高橋誠一郎 公式ホームページ

チェルノブイリ原発事故

「表現の自由と情報へのアクセス」の権利と「差別とヘイトスピーチ」の問題――「特定秘密保護法」から「共謀罪」へ

現在、「共謀罪」の議論が国会で行われているが、6月2日の衆院法務委員会で金田法務大臣は、戦争に反対する人々を逮捕することを可能にした「治安維持法」を「適法」であったとし、さらに創価学会初代牧口会長も獄死するに至った「拘留・拘禁」などの「刑の執行も、適法に構成された裁判所によって言い渡された有罪判決に基づいて、適法に行われたものであって、違法があったとは認められません」 と答弁した。

一方、5月30日に最高裁は「サンデー毎日」(毎日新聞出版)が2014年10月5日号に掲載した「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」という記事を名誉毀損で訴えていた稲田朋美・防衛相の訴えが一審、二審判決につづいて稲田氏の上告を棄却する決定が出した。すなわち、稲田氏の資金管理団体「ともみ組」が2010年から12年のあいだに、ヘイトスピーチを繰り返していた「在特会」の有力会員や幹部など8人から計21万2000円の寄付を受けていたことを指摘したこの記事の正当性が最高裁でも認められたのである。

しかも、6月2日付の記事で「リテラ」が指摘しているように稲田氏は、〈元在特会事務局長の山本優美子氏が仕切る極右市民団体「なでしこアクション」が主催する集会に2012年に登壇しており、14年9月にはネオナチ団体代表とのツーショット写真の存在も発覚〉していた。それにもかかわらず、〈安倍首相は稲田氏をそれまでの自民党政調会長よりもさらに重い防衛相というポストにまで引き上げた。稲田氏と同じようにネオナチ団体代表と写真におさまっていた高市早苗総務相も据え置いたままである。〉

ヘイトスピーチ(写真の出典は「毎日新聞」)

なお、防衛相就任以前にも保守系雑誌などで「長期的には日本独自の核保有を国家戦略として検討すべきではないでしょうか」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」などと述べていた稲田氏が、最近も月刊誌「月刊Hanada」(7月号)に論文を寄稿して、「大東亜戦争」の意義を強調するような持論を展開していたことが判明した。

これらの人物を大臣に任命した安倍首相の責任はきわめて重たく、この問題は国連のデービッド・ケイ特別報告者の「対日調査報告書」ともかかわると思える。

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すでにみたようにピレイ国連人権高等弁務官は2013年に強行採決された「特定秘密保護法」について、12月2日にジュネーブで開かれた記者会見で「表現の自由と情報へのアクセスという二つの権利」に関わるこの法案については、人権高等弁務官事務所も注目しているが、「法案には明 確さが不十分な箇所があり、何が秘密かの要件が明確ではなく、政府が不都合な情報を秘密として特定できてしまう」と指摘し、次のように続けていた。

「政府および国会に、憲法や国際人権法で保障されている表現の自由と情報へのアクセスの権利の保障措置(セーフガード)を規定するまで、法案 を成立させないよう促したい」。

今回も「共謀罪」法案を衆議院で強行採決した日本政府に対して、国連人権高等弁務官事務所は、「メディアの独立性に懸念を示し、日本政府に対し、特定秘密保護法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の廃止を勧告した」、「対日調査報告書」を公表した。

一方、産経新聞によれば、高市早苗総務相は2日午前の閣議後の記者会見で、この「対日調査報告書」について「わが国の立場を丁寧に説明し、ケイ氏の求めに応じて説明文書を送り、事実把握をするよう求めていた。にもかかわらず、われわれの立場を反映していない報告書案を公表したのは大変、残念だ」と述べていた。

しかし、「言論と表現の自由」に関する調査のために来日した国連特別報告者・デービッド・ケイ氏が公式に面会を求めていたにもかかわらず、それを拒否していた高市早苗総務相がこのような形で国連特別報告者の「報告書」を非難することは、「日本会議」などの右派からは支持されても、国際社会の強い批判を浴びることになるだろう。

