高橋誠一郎 公式ホームページ

共謀罪

明治の藩閥政府と平成の安倍政権――『新聞紙条例』(讒謗律)と「特定秘密保護法」、「保安条例」と「共謀罪」との酷似

「日本に貴族をつくって維新を逆行せしめ、天皇を皇帝(ツァーリ)のごとく荘厳し、軍隊を天皇の私兵であるがごとき存在にし、明治憲法を事実上破壊するにいたるのは、山県であった。」(『翔ぶが如く』文春文庫)

現在、日本の「憲法」の形にも深くかかわる「共謀罪」の議論が拙速な形で行われていますので、征韓論から西南戦争に至る激動の時代を描いた『翔ぶが如く』で山県有朋を厳しく批判していた上記の文章をトップページの〈司馬遼太郎の「神国思想」批判と憲法観に追加しました。

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今回は作家・司馬遼太郎の山県有朋観を簡単に考察することで、山県有朋の思想を強く受け継いでいると思われる安倍首相の危険性を明らかにしたいと思います。

1,山県有朋と政商との癒着と公金横領事件

現在、日本は安倍首相夫妻と「森友学園」や「加計学園」の問題で大きく揺れていますが、「征韓論」の発端となったのは、元奇兵隊の隊長で戊辰戦争の後に横浜で生糸相場を張るようになり「わずか一二年で横浜一の巨商」になった野村三千三〔みちぞう〕による山城屋事件でした。

元部下の野村から頼まれた山県有朋は、「兵部省の陸軍予算の半分ぐらいに」相当したかもしれぬ五十万円という巨額の公金を貸したばかりでなく、御用商人にも取り立てていたのですが、生糸相場に失敗して六四万九千円もの公金を返せないような事態に陥ったので野村は切腹し、山県も明治5年に辞職していました(『歳月』上・「長閥退治」)。

しかし、薩長のパワーバランスにより山県は翌年には初代陸軍卿として復職したばかりでなく、同じような横領がやはり旧長州藩の「井上馨を独裁者とする大蔵省」でも起きたのです。

「信じられぬほどの悪政がいま、成立したばかりの明治政府において進行している」ことに憤激し、太政官での議論でも「法の前では何人〔なんびと〕も平等である」と力説して受け入れられずに辞職した司法卿の江藤新平が明治7年に起こしたのが佐賀の乱でした。

司馬氏は『翔ぶが如く』ではフランス革命時の「フランス革命の闘士」でありながらも、利権で私腹を肥やしさらには、「王政の復活のために暗躍」したタレーランと山県有朋の類似性を指摘したあとでこう続けています。「『国家を護らねばならない』/と山県は言いつづけたが、実際には薩長閥をまもるためであり、そのために天皇への絶対的忠誠心を国民に要求した。」

2,薩長藩閥政府への批判の広がりと明治8年の「新聞紙条例」(讒謗律)

元司法卿の江藤新平が起こした佐賀の乱が鎮圧されたあとも、薩長藩閥政府の汚職と腐敗に対する国民の怒りは収まらず、燎原の火のように広がる薩長藩閥政府への批判を弾圧するために発布されたのが「新聞紙条例」でした。司馬氏はこの条例の問題点をこう指摘しています。

「明治初年の太政官が、旧幕以上の厳格さ在野の口封じをしはじめたのは、明治八年『新聞紙条例』(讒謗律)を発布してからである。これによって、およそ政府を批判する言論は、この条例の中の教唆扇動によってからめとられるか、あるいは国家顛覆論、成法誹毀(ひき)ということでひっかかるか、どちらかの目に遭った」。(太字は引用者、『翔ぶが如く』第5巻「明治八年・東京」)。

3、内務省の設置(明治6年)と保安条例の公布(明治20年)

「普仏戦争」で「大国」フランスに勝利してドイツ帝国を打ち立てたビスマルクと対談した大久保利通は、「プロシア風の政体をとり入れ、内務省を創設し、内務省のもつ行政警察力を中心として官の絶対的威権を確立」しようとしましたが、西南戦争の後で暗殺されます(『翔ぶが如く』第1巻「征韓論」、拙著『新聞への思い』、88頁)。

その内務省の大臣となった山県有朋(任期1885~90年)が、「憲法」公布前の明治20年に発布したのが、集会・結社の自由を規制していた「集会条例」を大幅に強化して、後の治安維持法を準備したといえる「保安条例」でした。

内務省がこの条例を拡大解釈することによって、民間で私擬憲法を検討する事も禁じていたことを考慮するならば、この条例は民主主義を否定するような形での「改憲」を目指す安倍政権が、なぜ国内だけでなく、国際社会からの強い批判にもかかわらず「共謀罪」を強行採決しようとしているかをも物語っているが分かるでしょう。

ISBN978-4-903174-33-4_xl

『新聞への思い――正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年)

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「特定秘密保護法」強行採決への歩み(4)

