高橋誠一郎 公式ホームページ

ラッセル・アインシュタイン宣言

1899年のハーグ万国平和会議から2017年の核兵器禁止条約へ

核兵器禁止条約

©共同通信社、「拍手にこたえる被爆者・サーロー節子さん」

記載がたいへん遅くなりましたが、広島・長崎への原爆投下から72年目にあたる今年の7月7日に日本の被爆経験を踏まえて条約の前文には「ヒバクシャ」が明記された核兵器禁止条約がようやく国連本部で採択されました。

また、ドストエフスキー作品の愛読者でもあった物理学者のアインシュタインは、アメリカの大統領にナチス・ドイツが核兵器の開発をしていることを示唆した自分の手紙が核兵器の開発と日本へ投下につながったことから、核兵器廃絶と戦争廃止のための努力を続け、それが1955年には戦争の廃絶を目指した「ラッセル・アインシュタイン宣言」や「パグウォッシュ会議」開催に繋がりました。

米ソの両大国の対立と冷戦という時代状況にも阻まれて核兵器の廃絶の動きはなかなか進まず、ようやく1957年の「パグウォッシュ会議」開催からようやく60年目にしての実現したことになります。

このホームページでもささやかながら黒澤明監督や本多猪四郎監督の映画や発言の考察をとおして、核エネルギーの危険性を明らかにし、核兵器や原発の廃止を訴えてきましたので、感慨深いものがあります。

国民の安全と経済の活性化のために脱原発を

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しかし、アメリカやロシア、フランスなどの核保有国が「核抑止力を必要とする世界の安全保障の現実を踏まえていない」などとして反発したばかりでなく、「アメリカの核の傘」で守られていると主張する安倍政権もこの条約には「署名しない」ことを明言しました。

カナダ在住の被爆者・サーロー節子さん(85)が「唯一の被爆国として反核運動の先頭に立つと言いながら、実際は何もやっていない」と厳しく批判したように、安倍晋三政権の「積極的平和主義」とは、被爆国でありながら原水爆の危険性を隠蔽してきた岸信介政権以降の核政策を受け継いだものだったのです。残念ながら今もこのような「核の傘」の論理に惑わされている日本人が多いように見えます。

しかし、南太平洋での核実験に対する国民の反発の高まりを受けて、「日本国憲法第九条」を参考にして1987年6月に「非核法」を制定していたニュージーランドのジェフリー・パーマー元首相はインタビューに答えて、核による抑止論については、核兵器が再び使われれば壊滅的な結果をもたらすことから「深刻な欠陥がある」と指摘し、「すべての国は、核兵器の使用がもたらす破滅を知る必要がある」とし、この条約の意義を強調しています(「東京新聞」)。

Enforcement_of_new_Constitution_stamp(←画像をクリックで拡大できます)

実際、1947年にはアメリカの『原子力科学者会報』が、核戦争などによる人類の滅亡を午前零時になぞらえた冷戦下の「終末時刻を残り7分」と発表していましたが、冷戦が終結した2015年にはその時刻がテロや原発事故の危険性から1949年と同じ「残り三分」に戻ったと発表したのです。

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化学兵器が人道に反するとして1899年にハーグで開かれた万国平和会議において初めて国際規制が明文化され、第一次世界大戦後の1925年には悲惨な結果を踏まえて「ジュネーヴ議定書」が締結され、その規制は現在はるかに厳しくなっているのです。

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(ガスマスクを着用し塹壕に隠れるオーストラリア兵。図版は「ウィキペディア」より)

原水爆が化学兵器よりもはるかに非人道的な被害をもたらすことを想起するならば、原水爆の使用だけでなく製造や保有、実験、移譲、そして核による威嚇なども全面禁止する今回の条約の正当性は明らかでしょう。

唯一の被爆国である日本は「核兵器使用による悲惨な結果を訴えるのに最も適した国。ぜひ発信を続けてほしい」と語っていたニュージーランド元首相などの熱い期待にそうためにも、日本人が戦前の日本の価値観の復活を目指している「日本会議」に牛耳られている現在の安倍政権を一刻も早くに退陣させて、世界から信頼される政権を打ち立てる必要があると思います。

年表8、『ゴジラの哀しみ』関連年表(「原水爆実験」と「原発事故」、それに関わる映画を中心に)

〈めでたさも一茶位(くらい)や雑煮餅〉(子規)

〈めでたさも一茶位(くらい)や雑煮餅〉(子規)

今年は再び選挙がありますが、昨年の「国会運営」や報道への圧力で明らかになったように安倍政権のめざす「改憲」は、「国民」を「臣民」として戦争へと駆り立てていた「戦前の日本」への危険な後退だと思えます。

しかも、広島や長崎、そして福島の悲劇をきちんと直視しようとしない安倍政権は、原発の再稼働だけでなく、原発や武器の輸出をも積極的に推し進めているのです。

一方、ブッシュ政権による「大義なき戦争」の後で世界はむしろ混迷の度を深めていますが、このことは「核の時代」における「戦争」の危険性を鋭く指摘していた「ラッセル・アインシュタイン宣言」や「日本国憲法」の先見性を物語っていると思えます。

今年も厳しい一年になると思われますが、苦しい中でもユーモアを忘れなかった子規の精神に倣って精一杯努力したいと考えています。

本年もよろしくお願いいたします。

長崎でのパグウォッシュ会議と「核使用禁止」決議への日本の棄権

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(東宝製作・配給、1955年、図版は「ウィキペディア」より)。

米国のビキニ水爆実験によって「第五福竜丸」や周辺の島々の人々が被爆した悲劇の反省から湯川秀樹博士ら著名な科学者10人が署名した1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」を実現するために始まったパグウォッシュ会議が、原爆投下から七十年を迎える今年、約40カ国から200人近くが参加して、被爆地の長崎で開かれています。

しかし、このような中、核兵器の使用禁止や廃絶のための法的枠組みづくりの努力を呼び掛ける決議案が、国連総会第1委員会(軍縮)で2日、を賛成多数で採択されたにもかかわらず、原爆の容認と原発の推進政策をとり続けてきた日本政府はまたも、被爆国でありながら、棄権に回ったとの報道がなされました。

岸信介首相と同じように未だに原子力エネルギーの危険性を認識していない安倍政権は、そればかりでなく武器輸出などの軍拡政策をとることにより、目先の経済的利益を追求し始めています。安倍政権の危険性をこれからもきちんと指摘していかねばならないでしょう。

リンク→第五福竜丸」事件と映画《生きものの記録》

リンク→映画 《福島 生きものの記録》(岩崎雅典監督作品 )と黒澤映画《生きものの記録》