この意味で注目したいのは、5月31日に掲載された読売新聞の「報告書」では「差別とヘイトスピーチ」の項目もあるが、要旨が記された記事では略されており、日本政府の「反論書」要旨にもそれに対する反論は記されていないことである。そのことは「差別とヘイトスピーチ」にふれられることを安倍首相や閣僚が嫌っていることを物語っているようにも見える。

現在、国連と安倍内閣との間に生じている強い摩擦や齟齬は、「特定秘密保護法」案が強行採決された時から続いているものであり、今回の「勧告」は戦前の価値観を今も保持している「日本会議」系の議員を重用している安倍内閣の政権に対する強い不信感を物語っているだろう。

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「特定秘密保護法」強行採決への歩み(3)

私は憲法や法律、政治学などの専門家ではないが、主に専門のドストエフスキー作品の考察をとおして、強行採決された「特定秘密保護法」の問題点に迫った記事の題名とリンク先を挙げる。

なぜならば、「表現の自由と情報へのアクセスという二つの権利」が許されていなかったニコライ一世の治世下の「暗黒の30年」に、ドストエフスキーは作品を「イソップの言葉」を用いて書くことによって、「憲法」の発布や農奴制の廃止、言論の自由を強く求めていたからである。

彼の作品は戦時中にヒトラーの『わが闘争』を賛美していた文芸評論家・小林秀雄の解釈によって矮小化されたが、シベリアに流刑になった以降もさまざまな表現上の工夫をするとともに「虚構」という方法を用いて、重たい「事実」に迫ろうとしていた。

残念ながら、現在も文芸評論家の小林秀雄の影響が強い日本では、ドストエフスキーの作品を「父殺しの文学」と規定する刺激的な解釈をして「二枚舌」の作家と位置づけている小説家もいるが、それは作家ドストエフスキーだけでなく「文学」という学問をも侮辱していると思える。

ドストエフスキーの作品研究においても、「農奴の解放」や「裁判の公平」そして、「言論の自由」を求めていたドストエフスキーの姿勢もきちんと反映されねばならないだろう。

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 『ロシアの近代化と若きドストエフスキー ――「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)

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「『地下室の手記』の現代性――後書きに代えて」(7月9日)

憲法96条の改正と「臣民」への転落ーー『坂の上の雲』と『戦争と平和』(7月16日)

TPPと幕末・明治初期の不平等条約(7月16日)

「ブラック企業」と「農奴制」――ロシアの近代化と日本の現在(7月17日 )

「蟹工船」と『死の家の記録』――俳優座の「蟹工船」をみて(7月17日 )

「憲法」のない帝政ロシア司馬遼太郎の洞察力――『罪と罰』と 『竜馬がゆく』の現代性10月31日

ソ連の情報公開と「特定秘密保護法」→グラースノスチ(情報公開)とチェルノブイリ原発事故(10月17日 )

現実の直視と事実からの逃走→「黒澤映画《夢》の構造と小林秀雄の『罪と罰』観」11月5日

小林秀雄のドストエフスキー観テキストからの逃走――小林秀雄の「『白痴』についてⅠ」を中心に  

上からの近代化とナショナリズムの問題日本における『罪と罰』の受容――「欧化と国粋」のサイクルをめぐって11月8日

「特定秘密保護法案」に対する国際ペン会長の声明11月22日

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化11月26日

(2017年6月3日、6月9日、11日、題名を変更し改訂、図版を追加)

「特定秘密保護法」強行採決への歩み(2)――チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の類似性

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(東宝製作・配給、1955年、「ウィキペディア」)。

放射能汚染水の流出が発生していながら、その事故が隠蔽されたことによって参議院選挙に勝利した安倍自民党が、「国会」での十分な議論もなく進めたのが、核保有国のインドに対する原発の輸出交渉だった。

しかし、昭和49年日本の参議院はインドの地下核実験に対する抗議の決議を次のような文面で行っていた。

「本院は、わが国が唯一の被爆国であることにかんがみ、今日まであらゆる国の核実験に抗議し、反対する決議を行い、その禁止を強く要望してきた。  今回行われたインドの地下核実験は、たとえいかなる理由によるものにせよ、核実験競争を激化させ、ひいては人類滅亡の危機をもたらすものであつて、厳重に抗議するものである。  政府は、本院の主旨をたいし、すべての国の核兵器の製造、実験、貯蔵、使用に反対し、全面的な禁止協定が締結されるよう努めるとともに、インド政府に対し、直ちに適切な措置を講ずべきである。 」