戦車兵と戦争ーー司馬遼太郎の「軍神」観7月14日

大河ドラマ《龍馬伝》の再放送とナショナリズムの危険性7月14日

「改憲」の危険性と司馬遼太郎氏の「憲法」観7月19日

「特定秘密保護法」の危険性→「特定秘密保護法案」と明治八年の「新聞紙条例」(讒謗律)11月13日

「(国家そのものが)投網、かすみ網、建網、大謀網のようになっていた」→司馬遼太郎の「治安維持法」観11月14日

復活した「時事公論」と「特定秘密保護法」 11月24日

「司馬作品から学んだこと――新聞紙条例と現代」11月24日

改竄(ざん)された長編小説『坂の上の雲』――大河ドラマ《坂の上の雲》と「特定秘密保護法」11月24日

司馬作品から学んだことⅠ――新聞紙条例と現代11月24日

司馬作品から学んだことⅡ――新聞紙条例(讒謗律)と内務省

司馬作品から学んだことⅢ――明治6年の内務省と戦後の官僚機構

司馬作品から学んだことⅣ――内務官僚と正岡子規の退寮問題  

司馬作品から学んだことⅤ――「正義の体系(イデオロギー)」の危険性

司馬作品から学んだことⅥ――「幕藩官僚の体質」が復活した原因

司馬作品から学んだことⅦ――高杉晋作の決断と独立の気概2013年12月6

司馬作品から学んだことⅧ――坂本龍馬の「大勇」12月7日

「特定秘密保護法」と自由民権運動――『坂の上の雲』と新聞記者・正岡子規12月8日

「学問の自由」と「特定秘密保護法」――情報公開と国民の主権12月12日

司馬作品から学んだことⅨ――「情報の隠蔽」と「愛国心」の強調の危険性12月18日

(山口県萩市の中央公園に立つ「山県有朋公像」、北村西制作、出典は「ウィキペディア」)

(2017年6月10日、改題し全面的に改定)

「表現の自由と情報へのアクセス」の権利と「差別とヘイトスピーチ」の問題――「特定秘密保護法」から「共謀罪」へ

現在、「共謀罪」の議論が国会で行われているが、6月2日の衆院法務委員会で金田法務大臣は、戦争に反対する人々を逮捕することを可能にした「治安維持法」を「適法」であったとし、さらに創価学会初代牧口会長も獄死するに至った「拘留・拘禁」などの「刑の執行も、適法に構成された裁判所によって言い渡された有罪判決に基づいて、適法に行われたものであって、違法があったとは認められません」 と答弁した。

一方、5月30日に最高裁は「サンデー毎日」(毎日新聞出版)が2014年10月5日号に掲載した「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」という記事を名誉毀損で訴えていた稲田朋美・防衛相の訴えが一審、二審判決につづいて稲田氏の上告を棄却する決定が出した。すなわち、稲田氏の資金管理団体「ともみ組」が2010年から12年のあいだに、ヘイトスピーチを繰り返していた「在特会」の有力会員や幹部など8人から計21万2000円の寄付を受けていたことを指摘したこの記事の正当性が最高裁でも認められたのである。

しかも、6月2日付の記事で「リテラ」が指摘しているように稲田氏は、〈元在特会事務局長の山本優美子氏が仕切る極右市民団体「なでしこアクション」が主催する集会に2012年に登壇しており、14年9月にはネオナチ団体代表とのツーショット写真の存在も発覚〉していた。それにもかかわらず、〈安倍首相は稲田氏をそれまでの自民党政調会長よりもさらに重い防衛相というポストにまで引き上げた。稲田氏と同じようにネオナチ団体代表と写真におさまっていた高市早苗総務相も据え置いたままである。〉

ヘイトスピーチ(写真の出典は「毎日新聞」)

なお、防衛相就任以前にも保守系雑誌などで「長期的には日本独自の核保有を国家戦略として検討すべきではないでしょうか」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」などと述べていた稲田氏が、最近も月刊誌「月刊Hanada」(7月号)に論文を寄稿して、「大東亜戦争」の意義を強調するような持論を展開していたことが判明した。

これらの人物を大臣に任命した安倍首相の責任はきわめて重たく、この問題は国連のデービッド・ケイ特別報告者の「対日調査報告書」ともかかわると思える。

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すでにみたようにピレイ国連人権高等弁務官は2013年に強行採決された「特定秘密保護法」について、12月2日にジュネーブで開かれた記者会見で「表現の自由と情報へのアクセスという二つの権利」に関わるこの法案については、人権高等弁務官事務所も注目しているが、「法案には明 確さが不十分な箇所があり、何が秘密かの要件が明確ではなく、政府が不都合な情報を秘密として特定できてしまう」と指摘し、次のように続けていた。

「政府および国会に、憲法や国際人権法で保障されている表現の自由と情報へのアクセスの権利の保障措置(セーフガード)を規定するまで、法案 を成立させないよう促したい」。

今回も「共謀罪」法案を衆議院で強行採決した日本政府に対して、国連人権高等弁務官事務所は、「メディアの独立性に懸念を示し、日本政府に対し、特定秘密保護法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の廃止を勧告した」、「対日調査報告書」を公表した。

一方、産経新聞によれば、高市早苗総務相は2日午前の閣議後の記者会見で、この「対日調査報告書」について「わが国の立場を丁寧に説明し、ケイ氏の求めに応じて説明文書を送り、事実把握をするよう求めていた。にもかかわらず、われわれの立場を反映していない報告書案を公表したのは大変、残念だ」と述べていた。

しかし、「言論と表現の自由」に関する調査のために来日した国連特別報告者・デービッド・ケイ氏が公式に面会を求めていたにもかかわらず、それを拒否していた高市早苗総務相がこのような形で国連特別報告者の「報告書」を非難することは、「日本会議」などの右派からは支持されても、国際社会の強い批判を浴びることになるだろう。

