オーウェルの『1984』やザミャーチンの『われら』などの長編小説ですでに詳しく描かれています。

福島第一原子力発電所の大事故の状況をきちんと観察して、脱原発への道筋を作るだけでなく、若者たちを戦場へと兵士として送らないためにも、この法案は廃案にする必要があるでしょう。

日本ペンクラブの「特定秘密保護法案の衆議院特別委員会強行採決に抗議する声明」を「新着情報」に掲載しました