さらに1998年5月にインドとパキスタンが相次いで核実験を断行し、「ヒンドゥー核とイスラム核の悪夢」として世界を揺るがした際にも同様の抗議をインドとパキスタンに対して行っていた。

インドの地下核実験に抗議する決議(第142回国会):資料集:参議院

パキスタンの地下核実験に抗議する決議(第142回国会):資料集:参議院

これらの決議にもかかわらず安倍自民党が、核保有国のインドに原発を輸出しようとしていたことは、目先の利益にとらわれたこの政権が、2度に渡る被爆などの歴史的な重たい事実や「核実験競争を激化させ、ひいては人類滅亡の危機をもたらす」危険性にたいしては無関心であることを示しているだろう。

さらに、インドへの輸出によって将来日本の国民が蒙ることになる損害賠償の可能性を隠していたことは、福島第一原子力発電所の事故の責任の所在をも隠蔽することができる「特定秘密保護法」の制定にこの政権が動き出そうとしていた可能性すら示唆していたように思える。

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以下、安倍自民党の原発政策の危険性を考察したを考察した記事を掲げる。

チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の類似性「劇《石棺》から映画《夢》へ」(7月8日)

「映画《福島 生きものの記録》(岩崎監督)と黒澤映画《生きものの記録》」(7月11日)

「大地主義」と地球環境(8月1日 )

汚染水の深刻さと劇《石棺》(8月1日 )

汚染水の流出と司馬氏の「報道」観(7月28日 )

原爆の危険性と原発の輸出2013年8月6日

「加害責任の反省」と「不戦の誓い」のない終戦記念日の式辞→終戦記念日と「ゴジラ」の哀しみ 8月15日

「汚染水流出事故」についての世界の報道機関の反応『はだしのゲン』の問題と「国際的な視野」の必要性8月27日

Earthquake and Tsunami damage-Dai Ichi Power Plant, Japan

(2011年3月16日撮影:左から4号機、3号機、2号機、1号機、写真は「ウィキペディア」より)

 

俳優・中村敦夫氏のライフワーク、朗読劇「線量計が鳴る」全国上演のお知らせ

元・原発技術者と木枯し紋次郎――朗読劇「線量計が鳴る」を観る 

俳優・中村敦夫氏のライフワーク、朗読劇「線量計が鳴る」の全国上演が始動しています。「公式サイト・中村敦夫」より、朗読劇の内容と上演スケジュールを以下に転載します。

中村敦夫 公式サイト(上演スケジュール)

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原発の町で生れ育ち、原発で働き、原発事故ですべてを奪われた。

これは天命か、それとも陰謀か?老人は、謎解きの旅に出る。

中村敦夫、公演2

(←画像をクリックで拡大できます)

ー内容についてー

形式  一幕四場の出演者一人による朗読劇。

元・原発技師だった老人の独白が展開されます。

二場と三場の間に十分間の休憩。

それを入れて、計二時間弱の公演です。

背景にスクリーンがあり、劇中の重要なワードなどが、 映写されます。

他の舞台装置は不要。

物語

一場 原発の町で生れ育ち、原発で働き、そして原発事故で すべてを失った主人公のパーソナル・ヒストリー(個人史)

二場 原発が作られ、日本に入ってきた事情。 原発の仕組み。福島事故の実態。

三場 主人公のチエルノブイリ視察体験。 被曝による医学上の諸問題と現実。 放射線医学界の謎。

四場 原発を動かしている本当の理由。 利権に群がる原子力村の相関図。

継承者歓迎  当初は中村敦夫が朗読しますが、多くの朗読者が、 全国各地で名乗りを上げ、自主公演が増加するこ とを期待します。   

 

朗読劇「線量計が鳴る」の主な紹介記事(2017年6月11日現在)