この意味で注目したいのは、5月31日に掲載された読売新聞の「報告書」では「差別とヘイトスピーチ」の項目もあるが、要旨が記された記事では略されており、日本政府の「反論書」要旨にもそれに対する反論は記されていないことである。そのことは「差別とヘイトスピーチ」にふれられることを安倍首相や閣僚が嫌っていることを物語っているようにも見える。

現在、国連と安倍内閣との間に生じている強い摩擦や齟齬は、「特定秘密保護法」案が強行採決された時から続いているものであり、今回の「勧告」は戦前の価値観を今も保持している「日本会議」系の議員を重用している安倍内閣の政権に対する強い不信感を物語っているだろう。

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「特定秘密保護法」強行採決への歩み(3)

私は憲法や法律、政治学などの専門家ではないが、主に専門のドストエフスキー作品の考察をとおして、強行採決された「特定秘密保護法」の問題点に迫った記事の題名とリンク先を挙げる。

なぜならば、「表現の自由と情報へのアクセスという二つの権利」が許されていなかったニコライ一世の治世下の「暗黒の30年」に、ドストエフスキーは作品を「イソップの言葉」を用いて書くことによって、「憲法」の発布や農奴制の廃止、言論の自由を強く求めていたからである。

彼の作品は戦時中にヒトラーの『わが闘争』を賛美していた文芸評論家・小林秀雄の解釈によって矮小化されたが、シベリアに流刑になった以降もさまざまな表現上の工夫をするとともに「虚構」という方法を用いて、重たい「事実」に迫ろうとしていた。

残念ながら、現在も文芸評論家の小林秀雄の影響が強い日本では、ドストエフスキーの作品を「父殺しの文学」と規定する刺激的な解釈をして「二枚舌」の作家と位置づけている小説家もいるが、それは作家ドストエフスキーだけでなく「文学」という学問をも侮辱していると思える。

ドストエフスキーの作品研究においても、「農奴の解放」や「裁判の公平」そして、「言論の自由」を求めていたドストエフスキーの姿勢もきちんと反映されねばならないだろう。

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 『ロシアの近代化と若きドストエフスキー ――「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)

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「『地下室の手記』の現代性――後書きに代えて」(7月9日)

憲法96条の改正と「臣民」への転落ーー『坂の上の雲』と『戦争と平和』(7月16日)

TPPと幕末・明治初期の不平等条約(7月16日)

「ブラック企業」と「農奴制」――ロシアの近代化と日本の現在(7月17日 )

「蟹工船」と『死の家の記録』――俳優座の「蟹工船」をみて(7月17日 )

「憲法」のない帝政ロシア司馬遼太郎の洞察力――『罪と罰』と 『竜馬がゆく』の現代性10月31日

ソ連の情報公開と「特定秘密保護法」→グラースノスチ(情報公開)とチェルノブイリ原発事故(10月17日 )

現実の直視と事実からの逃走→「黒澤映画《夢》の構造と小林秀雄の『罪と罰』観」11月5日

小林秀雄のドストエフスキー観テキストからの逃走――小林秀雄の「『白痴』についてⅠ」を中心に  

上からの近代化とナショナリズムの問題日本における『罪と罰』の受容――「欧化と国粋」のサイクルをめぐって11月8日

「特定秘密保護法案」に対する国際ペン会長の声明11月22日

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化11月26日

(2017年6月3日、6月9日、11日、題名を変更し改訂、図版を追加)

「特定秘密保護法」強行採決への歩み(1)――放射能汚染水の流出事故の隠蔽と2013年参議院選挙

昨日の記事で紹介したように、国連のデービッド・ケイ特別報告者は「対日調査報告書」を公表して、「メディアの独立性に懸念を示し、日本政府に対し、特定秘密保護法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条の廃止を勧告した」(「共同通信」5月30日21時30分)。

法的な強制力を伴わないことから、日本ではこの「対日調査報告書」と「勧告」が軽く見られている傾向もあるように思われる。しかし、「特定秘密保護法」が2013年に強行採決された際には、日本新聞協会(会長・白石興二郎読売新聞グループ本社社長)も、「運用次第では憲法が保障する取材、報道の自由が制約されかねず、民主主義の根幹である国民の『知る権利』が損なわれる恐れがある」と指摘する声明を発表していた。

実際、それから4年経った現在、「読売新聞」は安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」による獣医学部新設計画における安倍政権の教育行政の歪みが記されている文書がすべて「本物」であると証言した前川前文部次官のスキャンダルをリークした官邸からの情報を第一面に掲載した。このことは2013年に発表された日本新聞協会の声明がその後の「報道の自由」の変質を予見していたことを裏付けているだろう。

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この意味で注目したのは、2013年参議院選挙後の7月22日になって放射能汚染水の流出が発表されが、報道によれば「東電社長は3日前に把握」していたことが明らかになり、その後福島第一原発2号機のタービン建屋地下から延びるトレンチに事故発生当時とほぼ同じ高濃度の放射性セシウムが見つかったとの発表もされて、この事実の隠蔽に関わった社長を含む責任者の処分も発表されたことである。

海外における「放射能汚染水の流出事故」の報道については→『はだしのゲン』の問題と「国際的な視野」の必要性

2013

(2013年参議院選挙結果、©Monaneko – Jiji.com, NHK, asahi.com)

このことについてはブログ記事で言及するとともに、「日本人が眼をつぶっていても、いずれ事実は明らかになる」とも記した。→汚染水の流出と司馬氏の「報道」観2013年7月28日)