4月29日 「毎日新聞」 インタビュー:朗読劇で原発廃止訴え 俳優・中村敦夫さん – 毎日新聞

5月8日 「山梨日日新聞」 中村敦夫さん、原発テーマに朗読劇 via 山梨日日新聞 –

5月12日 「朝日新聞」デジタル 熊本)原発を考える 25日中村敦夫さん朗読劇:朝日新聞デジタル

6月11日「日刊ゲンダイ」 中村敦夫「避けられない問題」 – 日刊ゲンダイDIGITAL

2018年6月10日 「毎日新聞」ストーリー:俳優・中村敦夫78歳の挑戦(その1) 舞台から「原発」問う 

(2018年6月10日、改訂)

 

2016年を振り返って――『ゴジラの哀しみ』の構想をめぐって

今年も残り少なくなってきました。

先ほどは、「無敵皇軍」「八紘一宇」「王道楽土」「五族共存」などの「美しいスローガン」を繰り返して、国民を戦争に駆り立てていた戦前の価値観を取り戻そうとして「改憲」を目指す安倍首相の2016年の発言集という説明とともに「リテラ」の記事をリツイートしました。→ http://lite-ra.com/2016/12/post-2811.html … @litera_webさんから

ここでは発行までに約1年を費やした『ゴジラの哀しみ――映画《ゴジラ》から映画《永遠の0(ゼロ)》へ』の構想を記したツイッター記事をとおして今年6月の出来事を振り返っておきます。

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6月19日

ほとんどが「日本会議」のお仲間からなる内閣を率いる安倍首相のめざす「改憲」は、「専制的」で「反憲法」の色彩が強い内容になる危険性が高い。→ 安倍首相「次の国会から改憲議論」 参院選後 具体的に条文審査:政治(TOKYO Web) http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016062090070558.html …

6月20日

国民に背を向けて権力者の圧力に屈するNHKに強い危機感を覚える。→「チェルノブイリ原発事故 隠された“真実”」の感想、stakaha.com/?p=6033lite-ra.com/2016/06/post-2… @litera_webさんから

6月21日

「天災のことを考えたら我々は仕事が出来ません」と語っていた田中委員長の発言を振り返っておく。→原子力規制委・田中委員長の発言と安倍政権――無責任体質の復活(6) | 高橋誠一郎 公式ホームページ stakaha.com/?p=4813

6月21日

近著『ゴジラの哀しみ――映画《ゴジラ》から映画《永遠の0(ゼロ)》へ』のお知らせ。原爆と原発の問題や歴史認識など安倍政権の問題点を可視化して考察。stakaha.com/?p=6110 (図版は露語版「ウィキペディア」) pic.twitter.com/uNsZBnxHLP

6月24日

筆者は映画の素人に過ぎないが、原発の大事故が描かれている黒澤映画《夢》の第六話「赤富士」を考察するなかで、この映画にも監督補佐として参加していた本多猪四郎監督の映画《ゴジラ》をきちんと考察する必要性を感じた。

〔註――「映画《夢》が公開されたのは一九九〇年のことであったが、脚本の第一稿が書き上げられたのはチェルノブイリ原発事故が起きた一九八六年のことであった」(拙著『ゴジラの哀しみ』)より〕。

2) 一九七五年に公開された映画《メカゴジラの逆襲》を最後に本多監督が東宝から去ったことは、「先端技術をスマートに駆使して敵を撃破退する“格好いい”自衛隊」が描かれるようになる「ゴジラ」映画の変貌も示唆しているだろう。

3)一方、映画《ゴジラ》の翌年に公開された黒澤映画《生きものの記録》は、興行的には大失敗に終わったが、『モスラの精神史』で指摘されているように、この映画が映画《モスラ》とアニメ映画《風の谷のナウシカ》を繋いでいる可能性が高い。

4)初代のゴジラがスクリーンに姿を現したのは、日本国憲法が公布されたのと同じ一一月三日のことであったが、このことは宮崎駿監督が小説『永遠の0(ゼロ)』の映画化を「神話の捏造」と厳しく批判した理由を考える上でも重要だろう。

5)小林節氏が指摘しているように「法治国家の原則が失われており、専制政治の状態に近づいている」現在、本書では映画《ゴジラ》などの考察をとおして原爆や原発だけでなく、「日本会議」的な歴史認識の危険性にも迫りたい。

6月24日

「安全保障関連法」が、「戦争法」であったことを裏付けるエンブレムです。→キャンペーン「陸上自衛隊に新エンブレムの撤回を求めます!」 に賛同をお願いします!

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〈陸自が、これまでの「国土防衛マーク」を捨てて、日本刀の「抜き身」をエンブレムに登場させました。「帝国陸軍軍人」が帯刀していたこと、それが飾り物ではなく実際に殺戮のために振るわれたことを記憶しているアジアの国々では戦前の「亡霊」が現れたと受け止めるでしょう〉。

(2017年7月11日、一部訂正)

 

5年前のレベル7の大事故を振り返り、新たな一歩へ

3.11の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から早くも5年をむかえたことで、新聞各社は「東日本潰滅の危機」さえあった当時の大事故を振り返る記事を掲載し、テレビ局も現在の状況に迫るニュース番組を放送しました。

リンク→真実を語ったのは誰か――「日本ペンクラブ脱原発の集い」に参加して

一方、原発事故による放射能「汚染水」問題さえも収束していないにもかかわらず、「アンダーコントロール」と世界に宣言していた安倍首相は、10日の記者会見でも「原子力規制委員会が判断した世界最高レベルの新たな規制基準」を強調しながら、「再稼働を進めるとの一貫した方針に変わりない」と表明しました。

しかも、このように危険な「原発」の再稼働を強引に行う安倍内閣は、旧ソ連のような言論への圧力も強めています。

それゆえ、ここではこのホームページを立ち上げるきっかけともなった1988年に『人間の場から』第10号に発表した論稿「劇《石棺》から映画《夢》へ」をふりかえりつつ、福島第一原子力発電所の大事故を映画《夢》などをとおして考察した2013年の記事へのリンク先と記事の章立てを示すことにします。

過去をきちんと学ぶことにより、未来への可能性も見えてくるでしょう。

「劇《石棺》から映画《夢》へ」の構成

はじめに チェルノブイリ原発事故と劇《石棺》/  一、「演じることと見ること」/ 二、劇《石棺》/ 三、映画《夢》と福島第一原子力発電所の事故/ 四、日本の原発行政と「表現の自由」

リンク劇《石棺》から映画《夢》へ

「戦争法案」に反対する学生のアピールを転載――自分の声で語ること

最近、知人のS氏から下記の文面とともにアピール映像と音声が届きました。

「15日に大阪・梅田駅前で開かれた「戦争法制反対」するSEALDs関西の集会での女子学生のアピールを見つけました。

フェイスブックにアップされてまだ5日目ですが、再生はすでに10万回を超えて、ものすごい勢いで広まっているようです。 この間の多くの集会。デモで聴いた、どの政治家や学者・文化人の反対アピールより心を打ちます。一度ぜひ見てみてください。

*引用者注――リンク先が有効期限切れとなったようですので、リンク先を削除し「文字起こし」されている文章を転載しました

東京のSEALDsの学生たちのスピーチについても言えることですが、彼らは状況を的確に分析・把握して、しっかりものごとの本質を理解し、紋切型の言葉ではない自分の言葉で、聴衆に向かって物怖じすることなくアピールできるのですね。」
*   *   *

この映像を見て私が思い出したのは、かつてペレストロイカの時期にソ連で見たフォーキンの《語れ》という劇のことでした。これは党の在り方を批判した劇でしたが、終わり近くで上からの指導を批判して下からの意見がなければだめだと主人公に語らせ、相変わらず十年一日のごとくに決まりきった報告書を読みあげる女性からノートを取り上げて「(自分の声で)語れ」という台詞(せりふ)が最期に響いた時には、観客の熱い共感が湧き起こりました。

それゆえ、この劇を見終わった時にはソ連は変わるだろうという確信を持ったのですが、「自分の言葉」で語られた「戦争法案」に反対する彼女の短いスピーチからは、その劇と同じような迫力と説得力を感じました。

ソ連の「ペレストロイカ」の流れはチェルノブイリ原発事故の後で急速に加速し、ついには「一党独裁」という統治形態をも打ち倒したのですが、福島第一原子力発電所事故を経験していた若者たちは、安倍首相やその「お仲間」たちの言動から同じような問題を鋭く認識したのだと思われます。