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しかし、ピレイ国連人権高等弁務官が12月2日にジュネーブで開かれた記者会見でこの法案の「成立を急ぐべきではない」と指摘していたにもかかわらず、安倍政権は「特定秘密保護法」を2013年12月6日に強行採決した。→国連人権高等弁務官、特定秘密保護法案に懸念 :日本経済新聞

「東京新聞」の「こちら特報部」は、「そもそも五輪招致段階のIOC総会で『汚染水は完全にコントロールされている』と事実に反するアピール」をした安倍首相が、「自らの責任も問われている福島原発事故も、五輪を機に『過去』のものにしたいようだ」と指摘した記事を発表したが、「特定秘密保護法」自体が原発事故の隠蔽に深く関わっていたと思える。

さらに、「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は「電波停止」発言を行いながら度重なる会見の要求を拒否していた高市総務大臣など、「日本会議」系の議員を重用している安倍内閣の政権の問題を指摘していた。

報道によれば、ケイ氏が「来月12日に人権理事会で調査報告について説明する予定」であることも同時に伝えられたが、このブログとツイッターでも時系列に沿って当時の記事をアップして「特定秘密保護法」から「共謀罪」への流れを追うことでこれらの法律の問題点を浮かび上がらせるようにしたい。

(2017年6月1日、改題して図版とリンク先を追加)

(5)「閣議決定」と特別報告者による「特定秘密法の改正勧告」

リットン調査団ケイ

「リットン調査団」(出典は「ウィキペディア」)と特別報告者デビット・ケイ氏(出典は「共同通信」)

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5月28日の記事で私は「国連の特別報告者デビット・ケイ氏やケナタッチ氏の指摘や報告の内容は、安倍政権の強圧的な対応によっていっそう説得力のあるものとなり、ベルリン・オリンピックの悲劇を体験している国際社会は「リットン報告書」の時と同じような対応を取らざるをえなくなるだろう」と記した。

実際に事態は満州事変後の「リットン調査団」の頃の状況と似てきた。

すなわち、共謀罪の構成要件を厳しくした「テロ等準備罪」について、国連人権理事会の特別報告者が安倍総理宛の書簡で懸念を表明していた問題に対して、安倍内閣は「書簡は国連または人権理事会の見解を述べたものではない」などとする答弁書を国内向けに閣議決定し、書簡についても答弁書で次のように厳しく批判した。「我が国政府から説明を受けることなく作成されたものであり、誤解に基づくと考えられる点も多い」。(以上、「TBSニュ-ス」13時57分)。

しかし、その「閣議決定」に応えるかのように早速、「国連人権高等弁務官事務所は30日、言論と表現の自由に関するデービッド・ケイ特別報告者がまとめた対日調査報告書を公表した。その中でケイ氏は、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性に言及、メディアの独立性に懸念を示し、特定秘密保護法の改正などを日本政府に勧告した」(「共同通信」21時30分)。

実際、前回の記事で記したように、すでに2013年に国連のピレイ・人権高等弁務官は安倍政権が強行採決した「特定秘密保護法案」について「成立を急ぐべきではない」と指摘していた。さらに、高市総務大臣の「電波停止」発言など、政権による報道への圧力の問題を調査しに来日しながら、度重なる会見の要求を高市氏に拒まれた国連の「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は、外国人記者クラブで記者会見を行い、秘密保護法やパスポート強制返納などについても安倍政権を強く批判していた。

「閣議決定」は国連特別報告者ケナタッチ氏が「共謀罪」法案に対し、18日付けの書簡で首相に対して「我が国政府から説明を受けることなく作成されたもの」と批判しているが、このような経緯から見るならば、「説明」を拒否し続けていたのは安倍内閣であることは明白であるだろう。

以前に書いたことの繰り返しになるが、五輪に向けたこれまでの努力を無駄にしないためには、「五輪憲章」に違反して開催権を取り上げられる危険性のある安倍政権に代わる次の政権を一刻も早くに打ち立てることが必要だと思える。

 

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性関連記事

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性(1)――1940年との類似性(加筆版)

「共謀罪」はテロの危険性を軽減せず、むしろ増大させる悪法――国連特別報告者の批判を踏まえて

(2)ベルリン・オリンピックとの「際立つ類似点」

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって 

4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「特定秘密保護法案の強行採決と日本の孤立化関連記事

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化Ⅱ

(4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「日本政府が、その抗議において、繰り返し多用する主張は、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するためにこの法案が必要だというものでした。」(国連特別報告者「官房長官の声明に対する反論」)

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読売新聞(5月27日、電子版)は「(国連事務総長)グテレス氏は日本の国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案(テロ準備罪法案)を巡り、国連人権理事会の特別報告者が懸念を伝える書簡を首相に送ったことについて、「必ずしも国連の総意を反映するものではない」との見解を明らかにした」とニュースのソースを明らかにせずに発表した。

このような報道を受けて安倍首相は29日の参院本会議で、国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が「共謀罪」法案によるプライバシー権侵害への懸念を表明したことについて、「言動は著しくバランスを欠き、客観的であるべき専門家の振る舞いとは言い難い」と強く批判し、さらに公開書簡を発表したことを念頭に「信義則にも反する。一方的なものである以上、政府のこれまでの説明の妥当性を減ずるものでは全くない」と厳しく非難し、自身宛ての質問に対しては「わが国の取り組みを国際社会で正確に説明するためにも、しっかりと返したい」と語った。

しかし、「日刊ゲンダイ」などでもすでに詳しく報道されているように、人権理事会理事国選挙の際に日本政府は、「世界の人権保護促進への日本の参画」と題した文書を公表し、〈特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、今後もしっかりと協力していく〉と明記していた。→国連人権理事会理事国選挙 外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003868.html …

それにも関わらず「共謀罪」の問題点を指摘されると「客観的であるべき専門家の振る舞いとは言い難い」と特別報告者のケナタッチ氏を強く非難したことの方が、理事国選挙の際の公約を破り「信義則にも反する」と国際社会から批判されるだろう。

実際、本日(30日)国連の報道官は、「共謀罪の構成要件を厳しくしたテロ等準備罪を新設する法案に懸念を示した国連の特別報告者」の言動を非難した日本政府の見解に対しても、「事務総長は特別報告者について、国連人権理事会に直接、報告を行う独立した専門家」であり、「彼らは国連人権理事会の組織の一部でもある」と語ったとコメントして、日本政府の解釈を否定した。

さらに、金田法相の国会発言からは「共謀罪」が人権・環境団体をも対象としていることが新たに明らかになっただけでなく、「加計学園」問題について証言した前川前文科次官に対する政権と御用新聞による誹謗中傷などからも、オリンピックを名目にした「共謀罪」法案が、テロ対策よりも政権の関係者の利権を守り、批判者を取り締まる法案であることがいっそう明確になってきた。

これまで日本国内での事実の改竄や証拠の隠蔽に成功してきたために、安倍政権は国際社会でも訳語の改竄のような二枚舌が通用すると考えているのかもしれない。

しかし、すでに2013年に国連のピレイ・人権高等弁務官は安倍政権が強行採決した「特定秘密保護法案」についても、「成立を急ぐべきではない」と語っていた。

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

国連からの度重なる警告や質問を無視している安倍政権は、いずれ国際社会からの強い批判を招いて孤立化し、国際連盟から脱退してオリンピックを返上していた1940年と同じような事態になると思われる。

国連事務総長金田法相

(出典は「東京新聞政治部」のツイッター)

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって

「日本政府が、その抗議において、繰り返し多用する主張は、2020年の東京オリンピックに向けて国連越境組織犯罪防止条約を批准するためにこの法案が必要だというものでした。」(国連特別報告者「官房長官の声明に対する反論」)

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昨日の報道によれば、安倍首相はG7サミットのテロに関する議論の中で、日本政府が「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案の今国会成立を目指していることに関連し「テロの資金源である組織犯罪対策の強化が必要であり、国際組織犯罪防止条約の締結のためのわが国の取り組みに対するこれまでの各国の支持に感謝したい」と語った(「東京新聞」)。

「共同通信」が〈首相、「共謀罪」支持に謝意〉との見出しでこのニュースを伝えたために、あたかも安倍政権が強行採決した「共謀罪」法案がサミットでも評価されたかのような印象が生まれた。

しかし、階猛氏がすでにツイッターで指摘しているように「見出しと記事の本文が不整合。本文を読むと『国際組織犯罪防止条約締結の取り組み』への各国の支持に首相が感謝したとあるが、『共謀罪』支持への感謝はどこにもない」のである。

問題はサミットの前に安倍首相と日本政府が「プライバシーに関する権利の国連特別報告者」ケナタッチ氏から受け取っていた「共謀罪」法案にたいする厳しい指摘については完全に無視していることであろう。

しかし、すでに多くの報道機関によって報じられているように、ケナタッチ氏は問題点を具体的に示したうえで、日本政府からの詳しい説明と情報の提供も下記のように明快に求めていた(青い字で記す)。

人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回答いただけますと幸いです。

  1. 上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞かせください。
  2. 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい。
  3. 国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。
  4. 法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。」

しかもケナタッチ氏は、最近の日本における状況を踏まえて次のように結んでいた。

最後に、法案に関して既に立法過程が相当進んでいることに照らして、これは即時の公衆の注意を必要とする事項だと考えます。したがって、閣下の政府に対し、この書簡が一般に公開され、プライバシーに関する権の特別報告者のマンデートのウェブサイトに掲載されること、また私の懸念を説明し、問題となっている点を明らかにするために閣下の政府と連絡を取ってきたことを明らかにするプレスリリースを準備していますことをお知らせいたします。

 閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会の検討のために提出される報告書に掲載いたします。/ 閣下に最大の敬意を表します。」

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こうして、「共謀罪」法案をめぐる日本政府の見解が全世界に向けて公表されることを国連特別報告者・ケナタッチ氏があらかじめ断っていたにもかかわらず、安倍政権は最近の国会で野党からの質問に対するのと同じようなやり方で、特別報告者からの丁寧な要望に対して全く回答しなかったばかりか情報も提供せずに、内政干渉であるかのごとき抗議の書簡を送りつけた。

本稿の視点から注目したいのは、その抗議文に対して国連特別報告者が、冒頭に掲げたオリンピック開催問題にも言及しながら、次のように厳しい反論を安倍政権に突きつけたことである。

日本政府は、これまでの間、実質的な反論や訂正を含むものを何一つ送付して来ることが出来ませんでした。いずれかの事実について訂正を余儀なくされるまで、私は、安倍晋三内閣総理大臣に向けて書いた書簡における、すべての単語、ピリオド、コンマに至るまで維持し続けます。

日本政府がこのような手段で行動し、これだけ拙速に深刻な欠陥のある法案を押し通すことを正当化することは絶対に出来ません

戦前の価値観の復活を目指す「日本会議」に支えられている安倍政権の閣僚たちにとっては、国連特別報告者からのこのように厳しい反論も野党からの批判と同じように無視すればよく、官僚と報道機関を握っていれば国内の反対は押さえられると感じているように思える。