衆議院での採決に際しては自民党と公明党の議員たちは「独裁者」に逆らえない「羊」のように黙々と賛成票を投じましたが、無名の学生の方が「本当の勇気」を示していたのです。

車がひっきりなしに通過する場所でのスピーチですので、ことに前半には聞き取りにくい箇所もありますが、すでに文字起こしがされていることが分かりましたので、以下にその文章を掲載します。

*   *   *

こんばんは。今日、私、本当に腹が立ってここに来ました。 国民の過半数が反対してるなかでこれを無理矢理通したという事実はまぎれもなく独裁です。

だけど私今この景色に本当に希望を感じています。大阪駅がこんな人で埋め尽くされてるのを見るの私初めてです。 この国が独裁を許すのか、民主主義を守りぬくのかは、今私たちの声にかかっています。

先日安倍首相はインターネット番組のなかでこういう例を挙げていました。 「ケンカが強くていつも自分を守ってくれている友達の麻生君がいきなり不良に殴り掛かられた時には一緒に反撃するのはあたりまえですよね」って。

ぞっとしました。 この例えをもちいるのであれば、この話の続きはこうなるでしょう。友達が殴りかかられたからと一緒に不良に反撃をすれば不良はもっと多くの仲間をつれて攻撃してくるでしょう。そして暴力の連鎖が生まれ不必要に周りを巻き込み関係のない人まで命を落とすことになります。

この例えをもちいるのであれば、正解はこうではないでしょうか。なぜ彼らが不良にならなければならなかったのか。そしてなぜ友達の麻生君に殴りかかるようなまねをしたのか。 その背景を知りたいと公表し暴力の連鎖を防ぐために不良がうまれる社会の構造を変えること、それがこの国が果たすべき役割です。

この法案を支持する人たち、あなたたちの言う通りテロの脅威が高まっているのは本当です。 テロリストたちは子どもが教育を受ける権利も、女性が気高く生きる自由も、そして命さえも奪い続けています。

しかし彼らは生まれつきテロリストだったわけではありません。なぜ彼らがテロリストになってしまったのか。その原因と責任は国際社会にもあります。 9・11で3000人の命が奪われたからといってアメリカはその後正義の名のもとに130万人もの人の命を奪いました。残酷なのはテロリストだけではありません。

わけの分からない例えで国民を騙し、本質をごまかそうとしても 私たちは騙されないし、自分の頭でちゃんと考えて行動します。 「日本も守ってもらってばっかりではいけないんだ」と「戦う勇気を持たなければならないんだ」と安倍さんは言っていました。

だけど私は海外で人を殺すことを肯定する勇気なんてありません。 かけがえのない自衛隊員の命を国防にすらならないことのために消費できるほど私は心臓が強くありません。 私は戦争で奪った命をもとに戻すことができない。 空爆で破壊された街を建て直す力もない。 日本の企業がつくった武器で子どもたちが傷ついてもその子たちの未来に私は責任を追えない。 大切な家族を奪われた悲しみを私はこれっぽっちも癒せない。

自分が責任のとれないことをあの首相のように「私が責任をもって」とか「絶対に」とか「必ずや」とか威勢のいい言葉でごまかすことなんて出来ません。

安倍首相、二度と戦争をしないと誓ったこの国の憲法はあなたの独裁を認めはしない。 国民主権も基本的人権の尊重も平和主義も守れないようであれば、あなたはもはやこの国の総理大臣ではありません。

民主主義がここにこうやって生きている限り私たちはあなたを権力の座からきひずり下ろす権利があります。力があります。 あなたはこの夏でやめることになるし私たちは来年また戦後71年目を無事に迎えることになるでしょう。

安倍首相、今日あなたは偉大なことを成し遂げたという誇らしい気持ちでいっぱいかもしれません。けれどそんなつかの間の喜びはこの夜国民の声によって吹き飛ばされることになります。 きのうテレビのニュースで東京の日比谷音楽堂が戦争法案に反対する人でいっぱいになったのを見ました。

足腰が弱くなったおじいさんやおばあさんが暑い中わざわざ外に出て震える声でこぶしを突き上げて戦争反対を叫んでいる姿を見ました。この70年間日本が戦争をせずにすんだのはこういう大人たちがいたからです。ずっとこうやって闘ってきてくれた人たちがいたからです。 そして戦争の悲惨さを知っているあの人たちがずっとそうあり続けてきたのはまぎれもなく私の、私たちのためでした。