たしかに、国会で3分の2以上の議席を持つ自民・公明・維新の3党が参議院でも一致すれば、この法案も強行採決すれことができるだろう。しかし、国連の特別報告者デビット・ケイ氏やケナタッチ氏の指摘や報告の内容は、安倍政権の強圧的な対応によっていっそう説得力のあるものとなり、ベルリン・オリンピックの悲劇を体験している国際社会は「リットン報告書」の時と同じような対応を取らざるをえなくなるだろう。

ヒトラー、オリンピック安倍マリオ、東京経済

(ベルリン・オリンピックの開会式でオリンピック旗に敬礼するアドルフ・ヒトラー。1936年8月1日。出典はサイト「ホロコースト百科事典」)(出典は「東洋経済.net」)

それゆえ、ジャーナリストの保坂展人・世田谷区長が提案しているように、「参議院審議の前に、ケナタッチ氏の指摘を直接聞くことは必須だろう」。

「共謀罪」法案を強行採決することは東京オリンピック開催の消滅につながると私は考えている。

 

参考資料:「東京新聞」「朝日新聞」「毎日新聞」及び「民進党広報局」作成の下記の文書

プライバシーに関する権利の国連特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ書簡全訳

ジョセフケナタッチ書簡解説(海渡雄一弁護士)

官房長官の声明に対する反論(日本訳)

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前回の記事で記したように、プライバシーの権利に関するケナタッチ国連特別報告者は18日付の安倍晋三首相宛て書簡で、〈法案にある「計画」や「準備行為」の定義があいまいで、恣意(しい)的に適用される可能性があると指摘。いかなる行為が処罰の対象となるかも明記されておらず問題がある〉との強い懸念を示していた。

これに対して日本政府はジュネーブ日本政府代表部の職員を介して抗議の文書を渡し、さらに菅官房長官が記者会見で政府の見解を明らかにしたが、国連特別報告者は電子メールでの「東京新聞」の取材に答えて、日本政府の抗議の内容は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した。

そして、日本政府が国際組織犯罪防止条約の締結に法案が必要だと述べた点については、「プライバシーを守る適当な措置を取らないまま、法案を通過させる説明にはならない」と強く批判し、次のように訴えた。

「日本政府はいったん立ち止まって熟考し、必要な保護措置を導入することで、世界に名だたる民主主義国家として行動する時だ」。

「東京新聞」の記事は国連特別報告者・ケナタッチ氏の指摘と日本政府の反論を分かり易く図示することで「共謀罪」の問題点を浮かび上がらせているので、以下に転載する。

共謀罪、東京新聞3

革命に至った帝政ロシアの研究者の視点から見ても「言論の自由」を奪う危険性の高い「共謀罪」に対する国連特別報告者の指摘は説得力がある。

なぜならば、農奴制の廃止や裁判の改革、そして言論の自由などを主張したことで捕らえられ、偽りの「死刑宣告」を受けた後でシベリアに流刑となっていたドストエフスキーが『罪と罰』においてラスコーリニコフの行動をとおして明らかにしたように、政府を批判する「言論や報道の自由」を厳しく制限することは、絶望した若者をかえってテロなどに走らせることになる危険性が高いからである。

さらに、帝政ロシアやソ連邦の歴史が示しているように、権力者に対する批判が許されない社会では公平な裁判も行われずに腐敗が進んでついには崩壊に至っていたが、同じことが「治安維持法」を公布した後の大日本帝国でも起きていた。

戦前の価値観の復活を目指す「日本会議」に牛耳られた安倍政権が続けば、日本はかつて国際連盟から脱退したように、国際連合からも脱退せざるをえなくと思える。悲劇を繰りかえさないようにするためにも、安倍政権には国連特別報告者の指摘を率直に受け止めさせて、「共謀罪」法案を廃案とさせることが必要だろう。

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性(1)――1940年との類似性(加筆版)

オリンピックを招致する時点では、「世界有数の安全な都市」と断言していた安倍首相が「共謀罪 成立なしで五輪開けない」と語ったことを報じた「東京新聞」の記事を読んだ際には、むしろ、安倍政権が「東京五輪のテロ対策」を名目に「共謀罪」を強行採決するような場合は、「オリンピック憲章」に反する法律として国際社会に訴えれば、「開催権」が剥奪されるのではないかとの感想をツイッターに記した。

なぜならば、高市総務大臣「電波停止」発言など、政権による報道への圧力の問題を調査した国連の「報道の自由」特別報告者デビット・ケイ氏は、度重なる会見の要求を高市氏に拒まれた後で外国人記者クラブで記者会見を行い、秘密保護法やパスポート強制返納などについても安倍政権を強く批判していたからである。

しかも、ヒトラーはベルリン・オリンピックの間に戦争への準備を行っていたが、麻生副総理は憲法改正論に関してナチス政権の「手口」を学んだらどうかと発言しており、「電波停止」発言をした高市氏も1994年には『ヒトラー選挙戦略現代選挙必勝のバイブル』に推薦文を寄せていた。

衆院法務委員会で自民・公明・維新の三党により強行採決された「共謀罪」法案についても、プライバシーの権利に関するケナタッチ国連特別報告者が18日付の安倍晋三首相宛て書簡で、〈法案にある「計画」や「準備行為」の定義があいまいで、恣意(しい)的に適用される可能性があると指摘。いかなる行為が処罰の対象となるかも明記されておらず問題がある〉との強い懸念を示していたことが明らかになった。

19日の「毎日新聞」デジタル版に載ったこの記事を受けて早速、「恥ずかしい首相だ」との感想がツイッターに載ったが、国連特別報告者が「共謀罪」法案について強い懸念を示す書簡を送っていたにもかかわらず、「共謀罪」を強行採決した安倍政権は、早晩、国際社会から「開催権」が剥奪される可能性がむしろ高くなったと思われる。

「東京新聞」も20日の一面で国連特別報告者ケナタッチ氏が「共謀罪」法案に対し、18日付けの書簡で首相に対して、「法案で対象となる犯罪が幅広くテロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいると指摘」していたことを大きく取り上げている。

共謀罪、東京新聞共謀罪、東京新聞2

(図版は「東京新聞政治部」、5月20日と21日のツイッター記事より)

残念ながら、日本ではいまだに国際社会から批判されている「日本会議」に支持された安倍政権が強行採決した「共謀罪」法案を賛美している新聞や、いわゆるネトウヨの影響力が強い。

しかし、「東京新聞」は今日の「こちら特報部」で、トランプ氏から名指しで「口撃」されたNYタイムズやCNNなどが、軒並みに大幅に購読者数を伸ばしていることを指摘し、アメリカでは「偽ニュース」が増えたことから、その対策として事実を正しく伝えようとすることで「権力の暴走を防ぐ良質な報道の重要性が再認識された結果だと思う」というニューヨーク在住のジャーナリストの言葉を紹介している。

「これだけの重要法案の採決にもかかわらず、NHKの生中継」がなかったことを伝えた「日刊ゲンダイ」は、「首相出席による締めくくり質疑を行わないまま、異例の採決となった理由は明白である」として、「安倍は加計学園疑惑の追及から逃げたのだ」と記している。

安倍首相の「加計学園」問題にも目をつぶって批判もできないように見える自民党と「古代復帰」を目指す維新ばかりでなく、かつては「平和の党」を自称していた公明党も、「安倍政権」が委員会で強行採決した「共謀罪」に対する国際社会の強い懸念から目を背けているように見える。

*   *   *

一方、「ウィキペディア」の記述によれば、1940年に日本の首都・東京でオリンピックを開催することは、1936年(昭和11年)の国際オリンピック委員会(IOC)で決定し、それ以降は開催に向けた準備が進められていた。しかし、翌年の7月に勃発した盧溝橋事件から「日中戦争」に拡大すると陸軍が選手選出に異論を唱えるようになった。

さらに、1938年(昭和13年)3月にエジプトのカイロで開催されたIOC総会前には、イギリスやオーストラリアだけでなく、フィンランドからも中止を求める声が上がっており、中華民国からの開催都市変更の要望も出ていたばかりでなく、アメリカ人のIOC委員は東京大会のボイコットを示唆して委員を辞任した。

このような状況を踏まえて日本政府はその年の7月に実施の中止を決定したのだが、国際社会からの厳しい批判の背景には1931年の満州事変の翌年に国際連盟が派遣したリットン調査団の報告書(対日勧告案)が提出され、ジュネーブで開かれた1933年の国際連盟特別総会で、満州における日本の利権が認められなかったとして日本首席全権の松岡洋右が会議場から立ち去り、その年に日本は脱退を表明していたことがあると思われる。

しかも、国際連盟の会議場から決然と立ち去ったことにより日本を国際社会から孤立化させた松岡洋右は、国内では称賛を浴びて「国民精神作興、昭和維新」を唱え、近衛内閣で外相に任命されるとナチスドイツとの同盟を結んで日本を悲劇に追い込むことになるのである。

東京オリンピック1940松岡洋右

(幻に終わった1940年の東京オリンピックのポスター、ドイツ総統官邸でヒトラーとの会談に臨む松岡。図版は「ウィキペディア」より)

「共謀罪」法案の強行採決と東京オリンピック開催消滅の可能性関連記事

「共謀罪」はテロの危険性を軽減せず、むしろ増大させる悪法――国連特別報告者の批判を踏まえて

(2)ベルリン・オリンピックとの「際立つ類似点」

(3)G7サミットでの安倍発言と政府の対応をめぐって 

4)安倍首相の「国連特別報道者」非難発言と日本の孤立化

「特定秘密保護法」案の強行採決と日本の孤立化関連記事

「特定秘密保護法」の強行採決と日本の孤立化

「特定秘密保護法案」の強行採決と日本の孤立化Ⅱ

(2017年5月22日、23日、26日、一部訂正加筆し副題を追加。6月15日、リンク先を追加)

甘利問題と「加計学園」問題、そして「共謀罪」――黒澤映画《悪い奴ほどよく眠る》再考

黒澤明、悪い奴ほど

(ポスターの図版はロシア語版「ウィキペディア」より)

甘利問題と「加計学園」問題、そして「共謀罪」――黒澤映画《悪い奴ほどよく眠る》再考

「森友学園」問題が官僚によって重要な書類が隠されたことでなかなか解明が進まない中、”総理のご意向”とする文書が流出したことでいよいよ本命といされる「加計学園」問題が前面に浮かび上がってきた。

ニュースサイト「リテラ」は、「これは国を揺るがす大問題。総理が腹心の友のため権力を使い便宜を図る行為は金が動いてなくても、収賄やあっせん収賄と同じ。加計理事長は96億円もの利益を得た。韓国前大統領と同じ身内への利益誘導、辞任に値する」と記しているがまさにそのような大問題だろう。