ここで終わらせるわけにはいかないんです。私たちは戦後を続けていくんです。武力では平和を保つ事ができなかったという歴史の反省の上にたち憲法9条という新しくてもっとも賢明な安全保障のあり方を続けていくんです。 私はこの国が武力を持たずに平和を保つ新しい国家としてのモデルを国際社会に示し続けることを信じます。

いつわりの政治は長くは続きません。 そろそろここで終わりにしましょう。 新しい時代を始めましょう。

2015年7月15日、私は戦争法案の閣議決定に反対します。

ありがとうございました。

*2015年9月15日。表題と内容を一部変更)

〈「放射能の除染の難しさ」と「現実を直視する勇気」〉を「主な研究」に掲載

 

 原発事故の後も福島県に残ってこどもたちの健康を守るための「放射能測定」などの地道なボランティア活動を行っている吉野裕之氏を招いての研究会が、7月11日に日本ペンクラブの「子どもの本委員会」と「環境委員会」との共催で開催されました。

 掲載が遅れてだいぶ以前のことになってしまいましたが、今回の研究会からも多くのことを学びましたので、「主な研究」にその時の報告とその後の経過を踏まえて私の感想を記しておきます。

福島原発事故とチェルノブイリ原発事故

 

東京電力・福島第一原子力発電所で大事故が発生してから3年が経ちましたが状況はいっこうに改善されていないばかりか、汚染水などの問題は悪化しているように見えます。

私たちが経験もしたことのない「天災」の関東大震災についてのニュースは、昨日、大きく取り上げられていましたが、「人災」であった福島第一原子力発電所の事故については、NHKをはじめ民放でもあまり大きくは取り上げられていないように感じました。

こうした中、「東京新聞」は「原発関連死1000人超す 避難長期化、続く被害」と題した署名記事を3月10日の一面に掲載していましたので、その一部を引用して転載します。

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東京電力福島第一原発事故に伴う避難で体調が悪化し死亡した事例などを、本紙が独自に「原発関連死」と定義し、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも千四十八人に上ることが分かった。昨年三月の調査では七百八十九人で、この一年間で二百五十九人増えた。事故から三年がたっても被害は拡大し続けている。

福島県の避難者数は約十三万五千人。このうち、二万八千人が仮設住宅で暮らしている。医療・福祉関係者の多くは、関連死防止に住環境の整備を指摘する。県は原発避難者向けに復興公営住宅四千八百九十戸の整備を進めているが、入居が始まるのは今秋から。一次計画分の三千七百戸への入居が完了するのは二〇一六年春になる見通しだ。

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先日、WOWOW放送の『故郷よ』を観た映画ファンの友人から、次のようなメールをもらいました。

「チェルノブイリの原発事故によって翻弄される人々を扱った作品でした。チェルノブイリのロシア語の意味がヨハネ黙示録に書かれている「ニガヨモギ」とは初めて知りました。作品中の字幕では、「忘却の草花」だと出てきます。10年後の福島はどうなっているのだろう。そんなことを考えさせる作品でした。」

福島第一原子力発電所事故が、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故に匹敵するレベル7の大事故であることは知られていますが、「苦よもぎ」と原発事故の件はあまり知られていないようです。

世界のコスモロジーを比較した2011年11月の比較文明学会のシンポジウムで、私は「生命の水の泉」と「大地」のイデアと題した考察を発表しました。そこでは長編小説『白痴』にも言及しながら、「ニガヨモギ」と原発事故との関連にも言及していましたので、その時の原稿を「主な研究」のページに掲載します

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黒澤明監督は「第五福竜丸」事件をきっかけに撮った映画《生きものの記録》で、主人公の老人に「臆病者は、慄え上がって、ただただ眼をつぶっとる」と語らせていました。

日本は自然を大切にすると国と言われて来ましたが、日本の大地が汚され国民の生命が脅かされている状況に対しても、多くの国民はいまだに「眼をつぶって」黙っているようにみえます。

私たちはきちんと原発事故を直視して、脱原発の声を上げるべきでしょう。