さらに大きな問題は「韓国前大統領と同じ身内への利益誘導」をしながら責任を取ろうともしない独裁的な安倍首相の主導によって、「共謀罪」がまたも強行採決されようとしていることである。

昨年の5月31日に東京地検が甘利前経済再生担当相と元秘書2人を「現金授受問題」で不起訴としたとの報道が「東京新聞」朝刊に載った際には、汚職事件を主題とした黒澤映画《悪い奴ほどよく眠る》を論じた箇所を拙著から引用して掲載していた。

ここではそのページと映画《野良犬》などを論じたブログ記事へのリンク先を示すことにより、映画《夢》で福島第一原子力発電所事故を予告するようなシーンを描き出すことになる黒澤監督が腐敗した政治の危険性も描き出していたことを明らかにしておく。

リンク→長編小説『白痴』の世界と黒澤映画《悪い奴ほどよく眠る》(1960)

リンク→長編小説『罪と罰』の世界と黒澤映画――《野良犬》(1949)と《天国と地獄》(1963)

 

トップページを改訂し、〈目次〉と〈司馬遼太郎の「神国思想」批判と憲法観〉の頁などを追加

トップページの構造が複雑になりましたので、新たに〈目次〉と〈司馬遼太郎の「神国思想」批判と憲法観〉、および〈黒澤明監督と本多猪四郎監督の核エネルギー観〉のページを追加しました。

目次

司馬遼太郎の「神国思想」批判と憲法観

国民の安全と経済の活性化のために脱原発を

安倍首相は伊勢神宮への参拝の後で、「国民の皆さまとともに、新しい国づくりを本格的に始動してまいります」と発言しましたが、「改憲」を目指すことを明言した安倍首相の意向にそって、今年も憲法改正署名簿が、多くの人々が初詣に訪れる各地の神社に置かれているようです(太字は引用者、憲法改正署名簿の写真はKei氏の2015年12月30日のツイッターを参照)

しかも、安倍首相とともに訪れた真珠湾で平和のメッセージを発していた稲田防衛相は帰国して靖国神社を参拝した後では「神武天皇の偉業に立ち戻り」と語っていました。

すなわち、彼らが重視しているのは「国民の意見」ではなく、戦前の価値観への回帰を目指している「日本会議」や「神社本庁」の意向であるのは明白であると思えます。

それゆえ、『マクベス』の名台詞(セリフ)――「きれいはきたない、きたないはきれい」をもじってツイッターには次のように記しました。「戦争法」を強行採決したばかりでなく危険な原発の再稼働を進め、神社で改憲の署名を集めている「安倍政権」と「日本会議」の「標語」の実態は、「美しいはあやしい、新しいは古い」、危険なものであると考えています。

実際、「戦争は人間の霊魂進化にとって最高の宗教的行事」という『生命の実相』の記述を「ずっと生き方の根本に置いてきた」と語っていた稲田朋美氏を防衛大臣に任命した安倍自公政権は、「戦争法」に続いてオリンピックを名目として、「共謀罪」なども視野に入れて動き始めています。

安倍自民党だけでなく公明党もこの「共謀罪」を強くは批判していないようですが、創価学会はかつて治安維持法によって徹底的に弾圧された歴史を持っています。さらに安倍政権が明治維新150周年に向けて「明治維新の映画支援検討」との報道も伝えられていますが、「神武天皇の偉業に立ち戻る」ために明治維新の際して行われたのは「廃仏毀釈」の運動で、大切な仏像などが破壊されたのです。

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(破壊された石仏。川崎市麻生区黒川。写真は「ウィキペディア」より)

リンク→日本国憲法施行70周年をむかえて――安倍首相の「改憲」方針と〈忍び寄る「国家神道」の足音〉関連記事を再掲

司馬遼太郎は長編小説『翔ぶが如く』で、山県有朋について「『国家を護らねばならない』/と山県は言いつづけたが、実際には薩長閥をまもるためであり、そのために天皇への絶対的忠誠心を国民に要求した」と書いていましたが、それは「日本会議」を基盤とした「安倍政権」にも当てはまるでしょう。

「安倍政権」と「日本会議」の思想の危険性については、拙著『ゴジラの哀しみ』の第二部ナショナリズムの台頭と「報復の連鎖」  ――『永遠の0(ゼロ)』の構造と隠された「日本会議」の思想〉で考察しましたが、私のホームページのトップページでも〈司馬遼太郎の「神国思想」批判と憲法観〉のページを独立させました。

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また、「神国思想」の影響下にあった政治家や軍部は、太平洋戦争での敗戦が明らかになっても、元寇の際に「神風」が吹いたような奇跡が起きて敵国は負けると信じていたように、安倍政権の危険性は、福島第一原子力発電所の事故が、ガダルカナル島の玉砕のような事態であったにもかかわらず、「大本営」の発表と同じように事故を軽微にみせることで、原発の稼働を押し進めています。

1280px-Castle_Bravo_Blast(←画像をクリックで拡大できます)

(「キャッスル作戦・ブラボー(ビキニ環礁)」の写真)

それゆえ、トップページには〈黒澤明監督と本多猪四郎監督の核エネルギー観〉のページも独立させて、映画をとおして核エネルギーの危険性を強く訴えていた初代の映画《ゴジラ》の本多猪四郎監督と映画《夢》の黒澤明監督の核エネルギー観をまとめました。

(2017年1月23日、改訂)